02
私が生まれて六か月が経った。
どうやら成長に異常があるのか、それとも地球にいた頃とは違うようになっているのか、レイアードと名付けられたこの体は、視界がハッキリするどころかぼんやり見える程度にしか変わっていない。
これでは転生のお約束のように、本から知識を得ることが不可能だ。赤ん坊生活はただでさえ暇なのに。
あの激痛の走った私――レイアードの出産から、六か月という時間。それだけあれば現状を受け入れるのも実に簡単だった。
レイアードというのはやはり男の名前だろうと、嫌な未来を想像しては夜に家族を思い出して泣き出すこともあった(傍から見たら夜泣き)。
それに一つだけなら、いいこともあった。どう見ても生まれて六か月の赤ん坊には無理な、意思疎通の件だ。勿論赤ん坊が喋るなんて異常なので実践はしていないが、侍女や私を見にきた両親らしき人物の声から、どうやら理解できないと思っていた言語は日本語に近いようだった。
だって明らかに英語じゃないよねっていう発音で話していても、時々日本語の単語が聞こえてくるときがあるし。ただ文脈が読み取れないから、意味があっているのかどうかは分からないけど。
つまり言語は日本語に似ていて、時々単語が聞こえ理解できるものもあるけど、それが実際にあっているかどうかは分からない、ということ。
ガチャとドアの音、――誰か私のいる部屋に入ってきた。
いや、私(二歳児)のいる部屋がどう言った部屋かも知らないけど。
「――――、――」
「――、――――――」
ああ、この声。両親だと思われる声だ。
会話ができないのがイライラする、前世が早死にしちゃったから親不孝だし、新しい両親とは早く成長して親孝行がしたい。
「――――、――」
「――――」
あ、侍女の声が混じった。
「――――、――豪語」
「――殺害、――――」
単語も出てきた、って、殺害って何よ。
そんなこと赤ん坊の傍で話すものかな? 豪語と殺害、話してるのは事件? 私の両親は警察のような仕事をしているのかな、いやニュースキャスター的なやつかもしれない。
「――――、――」
ああ…………。
「――――――――」
…………眠たい……。