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天使が往く 中編一


「クレアシオンさん、助けて下さい」


 そう言うのは、勇者を横からまんまと奪われた神だ。最初は魔王さえ殺してくれれば、人がいくら死のうが知らないふりをしていたが、いつまでたっても魔王を倒しに行かず、それどころか、勇者のせいで負のエネルギーが集まり、魔族が強くなっている。


 このままでは、自分の命が危ないと、クレアシオンに助けを求めてきた。


「……また、勇者でも送ればどうですか?」


 神のこめかみに青筋が浮かぶ。この神は、天使であるクレアシオンが自分が頼めば断らない自信でも、あったのだろう。


 やってくれて当たり前、そんなオーラが溢れていた。クレアシオン的に、勇者が暴走するにしても、放置していたこいつが悪い、死のうがどうでもいい、という感想だった。だが、


「まぁ……、関係ない人が殺されるのはいい気がしないのでやりますが……」


 クレアシオンは当時、堕天する前は、神に不遜――仕事押しつけられすぎて――な態度を取りはするが、基本頼み事は聞いていた。


 それは神のためではなく、アリアの評価を傷つけないため、アリアの天使でいられるために、仕事をしていた。


 三枚六対の美しい大きな純白の羽を広げ、その神の元を去っていく。


◆◇◆◇◆


『ぎゃー!!』


 魔王城で悲鳴が上がる。城の周りの砦はもう壊され、強い魔族は皆殺しにされていた。


 無事なのは魔王城の魔族たちだけだが、時間の問題だろう。今、魔王城の正門が壊された。


 立ち上がる煙の中から人影が映る。片足を上げ、蹴りあげていた形を崩す。額に黒い二本の角をもち、銀髪が揺れる男――――鬼神化したクレアシオンが門の扉を蹴破ったのだ。


 頑丈な魔族たちを守っていたはずの重厚な扉は、蹴破られた瞬間、それは質量兵器にかわった。金属で出来た扉が魔王城の壁をぶち壊し、中まで侵入していた。


「貴様!!何者だ!!何をしに来た!!」


 魔族の幹部らしきものが怒声をあげて、誰何する。


 クレアシオンは鬼神化をとき、その問いに答える。美しい純白の三枚六対の大きな羽が広げられ、彼の頭の上には光耀く光の輪が浮かんでいる。


 神よりも神々しく、天使の中でもっとも強く、その強さから部下を持たないが、最上級天使に位置する。強さ故に疎まれた天使。


「神界の天使、女神アリアの天使、クレアシオン=ゼーレ=シュヴァーレンだ。魔王の首、及び、幹部の首を取りに来た」


 そう、ふざけたことを真顔で口にする。言われた方はたまったものじゃない。当然、怒って煩くなる。


「たった一人で何ができる!!やれるも――」


 やれるものならやってみせろ!!、と言い終わる前に首が飛ぶ。後ろには金髪の九本の尻尾をもつ男――九尾化したクレアシオンが先程まで会話していた幹部の首をもって残身していた。


 首を手にはめている爪で切り裂いたのだ。


「言われなくても、そのつもりだ」


 固まっていた魔族達の時間が動き出す。姿が変わっている敵に一瞬戸惑っていたが、敵には変わりない。


 一斉に魔法を唱えだし、斬りかかってくる。


 クレアシオンは不用意に近づいてきた敵を尻尾で圧殺する。尻尾で潰された敵ごと地面が割れる。


 尻尾がふさがっている間に正面から斬りかかってくる者もいた。尻尾を危険だと判断したのだろう。


 後少しで当たるというところで、クレアシオンの姿が再び鬼神になる。手には大剣――――神器ヴェーグをいつの間にか持ち降り下ろす。それだけで、地面が陥没し、地割れが起き、城が傾く。


 直ぐに魔法が彼に向かって飛来するが、九尾化し、縦横無尽に空すら駆け、すれ違い様に爪で攻撃する彼には当たらなかった。


 しかも、爪で攻撃しながら、魔術まで使って攻撃していく。


 空間を殴り割り、そこから武器を変え、姿を変え、魔族を殺していった。


 鬼神化すると、最小限の魔術で隙を作り、圧倒的な力で殺し、九尾化すると、素早い動きで二刀流の剣や爪、短剣で近くの敵を殺し、圧倒的な魔術で遠くの敵まで殺していく。


 まさに、変幻自在。


「ば、バカな我々は負のエネルギーを集め、それぞれが最上位悪魔になったというのだぞ!!」

「動きがなってねぇ」


 クレアシオンの言葉は声をあげた魔族に届かなかった。彼が言い終わる前に首が飛ばされたからだ。


 確かに悪魔は強くなっていた。この世界の管理者なら、後少しで殺せるほど戦力を蓄えていた。


 ナール王国が人間の国を支配し、亜人達を全て奴隷にしたとしても、勇者たちでは魔族にかてず、滅ぼされるだろう。


 いや、悪魔たちはそれを狙っていた。ナール王国が虐殺と強奪を繰り返している間に、負のエネルギーを集め、ナール王国が天下を取った時に、引き摺り下ろし骨なの髄まで貪り尽くすつもりでいたからだ。


 間抜けなはなしだ。自分達の欲望が育てた悪魔に最後は食い殺されるシナリオが出来上がっていたのだから。


 だが、クレアシオンの敵ではなかった。いくら力を持っていても使いこなせていない。隙がおおい。力に振り回されていた。


 それに魔族たちは、世界を滅ぼすと他の世界に攻めていく、中には神界に攻めてくる者もいる。アリアに危険がおよぶ可能性は芽がでる前に摘まなくてはならない。


 物の数分で外の敵を制圧した。そして、クレアシオンは魔力感知を使う。


「……城の中にまだ大分残ってるな。――これは!?」


 何かを察知した彼は急いで魔王城の地下に急ぐ。


◆◇◆◇◆


「ふはははは、もうすぐだ!!。もうすぐで邪神様が誕生する。これで、外の敵を殺せる!!勇者様には本当に感謝だ!!」


 魔王城の地下、そこで多くの幹部を含めた悪魔たちが禍々しい淀んだ魔法陣に祈りを捧げている。外の揺れを感じながら、仲間が何者かに殺されるのを感じながら、邪神の誕生を待っていた。

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