クマのオジサマ
(●´ω`●)?
アサちゃんへのお説教が終わり、その後しばらくオジサマとアサちゃんがお久しぶりにお話する事になった。
本当の親ではないとはいえ、オジサ・・・クマさん(オジサマではなく僕はクマさんと呼ぶことにした)にとってはアサちゃんは娘同然だろう。
と、いうわけで僕は義理親子水入らずという事でこっそり僕は洞穴から抜け出した。
僕が居ても邪魔になりそうだし、あんなに楽しそうなアサちゃんは初めてみた。
できればそのままにしておきたい
そう思って、僕は巣の外に出た。
クマさんの住処は少し斜めってる山の斜面に大きな穴として存在している。自分で掘ったらしい、クマパワーすげぇ
驚きなのが周辺には木の実やらが生ってる木や食べられる野草とかあってエサも豊富
飢えの心配のいらない穴場らしい。洞穴だけにね
まぁその代わりに、水辺である川からは少し遠い、でも水分は果実で補えるだろう。
それに木の実や野草だけではなく、なんと野性化した蜜柑の木も生えててびっくりした。
これに驚きを隠せなかった。深い森の中でスーパーとかで買ってた食品が目の前に現れたんだ。なんか嬉しい。
そして僕は今、蜜柑の前に立っている。
蜜柑かぁ・・しばらく食べてないな
最後に食べたのが冬でコタツの中で食った時以来だ。
オオカミになってから甘いもの、果実すら食べたことはない。
僕は思うままに蜜柑に飛びつき、木から切り離した。思ったより簡単に採れてよかった。
おほー、採れた採れた♪
早速食べようとしたが丸飲みには少しばかり大きい
皮を剥こうとしたが手が使えないから皮ごと食べるしかない事が判明した。
肉食の狼が植物食っても大丈夫なのか少し心配だったケド、同じイヌ科のワンコだって果物食べるし大丈夫だよね!
僕は蜜柑を前足で地面に押さえつけながら食べる。
すこし苦い皮を口の中で破くと水分たっぷりの果肉が口の中にあると確認出来る。
それを歯で食いちぎると中の粒々と汁が共に口に広がる。
そしてすこし酸っぱいような味の中にある甘味が幸せを醸し出させてくれる
やばい、おいひいよぉ〜
僕はそのまますぐに蜜柑一つを食べ尽くした、もちろん皮も。
瑞々(みずみず)しいこの果実は僕の腹を十分に満たしてくれた、いやぁ満足満足。
ありがとう!自然の恵み!!
と感謝しながらその場に寝っ転がる、食べた後寝ると豚になるというが今はオオカミなので心配はいらない。
寝たらオオカミになってた。が僕流だな
僕は身体に触れる柔らかい草の感覚を身体で楽しむ。
雑草だが、植物が十分に生えていて実際転がってみると本当に凄く柔らかい、草のジュータンは気持いですなぁ。
こんな事人間の時じゃできなかったよ、周りの目というものがあるからね
こういう事には感謝だな。
僕はそのまま昼寝するつもりで目を目蓋で閉じる
ポカポカとした陽気に包まれ僕は見事に爆睡で昼寝してしまった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
目を覚ますと辺りは薄暗くなっていた。
木々も葉っぱも草も何もかも陰に包まれて黒く僕の視界を塗りつぶしていた。
空を見上げてみるとそこには遙か彼方まで続く樹海の先に沈む太陽が見える
夕焼けってなんか寂しい気分にさせるよね
いや、そんな事より・・・
「・・・何時間寝てたんだ僕・・・」
僕は切実にそう呟いた。
昼寝してたら夕焼け空になっているとは
こういう寝過ぎた時ってなんか一日を損した気分になるよね、特に休日とかそうなると勿体ない。
まぁ、僕にとっては毎日が日曜日みたいな獣生活になっちゃったから別にいいけどさ。
あれ?そう思うと僕の今の生活って中々良いんじゃないの?
・・・あ、いやそれは無いな。
「シローウ」
そう一人で議論していると少し先の坂から僕の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
この声はアサちゃんかな?
僕は呼ばれるがままに坂道を降る
10メートルくらい歩くとアサちゃんが鼻で地面を嗅いでいた。何してんの?
「・・・何してんの?」
僕がそう言うと気づいたアサちゃんがこっち睨んでくる。
なんや?僕なんかしたかな?
するとアサちゃんは凄い形相をしてこっち走ってきた
そして顔と顔がくっつく位の至近距離で怒鳴ってきた
「どこ行ってたのよ!いきなり居なくなるから心配したじゃない!」
「え?え?えぇ!?」
だってお邪魔になりそうだったんだもん!
「どっか行くなら先言って!無言で立ち去るのは禁止!わかった!?」
「はっはぃぃ!!」
怒られてしまった・・・急に居なくなったから心配させたようだ。
僕が首を縦に振りながら約束に同意するとアサちゃんは「ハァァァァ」と深いため息を吐いた。
そこまで心配だったの?オカンかお主は
「さっきとは打って変わって立場が変わってるな・・・」
アサちゃんの後ろからノッシノッシと音を立ててクマさんも合流してくる。
アサちゃんはクマさんを見上げると尻尾を振り始める
「もう暗いだろう。アサもシロウも儂の巣に泊まっていかないか?」
クマさんは僕達を見ながらそう提案してきた。
熊と一緒に寝るとか・・・はっはっは、ご冗談を
「え!?いいんですか!!」
アサちゃんはその意見を聞くとその瞬間に尻尾の振る速度を加速させる。
こりゃアサちゃん相当クマさんに懐いてるな。
僕との初対面思い出してよ、うぅっ寒気が
「ね!シロウいいでしょ!!」
アサちゃんは尻尾を振りながらこっちに振り向く、うわっ!やめなさい!そんなつぶらな瞳でこっちを見るんじゃない!可愛いだろが!!
これが狙ったやらせ瞳じゃなくて素で出てる煌めく瞳なのだからタチが悪い!!
「素」+「ウルウル瞳」=「最強」説が浮上したな
「うっうん。」
思わずそう、返事をしてしまう。
最初からクマさんのご好意に甘えようと思ってたから別にいいけど・・・なんか負けた気分。
一方アサちゃんは純粋に喜んでた。
さっきまでのお怒りは何処へ行ったのやら?
まぁその怒りがどっか行った方が僕にとってはいいけどね。
噛まれなくて済むし
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
夏が近づいたこの時期に、アサが一年ぶりに儂の巣にやってきた。
その時少し驚いた事が二つあった。
一つは後ろ足の太ももに人間の道具を巻いていたことだ。
確かあれは医療用の道具だったはず、登山者が怪我をした腕に巻いているのを見たからだ。
もう一つ、これが最も度肝を抜かれた。
それは若い雄の犬を連れていた事だ。驚いた事に、アサと同じニホンオオカミだという。
俄かには信じがたいが、確かにアサと同じニホンオオカミとしての特徴が見えた。だがすぐに信じることは出来なかった。
最初アサが脅されてるのか騙されているのかと疑っていたくらいだ
その理由はアサに狐のストーカーがいる事もあったからだ。
もし目の前の雄がそのような素振りを見せたら殺そうと思っていた。
しばらく話しているとアサが人間の鉄砲という武器に怪我させられたと聞いて焦った。
足を怪我するということは獣にとって、ほぼ死を意味することだ。
足が無ければ草食動物は肉食動物から逃げられない、逆に肉食動物は草食動物を捕まえられずに餓死してしまう。
しかも怪我を負ったのが一週間も前の出来事、一体どうやって生き延びたのか・・・理由をアサから聞くと、儂は恐らく人生で一番驚いた出来事の話だった。
怪我をして数日後に大雨が降った梅雨の時期に一匹の雄狼が迷い込んできたらしい。
最初は訳の分からない事を言ったり下ネタを連発することから頭のイカレたバカだと思ったとアサは言ってた、笑わせてくれる。
それでも話してる時のアサは、自分以外にもオオカミが生き残ってた事実にすこし安心していた様子だった。あのシロウという雄狼と初対面でもきっとそう思っただろう。印象は最悪だったらしいがな
が、その印象を変える出来事があったと言う。
シロウが立ち去ったその後は死を覚悟して眠っていたアサだったが、シロウが人間の薬を持って帰ってきたと言っていた。
シロウはその道具を使って怪我を正しく治療し、餌も分け与えてくれたと言っていた。
そのお陰でアサはこうして儂に会いに来れたということか、なんというか複雑な気持ちだ。
その事を話していた時のアサはとても楽しそうだった。さっきシロウはアサに対して凄く怒っていたが、「シロウが怒るのはあたしがいけないことした時」と言ってた。
普段は怒るのはアサの立場らしくそこはまぁ納得した。アサは男勝りだからな、育て方を間違えたかもしれない・・・
聞けばアサとシロウは会ったばかりでまだ3日ほどの仲らしく、儂はまだ少し心配だが、アサにとって儂以外のより所が見つかったかもしれないと思うと、寂しい気持ちもあったが、同時に嬉しくもあった。
あの娘の両親も兄姉もきっと喜んでいるだろう。
儂は少しだけ、あ奴に期待してみることにした。
ヤガタ、アキ、お前等の娘は今日も元気だぞ。
Σ(ºДº)!?




