第1話「ここはどこだ。俺は・・・」
がんばる
草木の匂いと、小鳥のせせらぎ。
そして地面からほのかに香る土の匂い・・・
ああ、なんて気持ちの良い朝だろう。
・・・ここどこ?
俺は現在の状況に疑問を抱き、体を起こし周りを見渡す。
見るばかり人工的な建造物は見受けられない。
それどころか人間の姿もだ。
たしか、俺は家に・・・
・・・家?
そもそも家って、どこだ?
いや、そもそも俺は・・・誰だ?
ただ一つわかるのは、ここは俺のいた世界ではないということ。
断片的な記憶がそれを示す。
朝焼けの校舎、夕暮れの町並み、夜を照らすビル群。
ここには何もない。辺境の田舎、という可能性も無きにしも非ずだが、一番それを感じた違いは匂いだ。
あの広くも狭苦しいあの汚れた空気が全く感じられないのだ。
目眩に襲われ、俺はふらふらと辺りをうろつく。
近くにある水面に自分の顔を写す。
まったく馴染みのない顔がそこには映る。
俺の名前、そしてそれに関する記憶がほとんどといってもいいほど消えている。断片的な記憶はあるが、それ以外が何もかも思い出せない。
持ち物・・・
思いついた俺は持っているカバンから入っているものを次々と取り出す。
名前だけなら、確認できるものがあるはずなんだ。
「筆箱、教科書、事典、財布、、スマホ、・・・あった」
学生証。
私立〇△高校、【押止 重】
「俺の・・・名前」
学生証には俺の名前がしっかりと刻まれていた。
押止重
全くもって自分の名前と思えない学生証の証明写真は明らかに先ほど水面に写した顔と一致していた。
そして数秒して、ほかの疑問へと移る。
なぜ俺はここにいるのか・・・だ。
少なくともこんなところで居眠りをこくとは思えない・・・いや、思いたくない。
恐らくラノベによくあるファンタジー、しかも異世界転移なるものに巻き込まれたと仮定しておこう。
ではそれがなぜ起こったか?
思い出そうと必死に転げ回っても見るが、まったくもって思い出せない。
「こんな所で留まっていてもしょうがない・・・か」
まずは安心して眠れる場所の確保を最優先しなければ。
その前に人に会いたいが・・・
そう思いながら俺は荷物をかばんへ戻し、どこかへ歩きだそうとすると、遠くから人影が近づいてくるではないか。
「人・・・?」
話せる人だろうか。それにしては小さい。子供か?大きさでいうと、俺の腰ぐらいまでだ。
話が通じるといいが・・・
「あ、あの、」
「ぐギィ?」
そいつは凶悪そうな棍棒を持ち、人間というよりかは、
怪物
まるで物語に出てくるようなゴブリンの姿形をしていた。
至らない点がありますが、コメントなどで指摘してくださると喜びます。
ブックマークなどくれると作者が小躍りします。
P.S.
今度は消えません。