転生
「即答だね〜。いいの〜?『テコル』で〜?」
「うん、機械とかロボットとかあんまり詳しくないからね。まだ分かり易い魔法とかの方がいいかなー、って思って。」
「ふ〜ん、そっか〜。まあ、君の人生だからね〜。好きにやりなよ〜。」
そう言うと、原神はまた指を鳴らした。すると、残っていた世界の模型が消え、今度は光の渦が現れた。
「これは?」
「これはね〜、『テコル』とこの空間を繋げるためのものって言えばわかりやすいかな〜?」
空間を繋げる、と聞き、皇翔は、
「もう行くの?」
と聞いた。
「行ってもいいけど〜、魂だけの状態で行くことになるよ〜?」
それを聞き、皇翔は光の渦に触れようとしていた手を反射的に引っ込めた。
最も、その光の渦は『繋がり』であって、触れたところで何か起こるということは無いのだが。
「じゃあ、なんで今繋げたの?」
「それはね〜、ステータスシステムを君に適応させるためだよ〜。」
本来ステータスシステムとは、自己がハッキリとしてくると見れるようになり、見ないまま過ごすと、ステータスの恩恵が適応されないようになっている(魔物のような一部生物は除く)。
そのため、ステータスシステムが無くなった『ムヘテ』ではステータスの恩恵が全く得られないのである。
しかし、無くなったとはいえ、元々はあったのだから、ステータスシステムを適応させることは容易い。
「という訳で〜、今から適応させてくよ〜?」
「あ、うん。じゃあ、お願いします。」
皇翔が頭を下げながらそう言うと、原神は、何やら呟き始めた。
「世界名『ムヘテ』…………個体名『有賀皇翔』…………………………システム接続……………………………………世界名『テコル』……………………………………◼◼システムより……………………………………あ〜、そうか〜…………システム接続中断……………………ごめんね〜、大事なこと忘れてたよ〜。」
「え、大事なこと?」
急にそんなことを言った原神に、若干の不安を覚えながら尋ねると、あまり心配しないでもいいと言われた。
「ただ単に〜、魂の『器』を用意してなかったからさ〜、システムに矛盾が生まれそうになってね〜。どんな体に転生したいか聞かなきゃなかったな〜って〜。」
「え?そのままの体じゃあダメなの?」
「黒髪黒目は召喚された勇者以外いないんだよね〜。勇者だって持て囃されて国家に利用されるかもしれないけど〜、それでもいいなら特に問題ないよ〜?」
それを聞き、流石にそれは……と、そう思った皇翔は、一も二もなく了承した。
「まずはね〜、どんな種族がいい〜?因みに〜、人族とか獣人族とか魔族とかが主にいるけど〜、それだと赤ん坊からだからね〜?」
それは嫌だと思い、それら以外にしようと決意した。
「魔物だと〜、過去に転生してった人たちは竜とかアラクネとか選んでたね〜。魔物の利点は〜、幼少期が短いところだから〜、そこに惹かれたんだろうね〜。後〜、名前も変えるよ〜?そのまんまだと〜、浮きまくっちゃうし〜。」
「ふーん……。……それじゃあ魔物にするよ。…………そしてよく考えたらさ、僕ってその世界のこと知らないから、種族とかは知ってそうな原神にお任せするよ。あと、名前は仕方ないか。今の名前も捨て難いけど、そういうことなら変えることにするよ。」
実際のところ、事前情報なしだと、どんな種族が当たりか分からないのだ。だから、何かと知ってそうな原神に丸投げした形だ。
「ん、おっけ〜。じゃあ〜、…………アレでいいかな〜?決まったよ〜。あっちに行ったら確認してね〜。それまでは秘密だよ〜。」
それには少し不満があったものの、原神に丸投げしたのは自分なのだからしょうがないと思った。
「じゃあ〜、最後の説明するね〜。『テコル』では〜、と言うかステータスシステムがある世界では〜、強い感情、欲望、境遇、魂の状態などなどで〜、固有能力っていうのが発現するんだ〜。俗に言う〜、勇者を追い詰めたと思ったら逆にピンチになった〜、ていうのが素で起こるんだよね〜。多分君は〜、前世での呪いとか〜、世界の壁を超えた事で何個か発現すると思うよ〜。で〜、次に転生する場所だけど〜、ちょうど近くに街がある未発見のダンジョンに転生させるね〜。そこでレベル上げするといいよ〜。ステータスシステムを使ってる生物は〜、一定レベルで進化するようになってるからね〜。基本的な知識は魂に貼り付けて〜、『器』に入ると同時にインストールされるようにしておくね〜。『ステータス』って言えばステータス画面が表示されるからね〜。最後に〜、この転生は神が死亡理由に関わったからであって〜、もう次はないからね〜。だから〜、気をつけて生きること〜!」
そう締めくくると、原神は再び指を鳴らした。
そうすると、今度は虹色に光る水たまりが現れた。
皇翔が原神の最後の言葉を反芻しながら、それを見ていると、
「さて、それに飛び込めば転生するよ〜。心の準備ができたらそれに飛び込んでね〜。」
そう言われハッとすると、数分で心の準備を整えた。
そして、皇翔はゆっくりと光の水たまりに近づくと、原神の方に向き直り、感謝の気持ちを伝えるべく、口を開いた。
「ありがとね、原神。僕を転生させてくれて。取り敢えず、折角の異世界なんだし、強くなってみるよ。もちろん、命を無駄にしないように。…………改めて言うね。ありがとう。」
そこまで言うと、皇翔は顔を伏せた。そうしないと、泣きっ面を見せてしまいそうだったからだ。そこで初めて、皇翔は感情が回復してきたことを実感した。
「何度も言うようだけど〜、次に死んだら魂の記憶から何もかも浄化されて〜、普通の輪廻の輪によって転生することになるからね〜。だから〜、簡単には死なないようにね〜。
………………君の第2の生に祝福を。」
そこまで聞くと、皇翔は、今度こそ顔を上げて、光の水たまりに飛び込んだ。
皇翔がいなくなり、原神が皇翔の転生処理を終わらせた後、突如原神の灰色の神域に警告音が鳴り響いた。
「ん〜、何〜?………………え、逃げられた〜?…………なるほどね〜、因果を…………じゃあ〜、すぐに追いかけて〜。」
虚空に向かってそう言うと、原神は1人、苦虫を噛み潰したような顔をした。
どうもー、frithでーす。
やっと転生させられました!ここまで長かったですね〜。脇道にそれたり、推敲が長くなったり(←作者のせい)
そして何やら不穏な空気が…………
次はステータス回になりそうです。
感想、評価、批判待ってます!