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パンツをさがせ!

 俺達はその日の食費がかかっているため、コツコツとクエストをこなして毎日を過ごす。

 早朝はおねんねのシャンをレインが面倒を見て、俺がひとりでクエストをこなす。お昼からは皆でのほほんと過ごす。


 朝なんか最初は面倒であったが、彼女たちと過ごしている間にこの時間がとても大切なことに気が付いた。なんたって貴重な一人の時間で、美少女に囲まれた生活から解き放たれる数少ない瞬間で、とにかく好き放題できる。


 なんたって夜に寝る時なんか常にほんのりと甘い匂いが空気を漂うのだ。とてもじゃないが落ち着いて過ごすことが出来ない。あまりに酷いときは夜にこっそり抜け出してスッキリである。

 だからか、朝はフットワークが軽く早々にクエストを終えてしまい時間を余らせる。


 クエストが早く終わる理由はそれだけじゃなく、レベルが上がった時にとあるスキルを手に入れた。

 それは例の馬車スキルで、アイテムをストックが出来る便利なものだった。これのおかげで大抵の収集クエストは短時間でこなせるようになった。ちなみにレインには内緒である。

 レインからは、クエストが終わったら帰宅するように言われているが、自由人の俺がはいそうですかと聞く訳なく、こっそりとヘソクリで遊んだりしている。


 さて、クエストの報酬を貰い、確認する。


 「少しちょろまかしてもいいかな」


 今日は少し報酬が多めだ。


 「もう、駄目ですよ。素敵な奥さんとお子さんがいるんだから……バレたら大変ですよ?」


 そう声をかけてきたのは受付嬢のサララさんである。

 彼女とはすっかり顔なじみになり、豊満なボディから目をそらすことなく会話を交わせるぐらいの仲になった。そろそろ告白したら結婚出来るのではないだろうか?


 「サララさん。結婚してください」


 「マジで無理です」


 マジとは本気と書いてマジのことだろう。少し死にたくなった。


 「冗談です。浮気は厳禁ですよ」


 「ってことは独身だったらOKだったんですか!?」


 「うーん……。シンヤくんには将来性がちょっと……」


 まさかのマジレスである。くそが年収が愛だなんて俺は信じないぞ。


 「お昼も何かクエスト受けるんですか?」


 申し訳なさそうにしながらサララさんは話題を変えてくる。


 「はい。もう少し難しいのにも挑戦したいですね」


 「おおお、やる気ですね。それだったらおすすめのクエストがありますよ。多人数型の競争クエストです」


 「競争クエストって響きからするに、他の冒険者と競うのかあ。なんだか面白そうですね。内容はどんな感じなんですか?」


 「パンツ探しです」


 「すみません。意味が分かりません」


 仕事のし過ぎで頭がイカれたのだろうか? とても正気の発言とは思えない。


 「そんな変態を見る目で私を見ないでください! 依頼主の方が定期的にパンツを隠して、探してほしいと依頼をしてくるんですよ!」


 「自ら隠して依頼するんですか? そいつヤバいですよ。国から追放しましょう」


 現代日本だったら即御用だね。猶予なしで死刑だ。


 「ちなみにその依頼主さんは美少女です」


 「この国の宝にしましょう」


 「手のひら返しがすごいですね」


 なぜかサララさんに呆れられてしまった。

 クエストの詳細を聞いてみると、なんでもこの町では有名なクエストらしく、通称クエパンの愛称で紳士の間で盛り上がっているようだ。しかし、今までに見つけられた者はいないらしく、本当にパンツが隠されいているのかさえ明らかにされていない。

 さらにはクエストの回数を重ねるごとにその報酬もどんどん上がっているらしいく、ある種カルト的人気を博しているクエストのようだ。


 「いま報酬金はどれくらいなんですか?」


 「それが今回に限ってお金じゃないみたいで。本人曰く、スゴイものらしいですよ?」


 「すごいものねえ……贅沢な財宝とかかなあ」


 もしかしたらキッスかもしれんぞ。これは参加せざる得ないじゃないか。


 「そのクエスト参加します!」


 「さっきも言いましたけどチーム戦ですよ? 奥さんとお子さんに何か言われませんか?」


 「大丈夫です! 俺の人徳で納得させます」


 「あ、はい」


 そんなわけで、お昼のクエストはクエパンに決まりだぜ。


 ☆


 帰宅して、レインさんに件のクエストの説明をすると、


 「うわあ、キモイです」


 と一蹴された。酷いです。


 「いや違うんだ。これはね、そんな単純な話じゃないんだよ。きっと、依頼主さんは助けを求めているんだ。パンツを隠すことは殻に閉じこもった自分を救ってほしいって言うメッセージ! 暗喩なんだよ!」


 「そんな主張しなくたって……別に参加したくない訳じゃないですよ」


 「お前、変態なの……? 痛い痛い痛い! 冗談だからつねるのやめてください!」


 耳を捻りながら引っ張るとか鬼畜かこの娘!


 「私はシンヤさんと違ってパンツが欲しい訳じゃないんです。たしか、依頼主はこの地域でも有名な地主の娘だったはずです。だとすれば報酬も広い土地、あわよくば豪邸だったりするかもですよ」


 「なるほどね……ん? 俺は別におパンツが欲しい訳じゃないよ? むしろ報酬がおパンツだったらどうしましょって不安になっているタイプの人間だよ? 本当だよ? おい、そんな目で見るな! なんだよ信じておくれよ……あのね、冷静に考えて美少女のおパンツを手に入れて何になるの? その手の人に高く売ったり、実際に穿いてみて憑依一体したり、臭い嗅いだりするぐらいしかできないんだよ? これは非合理だ。俺達が生きていくうえで非合理! おパンツじゃ世の中食べていけないの! あくまでおパンツは嗜好品!」


 「パパなにいってうの?」


 「聞いちゃ駄目よ。どんな副作用があるかわからないからねー」


 「はーい!」


 いつの間にか起きていたシャンは耳を押さえて俺から離れてしまう。


 「とにかく! お昼はクエパンで決まりな!」


 「はいはいわかりましたー」


 なんとも気の抜けた返事である。

 なんだか色々なものを失った気がするが、クエパンの参加の了承を得ることが出来た。


 「よおおおし! 絶対におパンツ見つけるぞお!」


 「おー!」


 「もう、シャンが反応しちゃったじゃないですかあ」


 さあ、今日も一日頑張るぞい!


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