Interlude -水面-
――浮遊感
浮いている?
漂っている?
感覚的にはプールにただ一人浮かんでいるような感じだが、そこには自分と自分以外との境界すらも一切感じられない。
浮かんでいるのか沈んでいるのか、どちらが上でどちらが下なのか。
いや、そもそも僕自身の肉体という存在すら認識出来ていない。
ただ僕という意識がここにあるという感覚。
経験が無いので分からないが、無重力空間にでも漂ったらこんな感じなんだろうか……。
(・・たの、しんじ・・・ちを、・・・・・さい・・・)
(・・・え・・?・・・・・誰・・・?)
――声がする
声?
果たして声と呼んでいいんだろうか。
それは決して、僕の耳に音として聞こえてきた声ではない。
どうやって僕自身がその声を認識しているのかも不明だが、意識に直接響いてくる。
(・・たの・・・愛した・・を・・・・・、あなたの・・・・・しん・・・・ちを・・)
さっきよりはほんの少しだけ鮮明だが、それでも何を言わんとしているのかは全く分からない。
それでも僕に何か伝えようとする意志だけは伝わってくる。
(・・・あなたは・・・誰・・?・・・僕に・・何を・・・・・伝えようとしているの?)
肉体だけでなく、僕の意識すらも散り散りに霧散しているのか、うまく考えがまとまらない。
徐々に意識が遠ざかっていく……。
眠りに落ちる前だろうか?
いや、徐々に意識が鮮明になっていってるんだろうか?
覚醒に向かっている?
分からない……。
――上か下かも分からないまま、僕はただ、加速していく浮遊感だけを感じていた……。