1. プロローグ 世界と世界の統合
世界とは個々の生命を内包する空間である。
『世界』は、内包する生命のすべてを傍観する。ただ、退屈そうに。
これは当然である。
世界という巨大なネットワークからすれば、目の前で起きることは全てがありふれたものなのだ。
一方で、内包された個々の生命は、喜び、悲しみ、怒りなど多くの感情を表しながら、
世界を時に素晴らしいと絶賛し、時に憎いと拒絶しながら生命を謳歌していく。
これも当然である。
情報量の乏しい彼らにとって自分の世界こそ生きていることを実感させる唯一無二の存在であり、良い悪いにかかわらず、新しいものをくれるのだから。
対話の方法がない両者の溝は埋まらない。そして、時が経つほどその溝は深まっていった。
どのくらいの時が過ぎただろうか。
ある日、黒い霧のようになって浮いていた『世界』は1つの疑問に辿り着いた。
『自分の見る世界は、もう変化がおきないのではないか』と。
「全ての世界を閉じてしまうか」
『世界』は悩んだ末、内包する個々の生命に己の価値を問うことに決めた。
「お前たちが何のために存在するのか、新しい可能性を私に見せてくれ。」
そう言って、退屈そうに漂っていた黒い霧のような存在は、
感情が激しいという理由で気に入っていた「人」という生命に形を変えていった。
「人」の形をした黒い霧が徐々に色づき始めると、黒と銀が混ざり合った長髪の幼い子供が現れた。
肌に刻まれた黒い文様が存在の異様さを示している。
中世的な美しさという言葉がふさわしい子供。
その子供が静かに両手を高く掲げ、握っていたその手をゆっくりと広げていくと、
左手からは青い光、右手からは赤い光が次々に飛び出し、光り輝く2つの球体ができあがった。
「私がまだ可能性があると思う、この世界達にしよう。」
黒銀の幼子は、広げた両手を頭上で組み合わた。
その動作に合わせて、2つの光の球体がゆっくりと近づき、重なり合い、
眩い光が空間を満たした。
そして、紫色に輝く1つの球体が出来上がった。
「さぁ、はじめようか。」
黒銀の幼子はまたいつものように、2つの世界が統合されてできた『新世界』を眺め始めた。
その目に新しい可能性が映ることを期待して。




