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狼になった。  作者: ケモナー@作者
一章『出逢い』
3/22

噛まれた

GS

「う、うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

僕は目の前の光景にビビり、尻餅(しりもち)をついてしまった。

この姿でも尻餅つけるのかと思いきや、尻は人間ほど柔らかくないようで、そのまま重力に(したが)って横に転倒してしまう。


ドサッという音が静かに洞窟の中で響いた。


やだこれ、地味に恥ずかしい・・・

思わず両前足で顔を覆ってしまう。

ビビって尻餅失敗して転ぶとか犬の体不便だよ(泣)


「アンタうるさい、何なのよ・・・」

目の前に現れた狼への恐怖と恥ずかしさに赤面をしていると、どこからか女性の声が聞こえてきた。

しかも日本語を・・・

その声は僕に「ここに人がいるのか!?」という希望を生ませた。

さっきの事なんか全て忘れました。後ろばかり振り返ってもしかたないんです。はい。


幸い、人語はまだ話せるようだし、なんとかなるかもしれない。狼の姿だが、最初はカモフラージュするしかない。ホント不便。


僕は犬が大きく吠えるように口を開けた

「だ、誰かいるんですかっ!?タスケェ~」

できるだけ大きな声で叫んだ。

台詞的にヘタレ度MAXだが即席(そくせき)で用意した台詞なのでどうにもならん。

しばらく「タスケェ〜」が洞窟の中で響く。


しかし、僕の返事を返してくる気配はない。

徐々に焦りを覚えた。もしかしてシカトされた?

ヤバいと思ってたその瞬間。


「・・・ウルサイ。」

罵倒が帰ってきた。


このチャンスを逃すまいと、僕は先程より倍の音量を吐き叫ぶ。

「やっぱりいるじゃん!!お願いします助けて!狼に襲われそうなんです!!」

「黙れってのに!!」

その声が聞こえてきた刹那、狼が僕の前足に食らいついてきた。

小さな血飛沫(ちしぶき)があがる。ホショクされる!!

「いでででででで!!」

抵抗の仕方がわからないので、僕は断末魔(だんまつま)(わめ)く事しかできない。

それでも狼は容赦なく、鋭い犬歯を強靭(きょうじん)な顎で操って、肉を切り裂く。

毛がもげて、皮は破れ、血で染まった肉が(あら)わになる。

激痛に声も上がらなくなった。


ただ、(やせいどうぶつ)になったからか、皮が裂かれ、血が飛び出ても、そこまで痛覚は襲って来なかった。

激痛ってのはあれだよ。肉が見えてきたとき。


とはいえ、自分が噛み砕かれるのは気分の良い事ではない。

そろそろ泡を吹いて気絶しそうだ。

僕は噛みついてきたこの狼に威嚇をしようと思う


「きゃうん」


威嚇というか弱々しい悲鳴を口に出してしまった。

無理、僕のメンタルじゃあの(にら)みに勝てない。

蛇に睨まれた(かえる)の気持ちが良くわかります。


しかし、きゃうんというと狼は素直に僕の前足を解放して数歩後ろに下がってくれた。あり?

狼はお座りの体勢になってこちらを見る。仕付(しつ)けがなっているのですかな?

口に血が付いているのが怖いです。

狼の体勢にならって、僕もお座りにする。あ、なんか楽だわこれ。前足が痛いけど。


ぽけ~として傷を舐めていると、狼は口を開いた。

「アンタどこから来たの?」

狼は睨みながらそう()った。


その声は、先ほどの人間だと思ってた人物の声と丸被りだった。

おっと・・・これは・・・

「お、お、おおおお狼がしゃべ」

「噛むわよ」

「すいません」

狼が喋ったと言おうとしたらすごい殺気を放たれた。

ので、即答して謝る。


それより、狼が喋ったよ・・・喋るの?狼って?

僕は疑問をぶつけたくなった。

「あのすいません、少しお聞きしたいことが」

「あたしが先に聞いたのに、そっちが先に答えてよ。」

普通に聞いたら普通に返された。すいません。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



「じゃ、あんたは記憶喪失ってこと?」

狼が首を(かし)げながら言ってくる。傾げるんだ。狼って。

「ええ、まぁそう思って貰えると」

出来るだけにこやかに返す。下手に怒らせて敵対されたらマジで死ぬ。


どこから来たのかと聞かれて正直、どう言えばわからない

だから手っ取り早く「記憶がない」って設定にした。

この樹海にきた覚えがないので嘘はついてイナイハズ・・・・ハズ。


それに、大体ここがどこかもわからないのに出身なんて言ってもわかって貰えるかわからない。

相手狼だし。


「じゃ、次は僕が、なんでしゃべ」

「ちょっと、縄張りにこれ以上入んないでよ。噛むわよ?」

「ウィッス」

ちょっと近づいただけで怒られた。

縄張り意識って怖いです。

どこの動物でも女ってオッカナイなぁ・・・


「も、もう一回。狼なのに喋れるんですか?」

「あんたも狼じゃん。何抜かしてんの。」

呆気(あっけ)なく返された。ですよねー。

狼になると狼語が話せるのか。なんというクオリティ。

僕を狼にしたヤツに会えたら褒め称えよう・・・・そして殴ろう。


それは置いといて、考えてみると僕は日本語を話してると思ってたが、実際はワンワン吠えてただけらしい。わんだふる。

これじゃ人間に会えたとしても保健所送りにされてしまう。

だとしたら、ここから動かない方が身の為だろうか・・・。そんな悩みは真剣に僕を悩ませた

・・・が


「それじゃ、ここから出てってくれない?」

「・・・へ?」

狼の容赦ないコメントに僕は間抜けな声を出してしまった。

出て行けとか酷くね?


「え、なんで?」

僕が聞き返すと狼は「なんでわかんないのコイツ」って言ってきた。ホワイ?

「当たり前でしょ?ここはあたしの縄張り。わかんないの?」

そう狼が答えると「あー」と気の抜けた返事をすると同時に理解した。

たしかに、動物にとって家みたいなもんだよな・・・。

この狼メスみたいだし、彼女(?)からしたら知らない男が自分の家にずぶ濡れで上がり込んで居座ろうとしてるように見えるワケか。


・・・そう考えると、まだ手加減してもらってる分類だろう・・・野生なら噛み殺されても文句は言えないよな。

なら、雨はまだ降っているが、戦争が起きないうちに退散した方が良いだろう・・・。

また寒い思いをすると思うと気が滅入るが、無用な争いはできるだけ避けたい。


「す、スイマセンね。勝手に上がり込んで」

お座りからすぐに立ち上がる。狼はハァとため息をつく。つけるのか?

「大体、なんでこの洞窟に入る前に気づかないのよ・・・雨降ってるけど洞窟内で匂いくらいしたでしょ」

狼はジト目で見てくる・・・やめて。

狼の姿になってからというもの・・・この狼も「女の子」の姿として見えてくる。

女の子にジト目で見られたらそりゃ。戸惑うでしょ


狼は「匂い」と言ってきたので。鼻を動かして匂いを嗅ぐ

確かに、今ならあの狼の匂いがここに充満している。犬の鼻って便利だな。

人間なら変態行為だがな


「あはは・・ごめんごめん。しかし匂いってことは・・・」

僕は謝りながらあることに気が付く。下ネタだ。

「?」

狼はわかってないらしい。言わない方がいいだろうが・・・()えて言おう。

「そこらじゅうに君のGS(ゴールデンシャワー)が・・・」

「ご、ごーるでん・・・しゃわ?」

「おしっこ。」

「洞窟の奥までついて来なさい。」

一度は回避したと思われた戦争は虐殺という形で(おわり)を告げた

士郎は一方的にやられます

ちなみに狼がヤなヤツという事ではありません

自然界にとっての常識です

噛まれただけで済んだことに感謝をorz

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