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(旧)もれなく天使がついてきます!  作者: 咲 潤
第一章 ~ 運命の輪 ~
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―第11話―夢の中で(再)☆

  俺は記憶に新しい、何の特長もなくただ真っ暗な所に居た。


  ふと気付くと、上の方にに光の玉が現れ、目の前2m程の距離にゆっくり降りてくると、俺の胸の高さでピタリと止まり、人の形に広がる。


  「……ちゃんと会えたようね、セイル」


  そう言って目の前に現れたのは、アイシスと名乗った女神だった。


  見目麗しく、人を超越した美しさを持つ女神は、ニコッと微笑みながらこちらを見る。


  「『ちゃんと会えたようね』って事は、やっぱりあの子が例の天使だったんすね!?」


  アイシスがどんなに美しくとも、文字通り人生を左右する約束がウソだった事に、さすがの俺も怒り顔を向ける。


  「……あら?何か不満でもありましたか?」


  とぼけた様にニコニコと返す女神に、怒り度合いも増しながら尚も食らいついた。


  「ああ!不満もなにも、あの天使はまだ子供じゃないっすか!?」


  「……え?だって、あなたもまだ十五歳じゃないですか?」


  きょとんとした顔を返されて、何を言ってるんだとばかりに怒声が増す。


  「いや!俺よりも、あの子はどう見たって七・八歳だろ!?」


  身振り手振りも大きくなった俺を見ながら、尚も落ち着いた姿勢を崩さない女神は、自信たっぷりに言った。


  「あら、あの子も確か十五歳のハズですよ?…もし違っても、一つか二つくらいしか違わないはずですが……」


  「……は…???」


  俺の頭は完全にパニクった。


  女神の言うことを疑うつもりもない。


  とは言え、女神の言うことを信じるとしても、見た目がどうみても幼いのは実際に彼女を見てきた俺自身がよく知っている。


  両方の筋を通せば、結論としては不老不死に近い様な長寿か、種族的に幼く見えて成体している種族か、概ねその2種類に分けられるだろう。


  となると、天使と言えば俺の知っている限りでは前者って事だろうな。


  「……なるほど。……そうか、そう言うことか。俺が早とちりしてたみたいだな」


  1人でブツクサと呟いていると、女神は首をかしげてこちらの様子を伺う。


  「怒鳴ったりしてごめんなさい!」


  ここは素直に謝っておこう。


  「良いですよ。それにしても、あの子は可愛いでしょう?」


  サラッと返され、話は次に進んでいく。


  どうやら水に流してくれたみたいで、天使の事を思いながら微笑んでいた。


  「そうっすね。……って、ちょっと待てよ?」


  前半は明るく返しておきながら、すぐに違和感に気付く。


  今の受け答えの感じだと、まるで俺がロリコンみたいじゃないか。


  「何ですか?」


  再び不思議そうな顔をするアイシスへ。


  「一応言っておきますけど、俺はロリコンじゃないっすからね?歳がタメの合法ロリとか、そんな設定要らねぇっすから!」


  ビシッと人差し指を立てた手を突きだし、女神に断言する。


  「あらあら、別に私もあなたが幼女趣味とか言ってませんよ?」


  「だあぁぁっ!その言い方だと余計にスゲーいかがわしい変態趣味みたいだから、やめてくれ!」


  「ですから、言ってませんってば」


  清楚な女神らしからぬ発言に、俺の方が赤面する。


  「……って、そうえいば、女神であるアイシス様はなんでここに?」


  自分でも突然頭に浮かんだ疑問が口をついた。


  「……ああ、そうでした。まずは合流おめでとうを言いに来たのですが、これでセイルを転移させ、あの子に接触させるという私の役目も終えたので、同時にサヨナラも伝えにと思いまして」


  首を傾けてニッコリ笑う女神は、初めて会ったとき以来の美しさを讃え、輝きに満ち、透き通るような眼差しを向けてきた。


  「そ、そうなんだ……。もう、会えないんすか?」


  ほんの僅かな間の出来事だったが、少なからず会話を交わした仲だから、改めて別れを突きつけられると、どこか寂しい気持ちになる。


  それに、転移してくれたお礼もまだ言ってない。


  「いえ、そのうちまた会うことになるかもしれないし、私にも先の事はわからないのです」


  そう言う女神は少しだけ寂しそうな微笑みを見せる。


  「……そっかぁ。折角知り合ったんだし、なんか寂しいな……」


  俺も多分、少し寂しい顔をしているに違いない。


  「ありがとう。……あ、でも、セイルが会いたいと思ってくれるなら、私も手が空いたときにこうして夢の世界で会いに来ますよ」


  俺に気を使ってそんな事を……えっ?


  「おいおい、それじゃ全然サヨナラじゃないじゃん!?」


  「ええ。なにも本当にサヨナラするのではなく、役目を終えたので、1つのケジメとしてのサヨナラをするだけです。普通の物語なら、私のような役目のキャストは1度切りで終わるものだから、セイルの人生の物語でも、私をそういう風に扱われて、役目を終えたっきりサヨナラなのかな、と思ってたもので……」


  少しハニカミながら、長々と説明している所を見ると、アイシスも本当に少しは嬉しく思ってくれているのだろうか。


  「そういうことなら、俺はアイシス様に知恵を借りたい時もあるだろうから、これからもこうして会えると嬉しいっす」


  今度はこちらが微笑みを返し、アイシスを見る。


  「そうですね。あの子も私の眷属の天使ですから、セイルに助けをお願いした私にも、あなたのサポートくらいはする責任もありますものね」


  おっ?これは女神との縁もキープ出来そうか?


  ちょっと下心が湧き始めた俺の心情を知ってか知らずか、アイシスが続ける。


  「ただ、先程は『いつでも』と言いましたが、実は私も多忙の身ですから、『いつでも』は言いすぎました。でも、できる限りサポートしますので、これからもよろしくお願いしますね?」


  やっぱり、そう都合よくはいかないか。


  でも、縁が切れなかっただけでも良しとしよう。


  「ああ!こちらこそ、よろしくお願いします!」


  嬉しさが表に出て、明るく返す。


  「それでは、今日の所はこの辺で。そろそろ朝を迎えますから、元気よく目を覚まして、1日頑張って下さいね?」


  アイシスのコンタクトが時間切れの様で、「じゃあまた」などと返す俺の言葉に反応も示さず、笑顔で手を降ったまま光を放ち、溶け込むように薄く消えていった。


  間もなく俺の視界もそのまま光に包まれ、白1色に染め上げられていったのだった――――

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