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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

No.-

No.15 人、人たるを人ならざる

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第十五弾!

今回のお題は「病院」「隙間」「学園」


12/1  お題が出される

12/5  作業をしてなかったのを思い出してプロットを立てる

12/7  余裕とたかをくくってたら体調不良に見舞われ思うように筆が進まない

12/8  相変わらずに締切ぶっちで投稿


結局、胃痛に唸り続けた日曜日でした

土曜に書いておけばこんなことには……

 覚えているだろうか? 幼い日々を。僕はいくつかの記憶が思い出せない。生みの親と温かな家に居たと思えば、気が付けば僕は思春期で、育ての親の元で自分というモノも無く生きていた。

世に言う物心というのが僕は付くのがとても遅かったかのような、そんな感覚だ。それ以前の記憶は曖昧なのに、どれが自分の名前で、誰が自分の育ての親なのかはすぐにわかった。

だがそれでも、僕は自分の記憶を思い出せなかった。それでもその記憶の『隙間』が僕に問いかけてくる時が有る。僕は、本当にこの国の出身なのだろうか?



僕は十八で、国の医療機関に従事していた。そんな時、僕のいる「ヴィルヘスト大公国」は隣国的な存在である「エルシャルテ魔法連合国」に戦争を仕掛けたのは。戦争の理由は、大公国の政治屋曰く「痩せこけた土地からより豊かな土地へ」と言ってはいた。以来、戦争は二年以上続いていた。

「ヴィルヘスト大公国」は科学技術と工学に優れ、重火器や兵器と言った物に優れており、その圧倒的技術力により、戦争はすぐに終わるものと思われていた。だが「エルシャルテ魔法連合国」は何処からともなく『悪魔』と呼ばれる子供たちを戦争に駆り出して、その『悪魔』たちが扱う『魔術』の前には大公国の科学などまるで遊戯の様なものだったらしい。


戦争で苦戦を強いられる中、大公国から僕に医学者として声がかかった。

最初こそ使命感と誇りに満ちていたが、現場について愕然とした。

そこは国家規模の人体実験場だったからだ。連合国の『悪魔』を解体し、その秘密を解析。そこから大公国の『悪魔』を造ると言うその狂気の沙汰に僕は従事しなければならなくなり、僕は心を病むことになった。

無理もない。連合国の『悪魔』は外見のそれは間違いなく子供のそれなのだ。歳にして十歳以下から成人前まで男女様々だった。すでに死体とはいえ刃物を刺して隅々まで調べるために切り刻むのは……吐き気を催した。部下として与えられた者の多くは正気を失い始め、一部は研究施設の一角にて自殺。それを見て「ああ、うらやましい」と感じてしまった時、僕は心底僕の心に恐怖した。

更に追い打ちをかけるように、軍人の指示で生きた『悪魔』の解剖という任務が与えられる。連れてこられた『悪魔』は二人。十二程の泣きじゃくる少女と十五程の達観した態度の冷静な少年だ。僕は家に残してきた弟が浮かび、この二人を殺さなければならないことに恐怖した。僕はこれに厳重抗議をしたが、もちろん聞き入れられず……。やむなく、色々な理由を付けてこの予定を引き延ばしていた。


 そして、いざこれ以上引き延ばせないとなった時、共和国の部隊が研究施設のある街を制圧。研究はストップさせられた。

 助かったような……むしろ彼らの遺体に非道な行いを行ってきた僕がまともな扱いを受けるとは思えず、されど悪夢から解放されたことで、自分の行動の目的を失ったことで、僕は物事に対して考えることを放棄し始めていた。

 捕虜として街に拘束され、家に連絡も取れない。呆けて過ごす日々の中、共和国の司令官からお呼びがかかり、僕は覚悟より自暴自棄の心でその呼び出しに応じた。


 街の一角に建てられたテントの中に通される。そこには黒の制服に身を包んだ、やはり成人前の少年少女が居た。

 一人は金髪のショートヘアの少年で、歳に似合わぬ厳しい目をしている。もう一人は黒髪ロングヘアの少女で、真面目な雰囲気を醸し出している。

 僕はおもむろに口を開いた。


「君たち『悪魔』の体について詳しい僕は邪魔という事かい?」


 僕の言葉に対して、目の前の少年が言う。


「いや、あなたを共和国に招きたい。あなたに是非やって欲しいことが有る。あなたにしか出来ない罪滅ぼしでもあるはずです。あなたにはその義務があると……我々は考えている」

「義務? 招き入れるだって? 君らの仲間の遺体を切り刻んでいた狂った科学者モドキをかい?」


 目の前に居る少年は、歳に似合わぬ目で僕を見据え、そしてゆっくりと口にした。


「危害を加えるつもりはない。というより、あなたの力が必要だ」

「君らが僕を必要としても、信頼できるのかい?」

「出来ます」


 即答だった。


「なに、な、なんで?」


 声が震えた。怒りなのか、恐怖なのか。

 それを見て、少年の顔色に一瞬の悲しみか同情が映る。すぐに締まった顔に戻り僕の言葉に対する返答をする。


「捕らえられた男女の内、男子はボクらと同じ『黒の使徒』……あなた方が『悪魔』と呼ぶ者たちの上位互換的存在です。いざとなれば、もう一人の女の子を庇いながら街を抜け出せていたでしょう」

「わざと潜入した、と?」

「ええ。あなたを探し出す為に」

「殺されるかもしれないのに?」

「でもあなたは殺さなかった。だから、我々はあなたを迎え入れたい」


 悲観し続けて思考を放棄していた僕の脳みそが徐々に動き始める。


「待って、なんでそこまでして? そうだ、僕にしか出来ない事ってのはそもそもなんだい?」


 少年の脇に控えていた黒のロングヘアの少女が言う。


「私たち『黒の使徒』にしか効かない病気に関してです。私たちは、これを大公国の造りだした生物兵器なのではないと考えています」

「生物兵器? ……思い当たらないな。僕は君らの……いや、そもそも僕が調べた存在の中に『黒の使徒』とやらが居たのかさえ怪しい。そんな存在にのみ効く生物兵器なんて、もし作れても偶然の副産物じゃないかな」


 目の前の少年は、だからこそ、と僕に言った。


「あなたにこの一件を託そうと思うんです」

「……裏切ったら?」

「愚問ですね」


 こうして、僕は大公国から多くの道具を持って共和国へ移動することになった。




 共和国の大病院に移ることになり、僕の目に飛び込んできたのは、その道中からして既に違った。大公国の政治屋たちが「痩せこけた土地からより豊かな土地へ」というのがどういうことか、少しずつ解ってきた。

 馬車の窓から見える、夏でもないのに青々と茂る新緑の木々の並木道。道端に広がる色とりどりの野菜や果物を売る市場。あの透明な容器入れられた色のついた液体はなんだろう? などと、まるで十は若返ったように目をきょろきょろさせながら、僕は初めて見る光景に心を躍らせた。その様子に、馬車の中で仕事の説明などをしてくれている『黒の使徒』が笑いながら話しかけてくる。先のテントで少年の隣に居た黒髪の少女だ。


「そんなに珍しいですか? 後で行けますよ」


 少し気恥ずかしくなって窓から離れる。

 それを僕の隣に乗り込んでいるオールバックの少年が鼻で笑いながら言う。


「それでも、ずいぶんと市場の雰囲気は暗くなってんだぞ。お前ら大公国が戦争なんぞ仕掛けてるからだ、解ってんのか?」

「ああ……そうなのか」

「そうなのか、じゃねぇよ!」

「やめなさい、ヴァイル」


 黒髪の少女にヴァイルと呼ばれた少年は、僕に睨みを利かせ乍ら顔を近づける。僕は素直に思ったことを口にした。


「すまない。大公国ではこういう食べ物の市場が無いんだ。あの国は共和国より年間平均気温が十五度ほど下なんだ。色とりどりの野菜すら珍しい国なんだよ」


 それを言うなり、ヴァイルは僕から何も言わずに離れてそっぽを向いた。その後ぽつりと言った。


「じゃあ後で案内でもしてやろうじゃねぇか」

「うん。ありがとう。楽しみにしているよ」


 即座にヴァイスが詰め寄り、変顔で話しかけてくる。


「お前が可愛そうな発言するからだかんな! 何度も行かねぇから一回で満足しろよな!」

「分かった」

「おまえもうちょい反応しろよ! こっちとら口角がぴくついてんだよ」

「……あ、すまない」

「あ、すまない。じゃねぇぞこら!」


 そんなやり取りを見て、黒髪の少女が声を出して笑い出す。


「んだこら! ナウル、笑ってんじゃねぇぞこら!」

「だって……だって」


 涙を拭いながら笑うナウルと呼ばれた少女に、ヴァイルは詰め寄るが、笑って回避され続ける為ばつが悪そうに耳が赤くなっていく。

 こうみると歳通りの子供にしか見えないのに、彼らは戦線に出て戦うエリートなのだと思うと、なかなか感慨深いものがあると思った。

 ああ、そうだ、とナウルが今更な事を口にする。


「言い忘れましたが、彼、ヴァイルがあなたの護衛兼監視を行います。特に異常事態でなければ、彼と行動を共にしてください」

「分かった」

「おい本当に解ってんのか? 俺は医療とか科学とかまるでわかんねぇんだぞ! それで良いのか? 助手とか必要じゃねぇのか!? ああん!?」


 なんでいちいち喧嘩腰なんだろう。……別にいいか。


「うん。変に手を出してくる助手より優秀だと思う」

「ゆ、優秀って、頭いいって事か? それって俺褒めてんのか?」

「なるほど、毒にも薬にもならないから良いと言う事ですね。ぷっ、ぷふっ」

「うん。これでいいかと思って。……この反応は考えてなかったけど」

「ん? やっぱ馬鹿にしてんのかこれぇ!?」

「あはははは、も、もう、なんでそんな、あははははは」





 共和国の病院は名ばかりの場所だった。無理もない。『魔術』で解決できることがほとんどだろうからだ。つまり、ここは『魔術』で解決できない病気らしきものに対処する場所ということらしい。いや、対処を模索する場所……というところだろう。

 医療道具らしいものは特になく、包帯や消毒液、輸血用の血液などはあるが、外科的な物も調剤所も無い。いったいどうやっていままで生きてきたのだろうか? 無理を言って大公国から持ち込んだ道具たちが役に立つ。もちろん初めて見る器具たちに『悪魔』たち……彼らの言葉では『学徒』と呼ばれているらしい……その『学徒』たちにはかなり恐れられたし、注射の針は度々折られた。

なぜ護衛が必要なのか、なぜわざわざエリートである『黒の使徒』が就いたのか、その理由はすぐにわかった。隙あらば殺そうとする者や、治療への恐怖で暴れる者など、確かに力技で解決が必要になる場面が多く見られた。

彼らは情緒不安定で、精神的に病んでしまっている者や実際に体に不調をきたす者も居た。きっと『魔術』を行うための器官が原因なのだろうと予測できるが……如何せんその方面の知識は手に入れられずに居た。

彼らの治療をするために彼らと接すれば接するほど、命の危機に晒されることも多かった。だが、それも最初の数か月、簡単な腫瘍摘出手術に成功したころから無くなっていった。どうやら、魔術では癌の治療は出来ないようだ。

それとは別に驚いたのは、『学徒』や『黒の使徒』が実は僕よりかなり年上という事だった。どうやら、『学徒』も『黒の使徒』も、『魔術』を扱うのを控えていれば歳は取らず、また外部供給で『魔術』の力の源を供給できれば若返ると言うから驚きだ。テントで出会った少年が妙に大人びていた理由が分かった気がする。……ということはヴァイルやナウルも僕より年上なのだろうか……? イメージがわかないな。

しかし、如何せん『黒の使徒』だけに感染する病気に関しては分からない。共和国の図書館で『魔術』にかんして学び始めるも、ちんぷんかんぷんだった。体内に『魔術』を円滑に行うための器官があり、その器官に特有の隙間が有る事で『黒の使徒』と『学徒』の差になっているようではあるが……。どうやら、この『魔術』の器官に関しては、外科手術の知識が無い共和国では認識が無いようである。人工物なのか、そういう人種なのかも分からなかった。

『黒の使徒』だけがかかる病気も謎だらけだった。症状こそ掴めるが、その原因がさっぱりわからない。

この『魔術長』と呼ばれる立場の人、「『学徒』の開発者」と言われる人物なら、何か知って居そうではあるが、そもそも大公国の人間が会えるとも思えない。ゆっくりと対策を考えるしかなさそうだ。





「最初は体に刃物を突き立てるってのがどうかと思ったけどよぉ」


 市場で買い物をしている時、ヴァイルが唐突に口を開いた。


「でもそのまんま信じて見守って良かったって思うぜ」

「外科手術の知識が無ければ、確かに野蛮な行いだからね」

「腹開いて切り取る、って発想なんか普通は浮かばねぇよ」


 なんだかんだ言って、僕はこの生活に慣れてきた。ヴァイルは、言葉は荒いし時折意思疎通が取りにくいが、護衛として、また道先案内人としては非常に優秀だった。友人としても。


「あら先生。今日はもう上がられるのですか?」


 ナウルだ。どうやら、同じく買い物をしているらしい。いつもの黒い制服じゃなく私服だ。……若干色合いが地味だな。寒い国出身の僕からしても地味な服装なのだが、良いのだろうか? ……良いか、面白いし。


「ああ、ナウルは今日はオフなの?」

「ええまぁ」


 ナウルはただ微笑むように僕を見ていた。


「なんか寝癖でもついてる?」

「いえ、良い顔をされるようになったなと」

「いい顔?」


 背後からヴァイルが肩を抱きながら会話に加わる。


「そうだぜ、おまえ来た当初はこのまま死ぬんじゃないかって顔してたかんな」

「人生を悲観しきった、それこそ……死ぬんじゃないかって顔でしたね」


 そんなにひどい顔してたのか。


「これで、実家の連中も呼んでやれれば良いんだけどよ。もうじき攻め込む作戦が発動するはず……」

「ヴァイル!」


 ナウルに怒鳴られてヴァイルが面食らう。そして自分の発言の意味を知って、珍しくどぎまぎする。


「いや……その……そういうつもりじゃねぇんだ」

「うん……分かってるさ。分かってはいるんだけどね」


 思わずため息をついた。

 すると突然、ヴァイルが僕に向きなおり、頭を下げて唐突な発言をしてきた。


「すまん! 護衛を一時放棄させてくれ! ってダメだよな。解ってるけどよぉ」

「うんいいよ」

「だよなぁ……は? 良いのか!?」


 驚いた様子でナウルがヴァイルに話しかけてくる。


「ちょっと! 先生の護衛は任務なのよ。投げ出せるわけがないでしょ」

「いや、だけどよぉ……俺はこいつの家族を守ってやりてぇんだよ。なんつうか……こいつ見てると、こいつの家族って悪い奴じゃないだろうなって思えてよ」

「それはそれよ。感情で任務を投げ出さないで」

「いやぁ、そこをなんとか……なんねぇ?」


 僕は少し考えてからある提案を考えていた。しかし受け入れられるとは思えない。どうしたものか……。

 と考えているところに、件のテントで出会った金髪ショートへアの少年が僕に呼びかけてくる。

 相変わらず、目の前ではヴァイルがナウルに説教を受けている。


「ああ、ここに居たんですね。探しました」

「僕を?」

「えぇ。あなたを共和国の『魔術長』に会わせたいと思います」

「『魔術長』ってたしか、君ら『学徒』の……。良いの? 僕は大公国の人間だけど」

「それが、どういうわけか『魔術長』の方から会いたい、と……」


 どういうことだろう?

 けれど渡りに船だ。僕はさっき取りやめた提案を、いまだに説教を与え続けるナウルに行ってみる。


「ねぇ、その任務ってお偉いさんならどうにかできる権限があるのかい?」





 共和国の中心部。ナウルとヴァイルに挟まれて、僕はこの国の高官と会うことになった。魔術が行き届いている国の中刃部という割には、車も電車もなく、エスカレーターやエレベーターも無い。僕が身を寄せている病院のある街と大差がないように思える。

 その古めかしい街中に少しだけ豪華な庭付きの豪邸があり、そこに『魔術長』が居ると聞かされた。僕らは観光をするでもなく(というより、警戒されて観光は出来そうになかった)まっすぐに目的地へ向かった。


 かすかに枯れた庭園、濁った噴水。おかしい。ここはもっと緑にあふれて……緑にあふれて?


「どうしました?」


 ナウルが僕の変化に気づいて心配してくれる。


「大丈夫。デジャヴ、かな?」

「見覚えが?」

「う、うん……なんでだろう」


 そんな疑問を抱きながら屋敷に入る。

 四方に伸びる通路の構造で目的地がどこか分からないのにも関わらず、使用人が出てこない。ヴァイルが悪態をつく。


「んだよ、どこ行きゃいいんだ?」

「……二階の手前から二番目の通路、その奥に書斎が有る」


 二人がお互いに顔を見合わせてから僕の顔をまじまじとみる。


「お前、なんでそんなこと分かんだよ」

「分からない……でも、もしかしたら、そう言うことなのかもしれない」


 分からないと顔に出ているヴァイルと、何かに気づいた様子のナウルを引き連れて、二階手前から二番目の通路を進む。その奥の部屋へ……。


 その中に居た老人に、ヴァイルとナウルは敬礼をし、老人は手を上げて答える。

 老人は荘厳な服装に身を包みつつも、唇は紫で紫斑が出ている。この老人は……長くない。

 老人がゆっくりと口を開く。


「外してくれ」


 ナウルとヴァイルは少しためらった後、部屋を出る。

 老人は僕の目を見ながら、これまたゆっくりと言う。


「顔つきは私に似なかったな」

「……やっぱり、僕はここで生まれたのですね」

「そうだ。50年前に連れ攫われたのが、おまえだ」

「証拠は?」

「自分の記憶を疑うのかね?」

「『魔術』でどうにか出来ることなのでは?」


 老人は痰の絡んだ笑い声を上げる。


「そうか、おまえは『魔術』に関しては無知だったな」


 そして憂いを帯びた目で空間を眺めながら言った。


「思えば、おまえが大公国で非道な仕事をしていると知った時から、私は自分の国の民すら道具に、おまえを引き抜く算段を立てていた」

「では、『黒の使徒』しか受けない病気というのはやはり?」

「ああ、私の『魔術』だ。私と同じ病状にする、古い古い『魔術』だ。おまえが殺されずに国境を越えてくる術を探さねばならなかった。なんとしても、おまえに、私の後を継いでもらいたかった」

「断ると申し上げたら?」


 老人は僕の言葉に静かに頷いた。


「それも仕方あるまい。だが、冷静に考えてみるがいい。大公国の両親を救いたいとは思わんか? 私のサジ加減ひとつで、あんな盗人どもはどうとでもなる。それとも、ヴァイルが“流れ弾”に当たるかもしれんな。そうすると助けることもかなうまい」


 僕は近くに会った椅子に許可も無く座り込んだ。


「待ってください。何が何やら……話が急すぎる」

「すまないな。私には時間が無い。わかるだろう?」


 僕は必死に考えた。そして質問した。


「それで、僕にどうしろと? 失った家族の時間を取り戻したいとでも?」

「そうだな。それも良い。だが、まずは大公国を攻略する方法を探そうじゃないか。あそこは滅ぼさねばならん国だ」

「……分かりました。護衛の二人を交えて話をしたいのですが。僕があなたの後を継ぐことを正式に承認してくれる人が欲しい」


 老人は笑いながら言った。


「安心しろ。手はずは済んでいる。おまえが私の後を継いで、私が隠居することは、すでに高官たちには公布済みだ。医学の知識が有るおまえなら、すぐに『魔術』の器官を人体に埋め込むコツも覚えるだろう。なに、人間を開いて好きに出来る感覚はすぐに慣れるだろう」


 そういう老人の背後に回り、僕はその老人にこういった。


「安心した。これで心置きなく害悪を殺せる」


 老人が反応するより早く、僕は生みの親を殺した。





 それから数か月後、僕は前任者の死を悼むように取り繕いながら、新たな『魔術長』として初めての仕事に取り掛かった。まずは『魔術』の器官とやらが人体にノーリスクで、しかも体に埋め込むなどという方法を取らなくていい方法を探し、体の外に携帯して使える『装備型魔術』を開発した。『魔術長』の知識様様といったところだ。

 そして、『魔術』に関する詳しい情報の提示、その知識や技術の伝承、大公国に関する事柄の伝達。それらをするために、僕は『魔導院』を開設した。

 いうなれば、『装備型魔術』を扱える戦士を造るための学園だ。僕が自然と初代『魔道院院長』へと就任したのは言うまでもない事だった。

そして、『魔道院院長』として最初に行ったのが、あらゆる『学徒』と『黒の使徒』の保護と治療だった。彼らの心からの信頼を集め、同時に周辺の街々を吸収するように取り込んだ。共和国が気づいた時には時すでに遅く、僕は『魔導院』を一つの国として独立を宣言。

大公国と共和国の戦争へと介入することにした。

きっと、弟は僕をみてもすぐには気づけないだろう。無理もない。居なくなった兄が、自分より若返り、しかも唐突に出来た国のトップとして自国に攻めてこようなど、誰が予測できているものか。

早く両親を迎えに行こう。早く両親に、あの色とりどりの市場を見せに行きたい。


なんだろうこの消化不良感


怒涛のごとく流れてくだけのお話の様な感じがして

如何せん書き直したいような……書き直すにもどうすればいいのやら……


それもこれもなにもかも胃痛が悪いチクショウ


もはやプロットほぼそのまんまで投稿というこの歯がゆさたるや

悲しいやら嘆かわしいやら怒りたいやら落胆したいやら……


もう少し感動系とかに話を振る予定が

そんなエピソードは全くなく

金髪ショートヘアの少年も当初はもっと出す予定がこの様である

頑張って『魔術長』を下種にしようと努力するも一応親殺しなので

作者としては微妙な仕上がりな気がする


それもこれも全部胃痛が(以下略


結論:書ける時に書きましょう


ここまでお読みいただきありがとうございます

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