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(旧)もれなく天使がついてきます!  作者: 咲 潤
第一章 ~ 運命の輪 ~
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―第5話―夢で見た女神♪

  「―――どういう事だよ!?」


  暗闇の中で出会った女性に、約束通り俺を呼んだ理由を聞いてた所、俺は女性の言葉に納得できないとばかりに食って掛かる。


  目の前の女性は、自分を愛と戦いの女神『アイシス』だと名乗り、俺を呼び寄せた理由と、用件を語っていた。


  「…言葉の通りです。あの時私がコンタクトした後、私の話を聞き入れなかった場合、塾に行っても家に帰っても、公園の中で動かなくとも、早く行こうと遅く行こうと、寄り道してもしなくても、どんなに警戒しても車にひかれて亡くなるところだったのです」


  「……は…?」


アイシスの話がイマイチ理解できない。


突然死ぬとか言われても、あの時は病気などもなかったし、正直言ってピンと来ないのだ。


  それなのに、いきなり自分の人生が詰んだ様な話をされて、『勝手に人の人生を終わらすな』と思って声を荒げていたのだが。


先程のアイシスの前置きによると、どうやら定められた運命にはたかだか人間の分際では抗う事もできないらしい。


  そんなこんなで、今はまだ俺を呼んだ理由以前の話を訥々(とつとつ)と聞かされている。


  「人は、よく『運命なんか変えられる』などと言って抗おうとしますが、極限まで追い込まれて必死に抗った結果、人生が良い方に動いたりするのも全て運命で決められているだけ」


  恐らく難しい顔をしている筈の俺を見ながら、アイシスは続けた。


  「1人の人間が、個人的な感覚の中で必死になったつもりで、それまでどんなに頑張っても報われなかったりするのは、単純に力の入れ時を間違えたか、頑張りが足らなかっただけ。あるいはその人の運命的に報われないものを選択していただけなのです」


  眼を閉じ、俺を諭すように語る口調はまだ終わらない。


  「自分が望んでいた結果に報われなくとも、他の事では報われていたりして、他の人から見たら『贅沢だな』とか言われる事もあるし、何かの切っ掛けで自分が実は恵まれていた事に初めて気づく事だってあるのです。」


  ほうと一息いれて、アイシスは続けた。


  「力の入れ時を間違えるのもそう。子供の頃から。学生のうちから。社会人になってから。人それぞれの力の入れ時に必死になっていたら、何も人生半ばを終えてボロボロになる事も無かったりするし、『今からでも死んだつもりになって必死に何でも頑張る』なんて事も必要無いのですよ」


  「……は、はあ……」


  何か、アイシスの口調に熱が入り始めた気がする。


  「学生時代、ノイローゼになるくらい必死に勉強頑張って、社会人になっても数年は初々しく頑張ったけど、数年後は仕事もマンネリ化して、40才越えて報われない人生を送る結果になったりもします。しかし逆に、学生時代を要領よく適度にこなして、社会人に成って初々しく頑張り、その後マンネリ化する前にもうひと踏ん張り学生時代に出さなかった分の本気を出して頑張っていたら、社会人になってからの20年後が変わっていたりもするのです!」


  いよいよ顔まで熱を帯びてきた。


その美しい顔を僅かに近付ける様に、前のめりになって話が続く。


  「………」


  俺は無言のまま見守っていた。


  「そして、どこで頑張ってどこで手を抜いて、辛い人生を送るか恵まれた人生を送るか、後になって必死になる人生なのかならない人生なのか、それらすべてが決められているのが運命なのですよ!」


  最後の方はやや早口になりながら、息継ぎも忘れて語ったらしく、話を終えたアイシスは、軽く荒めの呼吸をしている。


  「……そ、そーなんですねー……」


  さすがの俺も若干引きぎみだ。


何とか笑顔で理解を示そうとするも、引いた内心が表に出てしまって苦笑になった。


  「……あ、やだ、なんか熱くなっちゃって……」


俺の反応で我に返ったのか、女神は両手を頬に当てて恥ずかしがる。


  恥ずかしがる顔もとてつもなく美しく可愛い!


  しかし、熱がこもると発言暴走しちゃうタイプなんだな、この女神。


  ちょっと残念な一面を見てしまった気もするが、感情を込めて話をするあたり、なんかすごく人間味がある事に好感も持てるし驚いてもいる。


  神とか人間を超越した存在って、どっか達観してクールに無感情にしているイメージだったが、あくまで自称でも本物らしい女神がこんなに人間味があるもんだとは思わなかった。


  なんせこんな生活感も何もない、真っ暗な無音の空間に居るくらいだから、現実の人間ではない存在である事は疑う余地がない。


  「……は、話を戻しますね?」


  どうやら女神は、自らが話を脱線してしまった事に自覚はしているようだ。


  「……え、ええ、どうぞ……」


  ハニカミながら前置きする女神の可愛さにつられ、俺も赤くなりながら応える。


  「え、えーと、まあ、それだけ絶対的な運命で、あなたはあの後亡くなる予定だったのだけれど、恵まれた人生を歩めなかった清流に、私の力で別の人生を贈ろうと思ったのです」


  そう言って両手を顔の前で合わせる。


  「……別の人生?」


  とりま、聞こえた単語を繰り返しておきながら、言葉の意味が遅蒔きに伝わる。


それには何か違和感を覚えながら、俺はアイシスを見返していた。

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