第一部
十九歳の女主人公が異界で活躍する異世界ものですがとくにエンタメではないので純文に設定してあります。三人称→一人称の構成になってます。
第二部は現在推敲中です。
PS 猫地球という言葉は〈TAMALA2010〉からきてます。構造は〈君の名は〉をちょっと参考にしてます。じゃGTRは? GTRはですね、〈湾岸ミッドナイト〉からきてます。そういういろんな要素をからめたお話です。
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翔子がたばこの箱を取り出したとき、こじんまりしたスポーツカーが駐車場に入ってきた。くすんだ黒色の外観を一見し国産車であることしか翔子にはわからず、それから元がMR2であることを気づくのに一分ほどの時間を要した。そのクルマは全身に均整のとれたエアロパーツを纏っておりまるきり別のクルマに仕上げられていたのだ。それはともかくとして運転席の男は屈んで何かの作業に没頭しておりなかなか車から出てこない。不思議に思いつつ翔子がたばこに火をつけつつ見ていると、その若い男はぱんぱんに膨らんだ白いレジ袋ふたつを両の手に持って車から出てきた。彼はまっすぐ店舗入り口脇に置かれたごみ箱に向かうとガシャガシャという不快な音を鳴り響かせながらレジ袋を押し込んでいる。改良されたごみ箱は入り口を狭くしてあるため彼は一生懸命にレジ袋をつぶしつつ押し込んでいた。それが済むと彼は車に引き返しふたたびレジ袋をふたつ両手に持って出てきて同じ作業に取り組んだ。完全に家庭ごみである。彼はごみ出しを終えるとそのまま車に乗り込みバックさせ、来た道を帰ってゆく。清々しいまでの節約行為である。そこには現代を象徴するコストカット意識がまるで戒律のように息づき、確かに適合の一形態だと認めざるをえないものがあった。そう、彼は彼で時代の声に従っているのだ。