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ヤンデレーション!!  作者: GIYANA
第二部
14/41

不動なる信念の(以下判読不能)

「付き合ってる? 俺とミズカが?」


 この問いかけは授業の休憩中、やたら真剣なクラスメイト達から聞かれたものだ。

 あれから4日が過ぎて、その間ずっと俺は空いている時間はなるべくミズカと一緒にいるようにしていた。

 確かにずっと一緒にいる。一緒に食事したり、家に帰れば小城さんのためにラインをする。でも俺の行動がそう誤解させたわけか、それはそうだよな、俺も男女が一緒にいれば、仲を疑うのは当たり前か。


「いや、全然違うよ、まあ一緒にはいるけど、仲いいだけ」


 との俺の言葉にほっとするクラスメイト達、そうか、人気はあるんだな。

 ちらっとミズカを見てみると「同類と手を組んでいる」様子で仲良さげに話している。時折その同類たちの俺を見る目、これは結構露骨、俺はどうやら冴えない男認定されているみたいだ。

 思えば、最初この集団を見た時にそのうちの1人と噂になるなんて思いもよらなかった。

 しかもその噂のおかげで「ぶりっ子女に騙されるレベルの男」なんてレッテルも張られることも知っている。もういいけど、気にしない。どの道俺のクラスメイト女子の評判なんて最初から決まっているし、目的もはっきりしているから気にもしてられない。

 と心の中で息巻いていると視線を感じたからミズカの方を見ると。


 あざとくにっこり微笑まれて、人差し指を唇に当てていた。


 これが、放課後一緒に遊ぼうのサインなのだ。



「ここは公式を代入すれば、簡単に解けるんだよ」

「あ、ほんとだ、簡単だ、なんでわかんなかったんだろう」

「それを分からせないようにするための問題だからね~」


 今日は、放課後図書室で居残り勉強をすることになった。

 ミズカは学年でも上位1割の成績を収めており、問題の相性がいいときは何回かベスト10位にも名を連ねたことがあるらしい。

 彼女一番の強みは苦手科目が無いのだそうだ。彼女曰く「完璧にする必要はないレベルで十分だから」というのはカッコいい。

 しかも元々は今通っている高校よりも二つぐらいランクが上の高校にも十分に入ることができたのだそうだ。

 ではどうして下位の今の高校に通うことになったかというと、これが驚き、大学の指定校推薦を取るためなのだそうだ。

 行きたい大学は某有名私立大学で、ランクが上の高校でも、今通っている高校でも指定校推薦が来ているようなので確実だと思い選択したのだそうだ。

 そんな話をほうほうを頷きながら聞いている俺であったが、ここでもミズカの印象を改めることになった。


「いや、正直、尊敬するよ、見直した」

「え?」

「ちゃんと将来を見据えてって、俺にはできないからさ、今の高校は、偏差値相応だったからという理由だったから」

「……やっぱりユウトは変わってるよね、まさか尊敬なんて言葉が出てくるとは思わなかった」

「そうなの?」

「そうだよ、楽をするためとか、色々言われたよ」

「いやいや楽って、好成績維持するために努力してるじゃん、俺はしてないなぁ、恥ずかしながら」


 俺は中間期末前には勉強するかってぐらいだ。しかも勉強する理由も補習が面倒だとか、親からの仕送りを減らされるからとかが理由、だから平均を行ったり来たりなんだけど。


「有言実行って奴だよな、かっけえなぁ」

「かっこいいって、女子に対しての褒め言葉としてどうなのよ、もう、ねえユウト、期末テスト終わったら週末遊べない?」

「ああごめん、週末はデートがあるから、その代わり、期末の最終日に遊ぶのはどう?」

「オッケー、カラオケでも行かない?」

「えー、俺歌とか歌えないけど」

「ふふん、私は少し自信あり、恥をかかないように歌い方教えてあげるよ」


 今はこんな会話もするようになった、もうそんな日、最後の週末の2日、3学期が始まると同時に今の高校に転校してきたけど、もうこの季節、高校入学したときは進級を別の高校で過ごすなんて思わなかった。

 2年に進級してからは、元の高校に通えるらしいが、となるとこうやって勉強するのも最後になるかもしれないのか。


「どうしたの、物思いにふけってさ」

「いや、寂しいなって思っただけ、進級したら俺は元の高校に通う訳だから、ミズカと会えなくなるなと思ったからさ、ちょっと自分でもびっくり」

「……おおう、ちょっとトキめいたよ、こんなベタな言葉に、ちょっと自分でもびっくり」

「はは、まあでも、小城さんの件は頑張るからね」


 小城さんの件と言っていも性格どころか、名前からしても男か女かもわからない。

 というのは俺は相手の情報をミズカが言わない限り、聞かないようにしている、それがせめてもの気遣いだ。


「ん、ありがと」


 それが嘘じゃないと分かるのだろう、凄い上機嫌なミズカ、トキめくか、額面通りには受け止めないにしても、ひょっとして小城さんと会える日はそう遠くないかもそれないなんて、ちょっと自惚れてみる。

 それに彼女のことはリョウコにもちゃんと言わないといけないなあと思った時下校の放送が流れる。

 さてそろそろ帰るかと、週末は追い込みかけないといけないと、思った時に、すっと、差し出される1冊のノート。


「暗記系が苦手だったよね、ノートを作ってあげたから参考にして」

「いや、まじでありがとう!」

「こっちも復習代わりになったからお相子だね」

「期末終わりの時は奢るよ、参考にさせて……」


 お手製のノートを開こうとするとすっと手を抑えられる。


「今は見ないで、ね? それとさ、大事なメッセージ書いておいたから」

 手をギュッと握りながら耳元で囁く。

「え?」

「だから直接言うと恥ずかしいから! 楽しみにしてね!」


 相変わらずあざとい微笑みをするミズカだった。



(メッセージか、なんだろうな)

 俺は帰宅した後、制服から私服に着替えて一息つく。「まさか俺のことを好きとか」といきたいがそれをすぐに自分で否定してしまうのは情けないけど。

 ミズカと一緒にいるのは楽しいけどああやって手練手管を使われるとドキッとする、ときめく意味じゃなくて。


(多分アレは俺を試しているな、なびいていないのを知っていてどこまでやればなびくのか、もう、そういうところは本当に性格が悪いよな)


 こうなったら意地でもなびいてやらないか、いよいよとなれば心を鬼にして騙されたふりをして襲うふりをして男の怖さを教えなければならないかもしれない。


(まあできないけどね!)


 息巻いたところで襲うふりなんてやらないし出来ないし、実際やったら報復が怖いからやらないから選択は一個しかないんだけど、俺のそういうところも見抜かれているんだろうけど。


(って、まだ2人とも来てないのか)


 と2人の不在を確認して、改めて気を引き締める。

 そろそろ夕飯時だから、マナミとトモエの2人がそろそろ来ることになっている。

 と思ったらタイミングよくマナミからラインの着信が来た。


――今から行くね、美味しいご飯作ってあげるから。


 よしと、携帯を仕舞う。あの2人を説得するのは大変そうだし、説得したところで結果どんな結末になるのかわからない。おそらく猛反対にあうだろうが、それはこっちも引き下がるつもりはない。

 っと、まずはノートを確認するか、大事なメッセージって言っていたな。


(おそらく、小城さんがらみだろう)


 という確信はあった、名前を教えてくれた小城さん、ミズカのいう大事なメッセージを勘違いさせるように言うってことは、色気のある話ではなければそれ以外考えられない。

 さて何処にメッセージが書いてあるかと、ノートをページとめくりながら読み進める。カラフルに細かく、可愛いキャラで「重要!」と書かれてある。

 ちなみにミズカは字がとても綺麗であったことで、最初見た時似合わないとか失礼なこと考えたけど。細かい描写は流石女子だなぁと思ってじっくりと読み進めた時だった。


「……え?」


 ページをめくった瞬間に手が止まってしまう。暗記系の科目である世界史から日本史に科目が移り変わったのだけど……。


「文字が全く違う……?」


 丁寧であることは変わりないが、まるで別人が書いたもののようだ。

 いや、これは違うってレベルじゃない、今度は丁寧で綺麗な文字は変わらないけど、カラフルさやイラストは消えている。これが別人のノートだということのなら誰もが信じるのだろう、とここでノートは終わった。

 三学期末のテストだからそんなに範囲も広くない、それでもイラストとかを使っているから日本史の部分はページ数6に対してこっちは半分の3ページほどだ。


「メッセージはどこ、なんだ?」


 自分から出たとは思えないしゃがれ声に驚く。

 なんだよ、なんでこんなに緊張しているんだよ、どうして手に汗握っているんだ。


 もう一度読む、すぐに終わる、もう一度読む、またすぐに終わる、もう一度、いやこんなことをしてもしょうがない、ミズカのことだ、ストレートにメッセージなんて残すなんてことは考えにくい、いつものあざとい感じで手練手管を使って俺を惑わせて楽しむつもりなんだな。

 まずはページを裏返してみてみる、裏から見るとこう、愛の言葉なんて冗談みたいなのが書いてあるとかだと思ったが、やっぱりない。

 うんうん、愛の言葉なんてあるはずがない、彼女は俺に対して抱いている感情は「友情的好意」なのだから。ミズカの好みは美少年系、知ってるだろうよ。


「そうだよ、もし俺が本気になったら、絶対に引くに決まっているんだ、まったく女はさ、困ったものだよな、美少年系が好きとかさ~、顔だけで男を判断するなよな~」


 騙されないぞ、騙されてなるものか、そうだ、アナグラムだ、古典的暗号、男の思考を知り尽くしているミズカだ、男がこういった「理屈好き」「演説好き」なのは知っているから、こういった趣向もしても全くおかしくない。


「……くそう、アナグラムなんて、見つからない」


 いくら読みこんでもメッセージなんてものはない、ひょっとしたらわかりづらいように暗号にでもしているのかと思ったが、そんなこともしていない。

 そうだ、確か前に両利きとか言っていたよな、右手と左手で書くと筆跡が違うのか、いや、でもこれは普段から書いているような文字だし、そんな器用な芸当ができるのなら話題に上ってもよさそうだ。


『今は見ないで、ね?』


 あの上目遣いでいつものあざとい表情だった。自分が可愛いことを自覚し、研究し、男の好みに合わせて媚びる見慣れた笑顔だった、

 メッセージがあると言ったのに、なんのメッセージなんてものはない……。

 いや、ひょっとして、文字に書かれているものではなく、意図を読み取れということかもしれない、となると理解したぞ。


「普通に考えたらこの字は小城さんのだろ、引きこもりの友人と自宅で一緒に勉強したんだよ、その時に俺のためにノートをまとめてくれたんだ、これがメッセージなんだ!」


 わあ嬉しいな、レッテルを張られても頑張って甲斐があった、少しづつ距離が近くなってくる気がする。。。。。。


「…………」


 そういえば、マナミとトモエはいつ来るのだろう、ひょっとしてラインを見落としてしまったかなと思って確認するが、そんなものは届いていない、マナミからの既読メッセージが表示されるだけだ。


――今から行っても大丈夫かな?


 でもこれも変じゃないか、あのマナミがいちいち断りを入れるのか。

 現にさっきだって、もう中にいるものだと思ってあたりを見渡したじゃないか、そもそも前にもこんな律儀に時間なんて告げたなんてことはない。

 今じゃあ俺よりも家のことを知っているとは先に述べたとおりだ。

 こう生々しくて恐縮だが「自家発電」するときに、入念にいつも誰がいないかどうか確認する習慣だって身についている。

 でもしっかりと「オカズ」まで把握されて「どうして自分達ではないのか! 本のようなことがしたいのならいつでもしてあげるのに!!」油性マジックでの怒りのメッセージ付きでエロ本が机の上に置かれていた時は恥ずかしくて泣きたくて死にたくなった。


『なぜかわからない、だけど不安であり不審なの、だから排除する、それだけ』


 マナミの言葉が蘇る、ああ、なんで蘇るんだ。


「…………あれ?」


 そうだ、マナミの言葉と小城さんからのメッセージと言えばといえば、あの時の、あの会話は変だ。

 初めて小城さんのことを話した時、プールでのことだ。


――


「俺とマナミとは仲良くできるんだ、だから大丈夫だよ、それと俺が出来ることがあれば、出来る範囲内だけど協力するよ」

「流石、公然と二股かけている男は言うことが違うよね」

「二股なんてかけてません、俺は一途なの」

「でも小ケ谷さんは「時間の問題」とか言っていたんだけど?」

「なんかさ、それ聞いてもさ、「慣れたなぁ」としか思えないところがすごいなぁ」

「本当に伊勢原君はさ、本当にこう「いい人」だよね~?」

「うるさいな、いいだろ、キモい~とか言われるよりマシだと、そう結論付けたの!」


――


 ここだ、この会話だ。あの時は全く気が付かなかったけど、もっと絞れ、何が引っ掛かっている。


――


「俺とマナミとは仲良くできるんだ、だから大丈夫だよ、それと俺が出来ることがあれば、出来る範囲内だけど協力するよ」

「流石、公然と二股かけている男は言うことが違うよね」

「二股なんてかけてません、俺は一途なの」

「でも小ケ谷さんは「時間の問題」とか言っていたんだけど?」


――


(ストップ! ここだ、もう一度、ゆっくりと)


――


「二股なんてかけてません、俺は一途なの」

「でも小ケ谷さんは「時間の問題」とか言っていたんだけど?」


――


(そうだ! これだ! このセリフだ!)


――『でも小ケ谷さんは「時間の問題」とか言っていたんだけど?』


 ここだ、どうして、どうしてここでマナミが会話に出てくるんだ。ここだって考えてみれば変じゃないか、あの時は「マナミらしいなぁ」というぐらいにしか思わなかったけど、それをミズカが言うってのは変だ。

 というのはマナミの言う時間の問題ってのはつまりはこういうことだ。


『俺とリョウコは付き合っているけど、自分になびくのは時間の問題』


 もちろん食堂での一件があるから俺とマナミとの関係を邪推したと考えることもできるが、それでもまさかマナミがミズカに話したのか、ってあのマナミが、こんなことを。


 仮にマナミがミズカに俺のことを彼氏という場面はどんな状況なんだろう。


 ってそうだ、それを確認すればいいじゃないか、手に携帯を持っているのだから。


 ピピピピピピピ


 と携帯の画面が急に変わっての着信に死ぬほど驚いて危なく携帯を落としそうになってしまった。


 震える手で見た番号は、番号を表示されていたけど、登録されていない番号だ。


「…………」


 怖い、怖いが、出ないといけない気がする。一息ついて、勇気を振り絞って電話に出る。


「も、もしもし!!」

「…………」


 向こうの吐息が聞こえる。くそう、はやく、なんかいえよ。


『あ、えっと、いせはら、でいいの?』

「え?」


 声にどこかに聞き覚えがあったと思ってすぐに思い当たる、クラスメイトの城下のラクロス部の部活仲間だ。

 ほっとした、心の底からほっとしたが……。


(なんで、部活仲間が俺に電話をかけてくるんだ?)


 手に汗を握りながら電話した相手に電話の用を聞くと彼女はこう答えた。


『えっとさ、、、城下何処にいるかって知ってる?』


 少し焦った様子の部活仲間の言葉。


「…………え? 肺炎、だよ?」


 かろうじてそう答えるのが精いっぱいだった。


『うん、それは知っていてさ、でも全然連絡が取れないの、大丈夫なんだろうけど、心配になっちゃって、城下は、その、家のことはあんまり語りたがらないし、だから自宅も知らなくて……』


 わかった、それはわかった。でも、城下と俺の関係ってそこまで大っぴらになってたっけ。公になっているのはマナミだけのはず。

 というのはマナミとの関係がインパクトが強すぎて、リョウコとかトモエとの関係は知られていないのだ。


 だからどうして、この部活仲間は俺のところに電話をかけてきたんだ。


「あのさ、どうして、俺に電話をかけてきたの?」


『どうしてって、ちょっと前に「偶然手計に会った時」に話したら、伊勢原が城下のお見舞いに行ってたから何か知っているんじゃないかってさ、何でってびっくりして聞いたら実は仲がいいって聞いたからだよ、手計のことだからどこまで信用していいのかわからないけど、ほんとなの仲がいいって』


 何かが落ちていく感覚。


 その後、何を話したかは覚えていないが部活仲間との会話を終える。


 マナミの関係だけじゃなくて、トモエとの関係も知っていたことになる、そしてお見舞いなんて行っていないつまり堂々と嘘をついたことになる。


 俺はいつの間にか、携帯電話を握りしめてトモエにコールしていた。


(頼む繋がってくれ!)


 悲壮感溢れた俺のこの祈りは、見事に届くことになる。


 すぐに聞いたことがある着信音が部屋に木霊したからだ。


 この着信音は聞き覚えがある、間違いなくトモエの携帯の着信音。


 その着信音は、立てかけたハンガーの俺の制服の胸ポケットの中から鳴り響いていた。


 今日は体育の授業もないから登校から下校までずっと制服を着ていた。


 帰宅した後、すぐに制服を脱いでハンガーにかけた。


 その後俺は一回も外出していない。


 そして他人の携帯が胸ポケットの中に入っていたら気づかないわけがない。


 つまり、この携帯は……。


「ハジメマシテ」


 首筋にふと気配を感じた瞬間に後ろから抱きつかれた。


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