ギルドが普通じゃない
本日二度目の投稿です。
今回から文字数を落として書きたいとおもいますのでご了承ください。
カルセノスに滞在して9日目の朝、幸助は憩いの森で朝食を済ませ、本日の目的である、ギルドの冒険者登録と、自分に見合った依頼があれば引き受けようと思う。
相変わらず憩いの森には客足が無く、客は俺と数名だけだったが、看板娘のサリアさんの笑顔を見るだけで一日頑張れる気がする。
サリアさんに見送られ、俺は和やかな気持ちで一直線にギルドに向かった。
地図を手に入れてから、図書館に向かう途中で施設や店をチェックして回ったことで、生活に支障のないレベルで街に詳しくなった。この国や隣国の情勢については買い食いついでに商人や住人から話を聞くことである程度理解することができた。
地球のアルバイトで接客をしていなかったら上手く会話できていなかったかもしれない。地球での経験が初めて役に立ったよ。
ギルドは中央にある城を南に行った、居住区の手前、つまり城門前に位置している。居住区の近くにすることで、住人が気軽に依頼を持ち込めるようにとの配慮でもあり、城の騎士達が手に負えない場合の魔物緊急討伐依頼を迅速に行うためでもある。
冒険者はランクがあり、Fランクから始まり、E、D、C、B、A、S、SSと階級が上がっていく。その中でBランク以上の冒険者はよほどの理由がない限り、強制的に緊急討伐に参加しなければならない。その代わりに、色々と便利なことも増える。アイテムが安く買えたり、報酬金が増えたり、受注時に発生する金が免除になる。
冒険者登録には銀貨1枚かかり、ランクによって期限が設けられている。Fランクは1ヶ月以内に依頼を1つでも受けなければ、登録削除されてしまい、再登録が必要になる。再登録には銀貨2枚必要になる。ついでにEランクは2ヶ月、Dランクは3ヶ月、Cは6ヶ月、Bは1年と期限は倍に延びる。
依頼は、依頼者が依頼時に報酬金をギルドに支払い、その支払った金額が丸々報酬金となるが、受注者が依頼を受ける際、手数料としてギルドが設定した金額を先払いすることになっている。受けるだけ受けて、仮に達成できなくても損失が無ければだれもが手当たり次第受注してしまうからだ。もしキャンセルする場合は30分以内にキャンセルすれば手数料が戻ってくるが、それ以降は依頼未遂により、報酬はおろか、手数料も返ってこない。
それと、依頼にもランクはあり、依頼の内容をギルドが査定し、ランクをつける。そのランクがもしCなら、Dランク以下の冒険者は警告するようにしている。受けること自体は可能だが、冒険者は何が起きても自己責任という形なので、ギルドは警告はするが、それを無視して命を失ったってそれは自己責任でしかない。報酬は魅力的だが、無茶はせずに身の丈に合った依頼をすることが賢い選択だ。
冒険者のランクを上げるには、何度も依頼を受け、その業績をギルドが適正であると判断して、はじめてランクが上がる。CランクではBランク昇格にはギルドが指定した依頼を達成する必要があり、それをしない限りはいくら依頼を受けても昇格にはならない。Bランクは特典がいろいろとあるものの、同時に責任と義務も多くなるので、そういったことを面倒がる人は敢えてCランクで止めたりもする。
――ということを図書館で知識を得たので、スムーズに登録できるだろう。暫く歩くと城の前に到着した。図書館に行く際に通りがかるが、何度見てもデカイ。この中でクラスメイト達が勇者として修行してると思うと、俺は気楽にやってんなぁーと思う。特にクラスに思い入れはないが、できれば皆には死んでほしくないとおもう。といっても俺が一番死に安いんだろうけど。
思いに耽るのも程々に、俺は城を南下してすぐに、目的のギルドへと到着した。
ギルドはシンプルに剣と酒が描かれた看板がデカデカとかけられており、くたびれた感じが味を出している木造3階建てのウエスタンな雰囲気で、中に入ればカウボーイが居そうな感じである。ギルドと酒場とのセットというのは、情報をより良くするためで、酒の力で中には意気投合したり、お互いの情報を売買したりするために利用されていることが多く、加えて道具屋や食事処もあるため、大抵のことなら此処だけで賄える。
俺はバイトの面接に向かうぐらいの覚悟でギルドの扉を開けた。
扉を開けて中に入ってすぐ正面にギルド受付が3箇所ほど並び、そのどれもに屈強そうな男達が揃って上半身裸、下半身はボクサーパンツで依頼を受けていた。
続いて左を見ると、酒場になっており、朝にもかかわらず賑わっていた。客をみれば上半身裸、下半身はボクサーパンツの男達がゴクゴクと談笑しながら酒を煽っていた。
そして右を見ると、食堂になっており、これまた上半身裸、下半身ボクサーパンツの男達が朝にもかかわらず巨大な肉を一心不乱に食らっていた。
あまりにパンチの効いた光景に数秒の間硬直してしまった。硬直から解き放たれると、俺はそっと扉を閉めて外に出た。
俺は外に出て、ふうと溜息をついた。どうやら俺の覚悟は生温かったようだ。頭の中で異世界にきた初日に目にした光景がリフレインした。
「これはアカン、俺の想像と全然違うわぁ」
確かにアレは、俺の想像を超えていた。誰がギルドに入ったら筋肉隆々の男達が視界をジャックすると思うだろうか?ここのギルドは大丈夫なのだろうか、不安になってきた。
暫くして落ち着いた俺は、再度ギルドに入ることにした。
扉を開けると、さっきみた光景が嘘の様になくなって――
「ですよねー分かってましたよ」
いなかった。かわらず筋肉の塊が視界をジャックしていました。