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ヤンデレーション!!  作者: GIYANA
第二部
16/41

再起を…………


「いちち……」


 体を動かす度にズキンと痛みそのたびに体を動かすのと、口の中も切れているから喋るのもおっくうになるから自然と無口になる。

 何度触れたか分からない頬にそっと触れるがやっぱり腫れているのが分かる。触るのは余り良くないと知りつつも、こういう時はどうして気になって触れてしまうものなのか。

 ミズカの愛情表現でどれぐらい殴られたかなんてわからない。意外に早かった気もするし、凄く長かった気もする。

 でも凄い痛いけど、痛いだけで頭はクラクラしない、手加減して痛めつけてくれたのか、上手に痛めつけてくれたのかは知らないが、体は意外なほどに軽い。


「ちょっと待っててくれよ、今美味しいコーヒー淹れてやるからな」


 話しながらずきずき痛むが、それを表に出さないように2人に話しかける。


 俺は今、自室でコーヒーの準備をしている。


 そう、結果無事にとはいかないけどこうやって帰ってこれたのだ。


 あの後、俺を痛めつけた後、満足したミズカは、


『あああぁ、いいわ! ユウト! あなたは最高よ! 良かったわ! 貴方の勇気に免じてひとつご褒美上げる! 愛情を受け止めてくれる時は裸でいてあげるわ! じゃあね無力な2人とも、良かったね、ユウトが助けてくれたことを感謝しなさい!』


 と鍵を放り投げて立ち去った。


 その後、さっきも言ったとおり意外なほどに元気だったから鍵を外し、2人が歩けるまで回復するのを待って自宅に帰ってきたのだ。

 消耗しきっているとはいえ、食事もちゃんと与えていたから特に異常はなかったのがよかった。


「ほら飲みなよ、マナミ程とは言わないけど、美味しく淹れたと思うよ」


 テーブルの上にコーヒーを並べると2人の対面に俺も座ると自分も早速とばかりに飲む。


(って~)


 傷に染みるが、顔に出さないようにする。

 やっぱりマナミが淹れてくれたのは及ばないか、風味が全然足りないんだよなぁ。

 同じ淹れ方のつもりなのにどうしてと、今度教えてもらおうかなと考えて、痛む口の中を我慢しながら飲み続ける。


 だけど俺が出したコーヒーをマナミとトモエは飲まない。


 それはずっと泣いていたからだ、俺が殴られるときも解放された後も、今の今までずっと泣いていた、時折「ごめんなさい」「ごめんなさい」と俺への謝罪を口にしながら。



 惨敗、今の状況はこれに尽きる。


 俺は自分でも何とかできると思って、しかも自分がしたことなんて、2人に分かり合えるという範囲内の外で何とかしようという消極的積極性がしっかりと仇となり、ミズカの掌で踊らされる結果となったのが今の様だ。

 だからせめてと、俺が今気丈にふるまうのは男の矜持じゃない、これは2人への。


「本当にごめん、2人とも」


 手をついて頭を下げる、ありったけの謝罪をこめて。


「どど、どうして、ユウトが謝るの!?」

 俺の謝罪に2人は飛び上がって驚いた。


「俺は、何もできなかった、ぐったりした2人を見た時に、これほどまでに無力であることを悔しいとは思ったことはなかった」


 俺の言葉を2人は切ない表情をするが、黙って聞いてくれている。

 本当に俺は恵まれている、マナミもトモエも俺なんかを好きでいてくれるのはもったいないぐらいいい女達だ。


「だからこそ、今度は俺の番、このままじゃ終わらない」


「「…………え?」」

「はっきりわかった、俺が何とかしたかったけど悔しいけど、なんとかしたいのなら最初から2人の手を借りるべきだったんだよ、それに気付かない俺は大馬鹿だった」


 そもそも俺はリョウコに泣きながら告白した状況からスタートして、今は共同管理なんてされている。俺が思い描くカッコいい俺は俺じゃないんだ。


「みっともなく、情けなくあがいてやる、だからね、ミズカの件もだけど、今後2人を危ない目に会わせるかもしれないとか全然考えないし、全力で頼りにするからな、いいな?」

「「…………」」

「ははっ、情けないなんて思うのが当たり前だよな、だけどこれが俺の、ふえ!?」


 手を抑えられて、2人が俺の太ももにそれぞれまたがる形で向かい合う。

 目を白黒させる俺に2人は優しく微笑んだ。


「わかった、ユウトの言うことは聞く」

「だから今度は私たちのせめてものお詫びとして……」


 徐々に2人の形のいい唇が近づいてきてぺろっと目の近くの傷口をなめてくれる。


「ちょ、ちょ、ちょ!」

「治療行為だから、我慢してユウト君」

「い、いや、だからね!」

「いいから、言っておくけど、本当は、2人に一度なんて、私は嫌なんだからね、だけどあんたが傷ついて、こんなどうしようもない状況で私を頼ってくれるのが嬉しすぎるの」


 健気なことを言いながら、そして泣きながら2人は俺を見る。


「…………」


 俺のことを思ってくれての行為なのは十分すぎるほど伝わってくる、俺が抵抗しないことは分かったのだろう。再び唇が近づいてきた。


「ごめんなさい、ごめんなさい。あの女、殺してやる、絶対に殺してやる」


 ぺろぺろと舐めながら、物騒なこと言う2人。俺の言うことをちゃんと受け止めてくれる2人に、俺は罪悪感で胸がいっぱいになる。


 2人を全力で頼りにすると言ったすぐの俺の「詭弁」に、心の中で謝罪する。


(ごめん2人とも、俺が今からするのは、多分、悪あがきだ……)


 結局、その日は夜も遅いからウチに泊まっていくことになった。


 そして性懲りもなく寝込みを襲おうとしたので、部屋の鍵をかける羽目になった。



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