後日談 クリスマス Side:ヒロ
前回省略されていたクリスマスのあれこれです。
ベッドの上に寝転がってマンガを読んでいる…んだけど、頭の中は、明日のことでいっぱいだ。
明日、まどかの家で、クリスマスパーティーに呼ばれてる。その後、まどかの部屋に行って、2人きりになろうって言われた。
今読んでるマンガとよく似たシチュエーションだ。
ヒロインは、主人公の幼なじみで隣に住んでる。なんかくっつきそうでくっつかないラブコメだったけど、クライマックスにようやくヒロインから告白する。主人公がへたれだから、そうでもしないと進展しない感じだったし、納得っちゃ納得なんだけどな。
まどかと俺の関係に似てるから、どうやってくっつくのか楽しみにしてたのに、主人公流されてるだけなんだもんなあ。
なんか、自分のこと責められてるみたいで、ちょっと、な。
まどかと俺は、さすがに隣同士じゃないけど、家が近所で幼稚園から同じクラスだった。小学5年になるまでは。
まどかは、毎日、朝が弱い俺を起こしに部屋まで来てくれて。
5年になった時、初めてクラスが別になって、それでもしばらくは一緒に学校行ってたけど、そしたらクラスメートにからかわれて。それ以来、まどかはうちに来なくなった。
やっぱり、現実はマンガみたいにうまくいかない。
でも、夏休み明けから、また一緒に学校に行くようになった。まどかが通る前に玄関出てないと先に行かれちまうけど。おかげで、最近は早起きしてる。12月に入って、ベッドから出るのが辛いけど、まどかに置いてかれる方がもっと辛いからな。
まどかが初めて学校休んだ日、かき氷持って見舞いに行ったら、次に病気になった時も見舞いに来いって言われた。てことは、まどかも俺と付き合う気あるんだよな。
実際、ここしばらくは、毎日放課後迎えに行って一緒に帰ってるくらいだし。なんだかんだで手を握って歩いたり、まどかの方から腕を組んできたりもする。
バレンタインに期待するか、クリスマスに俺から告るか、なんて思ってたら、まどかの方から誘われた。…おばさん達もいるのが不安だけど。
クリスマスパーティーは…なんか居心地が悪いって言うか、おばさんに色々からかわれて、居場所がないって言うか…。
なんとか切り抜けて、まどかの部屋に入って、やっと一息つけた。
「ふふ、ヒロ、なに緊張してんの? うちのお母さん苦手だったっけ?」
「苦手ってこたないけど、なんか今日、妙にからかってきてないか?」
「そうかなあ? ね、それよりヒロ、あたし、背伸びたと思わない?」
たしかに、夏以来、まどかはかなり身長が伸びた。この3か月くらいで15センチは伸びたんじゃなかろうか。
隣を歩いてると、9月には見下ろす感じだったのが、今は真横を見るとまどかの頭のてっぺんがあるくらいになってる。
背だけじゃない、スタイルもずいぶん良くなった。
学校でも、まどかのことをジロジロ見てる奴も多いみたいだ。主に胸を。勝手に見てんじゃねえよ。
そう、胸もぺったんこだったのが、だいぶ大きくなったんだ。一緒に歩いてると、つい胸に目が行っちゃうんだよな。角度的に、ちょうど胸の谷間が目に入って。これじゃスケベ野郎共のこと言えない。いや、俺はまどかだけだから、いいんだ。まどかと付き合うつもりなんだし、付き合えば、直接見ることだってあるだろうし。
「ああ、すっごく伸びた。急にそんだけ伸びると大変じゃないか?」
「うん、最初は足とか痛かったんだけどね、もう大丈夫。慣れちゃったみたい。これでヒロの隣歩いてても笑われないね」
昔、一緒に歩いててからかわれたのは、まどかが小さいからじゃなくて、俺達が仲良く歩いてたからだと思うんだけどな。まどかは、自分がチビだから笑われたって思ってるっぽい。
「誰も笑わねえよ」
「そかな」
「そうだよ」
まどかはニコニコしている。本当に嬉しそうだ。けど、これから告白するとか、そういう緊張みたいのは感じない。
そう思ってたら、まどかが話し始めた。少しだけ言いにくそうに。
「んとね、この前、ヒロがかき氷持ってきてくれた時、あたしが病気になったらいつもこうしてって言ったじゃない? あたしね、夢見てると思ってたからそう言ったんだけど、嘘ってわけじゃないの」
かき氷って、あの学校休んだ日のことだよな? うん、それで、俺もまどかの気持ちはそうなんだって思ってたけど、改めて言われると照れるな。
「あたしね、ヒロとずっと一緒にいたいなあって思うし、ヒロもおんなじ気持ちだろうって思ってるんだけど、間違ってる?」
…告白だ、これ。まどか、全然緊張してないけど、告白だよ、これ。
「ま、間違ってない…」
うわ、俺の方が緊張してきた。期待してなかったわけじゃないけど、まどかの方から告白してくるなんて。
「そ? よかった。じゃあ、あんたにだけ特別、触らせたげる」
触らせてくれる!? え!? 告白からいきなりそういうことになるって、そりゃちょっとは期待したけど、ホントに!?
「あ…うん」
「はい」
そう言って、まどかは頭を差し出してきた。…頭? え? 触らせるって、頭なのか!?
「おい、まどか…」
「ほら、いいよヒロ、触って?」
おそるおそる触ると、まるで犬か猫の耳みたいな三角のがまどかの頭に付いてた。
やわらかくて、あったかくて、作り物とは思えない耳が。
「…耳?」
「そうだよ、あたしの耳。あたし、狼娘なの。ヒロ、前に、あたしなら犬でも猫でもいいって言ってたでしょ? 狼でもいいよね?」
「…犬と狼って何が違うんだ?」
自分でもマヌケだと思うけど、そんな言葉しか出てこなかった。狼娘って何だよ! 俺、確かにまどかならどっちでもいいと言ったけど、あれはそういう意味で言ったんじゃ…
「ん~、あたしもよくわかんない。お父さんが人狼だから、あたしもそうなんだって。満月の夜だけ、耳と尻尾が生えるのよ。どっちも、触っていいのはヒロだけだからね♪」
「俺だけ、特別か?」
「うん、特別♪」
それって特別って言うのか? でも、まどかはニコニコと嬉しそうに俺に抱きついてきた。…いい匂いがする。
「ふふ、ヒロの匂いだ~」
まどかも、俺の襟の辺りに顔を当ててる。汗臭くないかな。
「あのね、あたし、ずっとこうしたかっったんだ~♪」
言いながら、頬ずりしてくる。親戚のガキに懐かれてる気分になってビミョーだ。どうせなら、キスしたいんだけどなあ…。
「ほらほら、尻尾も触っていいよ♪」
まどかは、ズボンを脱いで尻尾も見せてくれた。パンツの後ろがちょっと下がってて、そこからふさふさとした尻尾が生えてる。秋田犬だっけ? あんな感じの尻尾だ。
動きにくいからか、ズボンは完全に脱いでるから、生足だ。足には毛がないんだな。っていうか、下、脱げかけたパンツだけなんだけど。どうせなら、そっちも脱いでくんないかな。
「ヒロだけだからね。内緒だよ♪」
その“内緒”は、狼娘だってことなのか、尻尾に触らせてくれたことなのか、どっちなんだろう?
とりあえず、尻尾触りながらパンツも脱がしてみた。まどかは、尻尾さえ撫でてれば嬉しいみたいで、パンツ下ろしても嬉しそうだった。ちょっと複雑な気分だけど、尻尾と一緒に、それ以外んとこも撫でまくってたら、遠吠えでもするみたいにのけぞって、動かなくなった。尻尾がピーン!って伸びた後、全身くったりして。ほんとに遠吠えされなくてよかった。こんなとこ、おばさん達に見付かったら、どう言い訳していいのかわからない。
しばらくしてもぞもぞ動き出したまどかは、すっごく嬉しそうで、「また次の満月に、これ、してね」って言ってた。
キスもしないうちに、よかったのかな。
ああ、いや、それよりも狼娘って、なんだよ。でも、耳と尻尾がある以外は、普通と変わりないし、まどかだし。耳とかも、満月の夜以外出ないっていうし、普通、だよな?
とりあえず、これからは恋人同士ってことで、いいんだよな?
2人で初詣に行った後、まどかの家に行った。
出迎えてくれたおばさんがニマニマしてる風で、すっごく居心地が悪い。この前のこと、全部知ってんじゃないだろうか。
その後、まどかの部屋に行って、「好き」って言われて、初めてキスした。ファーストキスってイメージとは違うけど、舌を絡め合うのは、ディープキスってやつでいいんだよな?
今日は尻尾はなかったけど、パンツ脱がしたり、ブラに手入れて直接胸触ったりしても、まどかはやっぱり嬉しそうだった。
家に帰って冷静になって、おばさん達いたのに、こんなことしてって青くなったけど、まどかはまたしようって言ってくれた。
「好き」って言ってくれたし、付き合ってるんだし、いいのかな。
まどかは、どうせ結婚するんだから何してもいいとか言ってるし。…そのうち、最後までできるといいな。
ということで、ヒロ視点でした。
一応、思春期の男の子なので、色々考えてます。…普通、ですよね?
…ツンデレいちゃらぶ、どこ行った!?