表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

後日談 初詣

 リクエストにより、2人の初詣です。

 「円~、ダンナが迎えに来たよ~」


 「だから、ダンナじゃないって言ってんじゃん!」


 ここんとこ、放課後になると毎日ヒロが迎えに来てくれる。

 別に、なにかするわけじゃない。一緒に帰るだけ。

 今は、毎朝ヒロと一緒に学校来てるし、帰りはこうやってヒロが迎えに来てくれるから、友達はヒロのことを「ダンナ」って呼んでる。

 そりゃ、男っ気なかったあたしが急にヒロと一緒に歩くようになったから、驚くのも仕方ないけど、まだそういう間柄じゃない。

 幼なじみだよって言うと、「ふ~ん」ってニヤニヤしてる。

 嘘なんか、言ってないのに。

 おっと、ヒロがひきつった顔で待ってるね。

 「ヒロ、帰るよ」


 あんまり教室(ここ)にいると冷やかされるからね、さっさと帰るに限るよ。

 左手にカバンを持って、右手でヒロの手を掴んでずんずん進む。

 ほら、ヒロ、さっさと歩きなよ。




 そんなこんなしてるうちに12月になって2学期も終わった。

 最近は、学校を出てしばらく歩いたところで、手を放して腕を組むようになった。その方がヒロの匂いを感じられるから♪

 ヒロの肩に頬ずりするみたいにくっついて歩く。幸せ。


 「なあ、まどか、クリスマスなんだけど…」

 そうだった、言わなきゃ!

 「お母さんがね、鳥の丸焼き作ってくれるって!

  ヒロもおいでって、お母さんが」

 ちっちゃい頃は、うちのクリスマスパーティーにヒロも来てた。今年は、久しぶりにヒロを呼ぶつもり。…なんだけど、ヒロ、残念そう。鳥の丸焼きだよ、鳥の丸焼き! きっとすっごくおいしいよ!

 「あたしと一緒にクリスマス…嫌なの?」

 言ったら、ヒロはぶんぶんと首を振って、

 「嫌なわけない! けど、2人きりがよかったなって」


 なんだ、そんなこと。

 「パーティー終わったら、あたしの部屋においでよ。そしたら2人きりだよ」


 12月の満月は23日。だから、パーティーも23日。

 パーティーの後、ヒロに耳と尻尾を見せて、なでてもらうんだ♪







 ヒロが帰った後でハッとした。しまった! かぷってしてない!

 パーティーの後で、ヒロに耳と尻尾なでてもらって、とってもうれしかったけど、うっとりしすぎてかぷってしなかった!

 どうしよう。そうだ、ヒロと初詣に行こう! その後でもう一度うちに呼ぼう。




 初詣には、この前買ってもらったコートを着ていった。あたしの尻尾をイメージしたふわふわの飾りリボンがついてるやつ。

 今日は尻尾出てこないから、尻尾のイメージのリボン。

 ヒロ、この前尻尾見せた時、喜んでいっぱいなでてくれたから、このリボンも喜んでくれるよね。




 「あけましておめでとー♪」


 「おめでとう。今年もよろしくな」


 「うん♪ これからもずっとよろしくね。

  ほら、このリボン、尻尾みたいでしょ。触ってもいいよ♪」


 「え? 触るって?」


 きょとんとしたヒロに、ちっちゃな声で

 「あたしの尻尾の代わり。今日は尻尾出ないから」

って言ったら、

 「いや、それ触ってもなあ…」

とかビミョーな顔をした。そっか、あたしの(・・・・)尻尾がいいんだ。うん、なんか嬉しい。

 2人で腕を組んで、神社に向かって歩く。ヒロの匂いと温もりが気持ちいい。




 「あ~っ、円! あけおめー」


 途中、友達に会って

 「腕なんか組んで歩いて、やっぱダンナじゃん」

って言われたから、

 「クリスマスからねー」

って言ってバイバイした。ヒロとの時間を邪魔されたくないし。


 「今の、同じクラスの子だろ? よかったのか? 噂になるの、嫌なんじゃなかった?」

ってヒロが心配してたから、

 「ヒロは、もうあたしの“つがい”だからねー。ダンナで間違いないよ。噂になった方が、変な虫つかなくていいし」

って言っといた。

 ヒロはちんぷんかんぷんな顔で

 「つがい?」

とか首をひねってた。




 「ね、何お願いした?」


 「まどかと同じ高校行けますようにって」


 「あー、おんなじ! 高校も一緒に行こうね」


 「そうだな」


 お参りして、おみくじ買って、帰る。おみくじは、ヒロが大吉、あたしが末吉だった。ヒロ、大吉だから、きっと高校も一緒に行けるね。




 あたしんちに着いて、ヒロがお母さんにあいさつして。

 2人であたしの部屋に入った。


 「ふふ、ヒロったら、あけま()ておめでとうございますとか噛んでんだもん」


 「しかたねーだろ。付き合い始めてから初めてきたんだぞ。しかも、なんか、おばさん、まどかをよろしくねとか言ってっし」


 「そりゃ、あたしの“つがい”だからね」


 「あ、それ! さっきも言ってたな。

  つがいってなんだ?」


 「ん~、詳しい意味はわかんないけど、要するに結婚する相手のことだよ」


 「結婚!?」


 あれ? 驚いてる。なんで?

 「しないの、結婚? するよね?」


 「そ、そりゃ、するっていうか、したいけど、俺達まだ中学生だぞ」


 なんだ、そんなことか。

 「別に、今すぐじゃなくていいよ。でも、もう、あたし、尻尾触らせちゃったもん」

 ヒロ以外には、絶対触らせないんだから。


 「お、おう。いつか、か」


 「そのうち、だよ」


 ヒロにベッドに座ってもらって、あたしも隣に座る。ぴたっとくっついて。

 「あのね、ヒロにしたかったことがあるの」


 「したかったことって?」


 ヒロのほっぺにすりすりする。この前はし損ねちゃったからね。今日こそ。

 「ヒロのほっぺ、あたし以外に触らせちゃやだよ」


 かぷって。かぷってした。ついに、かぷって。嬉しい。

 ヒロのほっぺ。あたしの、ヒロ。大好き。

 それなのに。

 「お、おい、俺は食べ物じゃないぞ! 食べるな!」


 ヒロは驚いて騒いでる。やだなあ、食べるわけないじゃない。

 「好き♪」

 かぷっ、ぺろって甘がみしたりなめたりしてたら、ヒロがぎゅって抱きついてきた。

 そのままベッドの上に、2人して転がる。ヒロの匂いがいっぱい。すごい幸せ。

 あんまり嬉しくて、ヒロの口の中までなめたら、ヒロもなめ返してくれた。嬉しい、うれしい。

 いっぱいなめあって、すっごく幸せな気分で、初詣は終わった。




 翌日、ヒロから電話があった。

 「あのさ、昨日のこと、おばさんとおじさん、なんか言ってたか?」


 「うん、また来てねって」


 「それだけか?」


 「それだけって?」


 「いや、その…俺達、部屋で、その…」


 「“つがい”なんだからへーきだよ。お母さん、ヒロとなら、なにしても怒んないから」


 「何してもって、お前…」


 「あ、あたし以外の女の子と腕組んで歩いたら、怒るかも」


 「う、浮気なんてしないって!」


 「ヒロ、また昨日みたいにしようね♪」

 ず~っと一緒。満月になったら、また尻尾なでてもらおうっと。


 明日は、ヒロ視点でクリスマスです。

 え? 順番が違う?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いやもう甘々最高です( ´∀` ) ツンデレはちょっとずつデレデレするからこそってのがよくわかるお話です( ´∀` )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ