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10ゴリ 粘液パラダイス




俺は大川コーサク。35歳。

今を時めく細マッチョのナウい感じのオッサンである。

得意技はこのスラりとした長い脚で織成すダンス!

今日はボブカットの似合う愛しのハニーを愛車であるところのいすゞ、117クーペで迎えに来ているところさ。

「おっと、ハニーと同じくらい可愛いクーペちゃんに指紋がっ!」

俺は胸ポケットから真っ白なハンカチを取り出し、吐息で愛車のボディを磨く。

そう、まさに俺とハニーの愛を磨き育むかのようにな。

そうしていると、


「ダーリン!おっまたせぇ!」

ハニーが職場の門扉を抜けて駆け寄ってきているところやった。

透き通る雀のさえずりにも似た美声が俺の鼓膜を優しく撫でていく。

「ふ、ふふん。今日も会いたかったぜぃ。ハニー。」

「もうダーリンったらぁ。今日もかっこいいんだから。」

「せやろ?ナウいやろ。」

俺はブラザーズ・ジョンソンの流れる車内にハニーを乗せながらに言う。


ハープ橋の道を滑るように走りながらハニーを盗み見ると、青く広い海と空そして白い砂浜をバックに

キラキラと星屑のような瞳が俺の顔をジッと見つめていた。

「…どうしたん?」

「ダーリン…私…、もう我慢できない!」


覆いかぶさる唇



は、生臭かった。



「ぐっは!?うぎゃぁああ!?うぎゃあああん!!?

なんやこれ!?なんやこの不愉快な感触は!!!?」

飛び起きると、俺は紫の粘液まみれでゴツゴツウニョウニョした柱?みたいなもんに抱き着い取った。

「粘液やん!!死ぬう死ぬう!!!

つか、さっきまでのは何なん?さっきの幸せな別作品はいったいなんやったん!?もしかして夢?

いや、もしかしたら今この状況が夢でさっきまでのが現実かもしれへんな!

普通に考えて異世界に転生してゴリラになって、ゴブリンとかおって紆余曲折あってミミズに食われるなんてこと

どう考えたってあるはずあらへんしな!

あっと驚く為五郎やわ。

いやいや、ほんま騙されるところやったわ。ふっつうに考えて俺に可愛い感じの彼女がおる方が数百倍まともやん。

なんやねん、なんでゴリラやねん。意味わからんわ。なんでハマダ―ファッションになっとんねん。おっかしいやん。

俺が誰かにそそのかされたからって、そんなファッション着るわけあらへんやん。

こんなベルボトムから生まれてきたみたいなこのハイカラなオッサンがそんな風になるわけあらへんもん。

よっしゃ、そうと決まればもう一回気絶でもなんでもしてハニーの唇のところへ舞い戻らなあかんな!」

「いや、夢じゃないし。」


「ガッビーン!!?」

リアクションが古いのは、自分でも理解しとるつもり。

声の方を向くと、ちっこいウサギがおった。そう、さっきミミズに食われたクソウサギ。ノノやった。

「つか、さっきからモノローグで語ってるつもりだったようなの全部口に出してるし。うるさいんだけど?」

「ガハハ!お前も愚かやな!そんなの百も承知や!テンション上がったら全部口に出してまうんは、もう諦めたわ…俺の悪い癖や。すんませんな!」

「なんで怒ってんのよ。」

独りになると、派手に独り言をしてしまう癖があるんは、もうしょうがない事やと思う。

が、今回はちょい流石に恥ずかしかったので虚勢をはることでこれ以上ツッコまれんようにした。

いや、虚勢やで?去勢ちゃうで?まだ使うからやめてな?

「ふんす!」

「?」

今度はきちんとモノローグで包む事が出来た事に対してのドヤ顔をしてみる。

そんな俺にノノは怪訝そうな顔をすっけど、ざまぁとしか思わん。

「というか、なんなのよ。なんでアンタまで食べられちゃってんのよ。っは!ひょっとしてアンタもミミズちゃんと一つになりたいの!?

アンタもミミズちゃんの事が大好きなの!?一緒にオリジナルの団扇とか半纏つくる!?」

「なんでアイドルの追っかけみたいになっとるん?」

俺はそんな眼球をキラッキラに光らせたノノを落ち着かせ、心配だからついてきた事を言うた。



「…お姉ちゃんに言われたから来たんでしょ?アンタ、私の事嫌いじゃん。」

ノノはそう言う。

ウサギの耳が紫に変色して垂れ下がっとる。綿毛みたいで丸い尻尾も薄汚れてクシャクシャになっとった。

そんな姿だからか、普段よりも弱弱しく見えた。

「私って、こういう性格じゃん。だから友達なんていなくて。だからいっつもお姉ちゃんの後ろに隠れてて。お姉ちゃん、人間の時から美人だし

だから、そのついでみたいに私にいい顔してくる奴も多くってさ。私と仲良くすれば、お姉ちゃんに気に入られるんだってさ。」

ノノは俺と同しに語りだす。

やはりネネさんは人間の時も妖精や天使のように美しい出で立ちをされていたのか!俺の読みは間違っとらんかったな!

俺の眼球に狂いはなかった!

「…お前が人間の時からそういう性格かどうかなんて、そんなもん知らんし友達おらんとかも、しょーじきどうでもええわ。

俺はネネさんが好きやし、お前は生意気でムカつく奴やと思っとる。」

ちょいコレ言うん恥ずかしいんやけど、しゃーなしやと、特別に言うてやるわと自分に言い聞かす。

「お前の事は別に嫌いやない。友達やと思っとるで?」

「・・・・友達。」

「友達が危ない目に遭うとったら助けにいくん決まっとるやろ。」

オーカワっちゅうゴリラはそういうゴリラや。と俺は胸を張って言う。

「うっわ。きっしょ。そんな少女漫画みたいなセリフよく言えるね。死ねよ。」

「………」

辛辣にも程があるやん!?いやもう、こんなひどい仕打ちを受けるくらいならむしろ殺してほしいくらいやわ!!

「でもまぁ、悪い気はしないけどさ。」

「お前、ツンデレやん?」

「デレとらんやん!?」

「訛りが伝染しとるで!」まぁ、関西弁って伝染しやすいらしいよな。

今のなし!とノノは一人で大騒ぎしとる。こいつおもろいな!


「それはそうと、はよ脱出せんと。粘液でくたばってまうで。」

「え、それはそれで別にいいんだけど?ミミズちゃんの養分になれるじゃん。」

「病気か!頭の!俺は絶対嫌やで!?」

はなしが振り出しに戻りだしてもうたやん。

脱出する算段もそうやけど、このアホを説得するんも骨が折れそうやな。

と思うたが、

「まぁ、いいよ。しょうがないからオーカワの為に一緒に脱出したげるよ。」

「『さん』をつけろよ。年上やぞ?」

「『酸?』」

確かにこの紫粘液、ちょい酸性な感じすっけど、そういう言葉遊びをしとる余裕はないで?

「いうて脱出方法なんてわからんのやけどなぁ。」

「ウ〇コと一緒に出るか、ゲロと一緒に吐き出されるかの二択かな。」

「どっちも嫌やなぁ。」

今更やけど女として言動に慎ましさを備えろや。ネネさんを見習いなさい。



「jぁふぉいhsぱp!!」

「なんや!?」

壁?から壊れたレディオのような声が聴こえてきおった。

甲高く、それでいてやたら早口で、おそらく同し事を口走っとる。


紫の粘液と赤黒い肉の壁の中に、なんや薄っすら黒い塊みたいなもんがあった。


「jぁふぉいhsぱp!!」

「うるさい…!」

こんな状況で余計な事はしない方がええと思うんやが、しかしなんやろうな?

既視感っちゅうか、この不愉快な音声に聞き覚えがあった俺は、その肉の壁に腕と好奇心を突っ込んでみた。

昔、小さい頃に肥溜めにはまったのを思い出し俺はなんだか懐かしい気分にさせられた。悪夢やった。

「おあそgしsphふぉいhvfsvsぱrq!!!!!!」

引っ張り刺したそれは、しかしこの場に似つかわしくないもんやった。


「―チワワや。」

個人的にはトイプードルと並べてご近所の金持ち婆さんとかが飼ってそうなイメージ。

ちっこくて生意気そうでキャンキャン小うるさくて、そんなところも可愛い感じの…チワワ…やと思うが、

この俺のゴリラの手の中で潰れかけたチワワは殆ど紫の粘液でコーティングされとって、なんか目ん玉飛び出しとって、どっち見とるかわけわからん

壊れたファーベィ人形みたいな有様やった。

一言で評価すんなら、「「不気味」」やった。

俺とノノは口をそろえて言うた。

初めて意見が一致した瞬間なんやないやろうか?

「ぽれおv:ぺうぃfsvぷwpふぇf!!」

「つか、この生き物うるさいんだけど。」

何を言うてるかもわからず、記号で喋っとるんか甲高く早口の生命体。

いや、まてまて、俺コイツ知っとるぞ?

「お前、もしかせんでもトラッシュか?」

「klさjf@sfどh!!!」

相変わらず何を言うとるのかはわからんが、どうやら肯定の意を示しとるらしい。フィーリングで理解できた。

理解したくなかったけどな。

「お前、こんなとこで何をやっとんねん!まぁ、食われたんやろうけどな。」

「さおjgpjふぉいhgs」

「何、オーカワの友達?」

「ちゃうわ!いや、んー、どうなんやろうな。まぁ、友達でええんちゃう?」

「かなり、微妙な反応だなぁ。」

会話が成立しとるんかも怪しい相手やからな。

とりあえず、かなり腑に落ちひんとこやけど、トラッシュも連れて脱出ルートを探す事になってしまう。

つか、さきにトラッシュを食べたんが原因で腹下して暴れてたとかやない?

ありそうでなんか嫌やな…。

「あlkshfd」

そんでお前も二足歩行かい!

気が付けばトラッシュは粘液を落としとった。その姿形は前回とは違って、なんかスレンダーやった。

粘液で溶かされたんか覆われとった毛玉部分が無くなっとる。

が、汚いのはかわらへんな。

相変わらず洗っとらん犬って感じを醸し出しとる。誰でもええから風呂に入れてやってくれ。

「身体掻くな!」

トラッシュがボリボリと身体を掻くと変な虫が飛び散った。特異体質みたいやな。


ノノ、トラッシュを連れ、ミミズの腹ん中をネチョネチョと散歩しとると

少しずつ灯りが見えてきた。

「出口だ!」とノノ。

「そんな歩いとらんやろ。」とツッコミをするとノノは顔をリスかハムスターみたいに膨らませる。

お前はウサギやろ。可愛いつもりか。

ちょっと可愛いと思ったけどな。ちょっとだけな。

ノノが出口だと喜んだ先は、壁が青白く光っとるだけやった。

「こんどはなんや?」

「ケツの穴かな?」

「やめなさいっ!」

実はわざと汚い言葉使うとるやろ!

「とりあえずオーカワ、手突っ込んでみてよ。」

「なんで俺なん!?」

「大人だから。」

「こんな時ばっか年下ぶるなや!ええけど!」

「いいんだ…」

俺は今度は両腕を光っとる壁に突っ込んだ。

いやぁ、一旦汚いもんに触れると慣れるんやろうか。耐性がつくっちゅうか。

毒の粘液やから本当は相当危ない事しとるはずなんやけどなぁ…。

「何かあった?」

「どわぁ!?」

「ひゃぁ!」

「なーんちゃって!」

「どかさないでよ!」

一矢報いたった。にやりと笑いながら俺はヌチョヌチョと光る壁の中をまさぐる。

「んー、なんやろ?スイカみたいなサイズのもんがあんな。」

それなりの大きさで、それなりの硬さのあるものが両手の感覚に伝える。

そんで、ほんのり温かい感じがする。

「ひっぱり出してみてよ!」

「お前、人任せやからって躊躇なしやな!」

なんぼのもんじゃい!っとそれでも俺は手に掴んでいるものを思いっきり引っ張てみる。

頭ん中で「うんとこしょ♪どっこいしょ♪」と口ずさむ。今回は大きなカブっちゅうより

手のひらサイズのスイカって感じやけどな。

もっとも、ゴリラの両手やけど。

そして、ちぎったソレはスイカというより真珠みたいなもんやった。

「綺麗だな。」

「せやな。これをネネさんにあげよう!」

「とか思ってるでしょ。」

「思っとるけどな。」

きっと結婚くらいならしてくれるかもしれん。そうと決まれば後はいすゞの117クーペとベルボトムを用意するだけやな。

サイのオバちゃんに貰ったハマダ―ファッションはボロボロになってまったし、ベルボトムくらい用意してくれるやろ。


という未来予知をして遊んでいると

オオオオオオオオっという地響きがした。

「なん!?なんや!!」

叫び声、地響きがミミズの体内全体で巻き起こり、遠くの方からその波動で吹き飛ばされそうになる。

そんで、それを見た俺はノノとゴミ…トラッシュを引っ掴み背中を向けた。


しかし、津波みたいに流れてきた粘液に俺は身体を持ち上げられ、あっさり押し流されてしまった。



友達は多いにこしたことはないと思います。

しかし、少ないからといって、別に悪くは決してない。

たった一人でも本当にくっそ下らんはなしができたり、一緒に授業をさぼれるアホな友達が居れば

それだけで学校生活での世界の見え方は違いますよ。


まぁ、もちろん勉強もやれよ。

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