散歩した。
狼ってビーフジャーキー喰うのかな?
鞄から取り出したプラスチックの袋を噛み千切る為に真空パックに僕は噛みつく。
ギチギチ・・・
パックを引きちぎる変な音がそこから鳴る。
だけどあんまり切れそうにない。
さすが真空パック。その耐久性は中々なものだ。
僕は粘り強く噛み続ける
五分くらい経つと・・・
ビチビチッ
プラスチックが千切れたような音が僕の口の中から聞こえてきた。
すると中からビーフジャーキーもポロポロとこぼれ落ちてくる。
僕が食べるビーフジャーキーはいつも予め切り分けられてるのを買ってるのだ。食べやすいし。
僕は食料入手のために所持品のビーフジャーキーを開封して取り出す作業を行っていた。
理由は簡単。怪我が治っていないアサちゃんはまだ狩りが出来ないからだ。
昨日僕は彼女の足を手当し、無事に終わらせたが、ゲームみたいに一日かそこらで治るはずもなく、狩りのやり方を教わるのはまず怪我が完治したらとお互い話で決まった。
その間の食料はどうするか?
狩りが出来ない以上、生きるためにもアサちゃんの回復の為にも食料を集めなくてはならなかった。
そこで僕は背負っていたリュックの存在を思い出す。
「あ、そうか。あれがある。」
僕のリュックの中にはスナック菓子やビーフジャーキー、ある程度保存食品も入っている。
チョコレートや犬の体に悪い食べ物は除外したけど
ビーフジャーキーならアサちゃんも食べれると思った僕は早速取り出そうとした・・・が
全然噛み切れなかった
真空パックってメチャクチャ強度あるんね
残念なことに人間の手では無いからには、食いちぎって開けるしかない
ので、僕はプラスチック性の真空パックを開けようと悪戦苦闘してたのだ。
苦労して開けたビーフジャーキーは傷んだりしていない、食べるには十分だと確認できた
この肉を見ると、お酒のオツマミの余りで父さんからよく貰って食べていたのを思い出させる
少し固い肉とピリ辛の相性が良いのが気に入り、いつしか僕の好物となっていた。狼になった今でも、多分それは変わらない。アサちゃんにも口に合うと思うし。
ブラックペッパーが振りかけてあるが、まぁ問題はないと思う。僕は10切れある内の5切れ口をくわえて、残りをアサちゃんに差し出す。
するとアサちゃんは何やら混乱しているように僕を見てきた。
なんや?そんな見られたら照れてしまうよ?
「どうしたの?食べないの?」
僕がそう聞くとアサちゃんは若干言いにくそうな顔をする
匂いが苦手なのかな?僕は少しへこんでしまいそうになる。
するとアサちゃんは僕にこんなことを聞き返してきた。
「・・・食べていいの?」
「何のために出したと思ってるの?」
変な質問が着たから軽く返すとますます困惑した表情をする
何かな?餌付けしちゃいけないの?
野生動物ってメンドクサいなぁ・・・
「良いんだよ食べても。せっかく足治したのに餓死で死なれちゃ僕も後気味悪いよ」
僕はできるだけ強気で言う。狼でいる内は強気でいた方が話を聞いてくれると思ったからだ。
あのカラス3羽は論外。
僕の声は効果があったのか、それでも遠慮気味に訪ねてくる。
「でも、これあんたがの餌でしょ?」
「ってことはあれか?自分で食う飯は自分でとったもんだけってこと?」
僕が聞くとアサちゃんは頷く。野生の世界は厳しいって事だね。
肉食動物である以上、自分で最低限狩りをすることができなければおそらくこの日本ですら生きていけない。だから本能または子供の時にそう教え込まれたのかもしれない。
死なないように、死なないように。
だったら僕にも言い分はある
「アサちゃん、僕は狩りができない。獲物をどう殺して仕留めるのか、どの部位が食えるか食えないのか、走り方や追い込み方すらわからない。
僕はアサちゃんと助ける代わりに仮の仕方を教わるって約束した。
君に死なれると僕もいずれ飢え死ぬ。君に生きてもらうのが今のところ僕の生きる術なんだ。
だから・・・助かってもらえないかな?」
僕は思ったまま文章を言葉にする。
アサちゃんを助けるのはあくまで僕が生きるため。
アサちゃんに餌を分けるのもまた僕が生き残る為。
こう言えばきっと納得してくれるはず
だってこれは・・・自分のためだから。
「・・・」
アサちゃんは僕の話を聞き終えると、少しづつ顔をビーフジャーキーに近づける。
そして一切れだけ口にすると、噛みながら飲み込んだ
「味は・・・・どうかな?」
もし苦手ならなにか探し出さなければならない。
こんな僕でもくらいは野ねずみは狩れるかもしれないけど、自信はない、弱ってるアサちゃんに食事が間にあるのか獣医でもない僕には不安が想像化できてしまってる。
だけど、そんな不安はアサちゃんの言葉で吹き飛んだ
「少し、辛いけど・・・こんな味初めて。美味しいよ」
アサちゃんは僕に向かって、初めて笑みを浮かべる
僕はホっと安堵のため息をこぼした
それは、ただ食料がアサちゃんの口に合っただけじゃない。
なにか、特別な感情が僕に芽生えた気がする
種族は違うし年齢も違うかも知れない。
でも僕はその時、一匹の狼の顔がとても美しく見えた。
安心と喜びが、不安というマイナスの気持ちを包み込む。
そっか。これが命が生きるってことなんだ。
彼女を助けてよかった。僕は心からそう思える。
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そろそろ太陽が空の中央に訪れたころ、僕は樹海の中を散策していた。
無論、縄張り探しの旅である。
アサちゃんの足が完治するまでの間には見つけておきたいのだ。
これは僕に必要な事その2だった。
アサちゃんから狩りの仕方を教わった後、おそらく僕は追い出されてしまうだろう。
その時巣がなくては前回と全く同じ状態に陥ってしまうそれは避けたい
ただ僕もある程度学んだので、迷子にならないように枝や石を木の根元に置いたりして、道しるべを作りながらこの樹海を進む事にした。
まぁそれがなくても多分洞窟まで帰れるんだけどね・・・
「三時の方向敵なしだぜ〜」
「砲撃準備〜」
「ドガァン」
上からやかましい三重の声が響くのだが、正体は・・・・まぁカラスだ。
何やら奴らがアサちゃんの縄張り内にそびえ立ってる木の上でスタンバってた
何やってんだコイツ等はと思ったので聞くと、帰り道教えるから連れてけ!おもしろそう!とか言ってきた
どうせ断ってもついてくるちょっとストーカー気味の連中なので許可した。
実際アイツ等は空中で居場所が把握できるし賢いので助かってるには助かってるのだが・・・
兎に角ウルサイ。これをどうにかしてほしい
面白い珍しい話を聞かせろとか言ってきたので戦艦ものの話をしたら艦隊ごっこし始める始末だ。
アイツ等ちゃんと道覚えてるか不安だな・・・
だから印をつけながら移動しているのだけど。
でも一番苦労したのはここだ。
洞窟を出る時アサちゃんに「樹海で巣探しの散歩してくる」その事を伝えるとなぜか「あたしも行く」とか言い出してそこを断るのが一苦労だった。
アサちゃんはいちよう歩くことはできるのでヨロヨロの状態で立ち上がって元気アピールしてたけど、「また傷開いたらどうすんのー!」とお母さん口調で一喝するとお座りしてショボーンとしてた。
なんで付いてきたかったのが疑問だったけど、とりあえず一通りなだめた後、僕は洞窟を後にした。
そして現在に至る。
洞窟を数個見つけたけどどれも使えそうになかった。
うーん、なかなか見つからないものだね。あと一個くらい見つけてから洞窟にもどろっかな
うんそれがいい。
そう判断して僕はそのまま歩きを進める。
四足歩行にもだいぶ慣れてきたな。散歩は体に慣れる意味でも続けようかな
すると突然、カラス三羽が地面に降り立ってきた
僕の目の前にいるので三羽が僕の道を塞いでいるように見える。
「なんだよ?」
「おいシロー!洞窟あったぜ!」
「三時の方向三時の方向!!」
「違う違うぜんぽうぜんぽう!」
僕が聞くとカラス達がそう騒ぐ
どうやら
新しい洞窟を見つけたらしい
「マジか!お手柄だぞお前ら!!」
僕は彼らにそうお礼を言い、前に向かって走りだす。
体の調子も良いので勢いよく走ることができた。
多分昨日と比べて倍は早いかもしれない。
「おてがらって何?」
「褒めてんじゃない?」
「まってよシロー」
「こりゃ・・・・ボツかな」
僕は洞窟の中を見てそう言う。
いい物件だが中は悲惨だった。
すこし遅れて三羽とも追いついてきた
そしてそれぞれ僕の判断に苦情を漏らす
「えー?なんでだよー大きさは丁度いいじゃないかぁ」
「少し先には川がある近くにはシカの群れがよく出るんだよ?」
「何が不満なんだよー」
カラスたちはそういうが、それは多分洞窟の中を見ていないからだろう
もう一度言います
いい物件だが中は悲惨だった。
洞窟の中を見渡すと・・・様々な洞窟の白骨化した死体が異臭と共にばらまかれていた。
中には人間っぽいのも見える。
なにここ怖い・・・・
気持ち悪くなってきた
「中がどうなって・・・うっ」
「まがまま言うんじゃ・・・うっ」
「どがぁぁぁ・・・うっ」
カラスたちも中を見ると硬直していた
いくら獣でもこんな事件でもあったようなグロイ洞窟なんて住みたかねぇよ
てかこんな所住んでて誰かに見られたら超危険生物としてマークされそうだよ
いやだよ僕は人間の時は至って普通な高校生だったんだからさ
狼の上にこの死骸の山とか猟奇的殺害以外何者でもないよ?
「とりあえす帰るか?ここにいてもしょうがないし
「うえぇ、気持ち悪ぅ」
「死骸漁ることあるけど・・・」
「この量はキモイな。骨だから食えねぇし」
カラス達はこの光景のせいで飛ぶ気分が失せたのか、僕の背中に止まって羽を休ませる
「・・・おい」
「いいじゃん運んでよ」
「こう、馬みたいにさ!」
「減るもんじゃないし。道案内はするから」
僕は呆れた目線を地面に落とすと目印に従ってアサちゃんの居る洞窟へと帰って行った。
カラスのナビを背中に装着させて。
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「あの狼!アサの所いったな!」
草葉の茂る森の中、一匹の獣がある狼の姿を見ていた。
背中にカラスを三羽乗せて歩いている奇妙な狼だ。なぜ襲わない?
まぁそんなことはどうでもいい。
問題なのはあのアサに雄の狼が現れたことだ。
「絶対あの狼狙ってるな!そんなことさせるか!」
獣はその狼を憎たらしげに睨んで一瞥すると樹海の奥深くへと消えていった。
(゜∀゜ゞ)あの獣一体何者だ!




