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CREST~7つの紋章編~  作者: 館山理生
第7章 激動事件
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第11話 親友

8月15日の更新以降、投稿予約ができておらず、大変ご迷惑おかけいたしました。

次回の更新は9月25日になります。

「待ってよ先輩! 炎の中は危険だよ。せめてどこに行くか教えて。そうしたら道を開けるから」


 特別教室棟一階南階段前で、炎に空洞を作り、いったん雨宮を引き止める榊原と東雲。二人とも息を切らしながら雨宮を注意した。雨宮は、落ち着いてはいられない状況だったが、榊原の言う通りだと思い、苛立ちながらも説明する。


「人に気づかれにくくて、見落としがちなところ――三階の倉庫前よ」

「わかった」


 場所を把握した榊原は、そこまでの道に炎のアーチを作り出した。三人はそれをくぐりながら三階の倉庫前に走って向かう。


 ――雨宮の嫌な予感は、当たった。

 三階の倉庫前で、制服を着た女の子が倒れていた。それを見た三人は絶句する。


「さゆ……り?」


 恐る恐る、彼女に近づいていく。


「紅愛ちゃん……?」


 美樹は絞り出すような声で雨宮の名を呼ぶ。


「! 生きててよかった!」


 美樹の無事を確認した雨宮は、先ほどまでの絶望的な表情に光が差した。しかし、美樹の全身は大火傷を負っており、すぐにでも病院に運ばなければ、その内に息を引き取ってしまうと思われる。倒れていたともなると、大量に灰を吸っている可能性が高い。


「ねぇ、なんでこんなところにいるの? 来ちゃダメだって言ったじゃない……」


 涙ぐむ雨宮に、美樹は優しく語りかける。


「ここに来れば、紅愛ちゃんに会える気がしたの」

「え?」


 それは、私が学校を休んでいたから? それとも、私が全焼事件の謎を追ってここに駆けつけると思ったから?

 雨宮は頭の中で、いろいろな可能性を模索した。だが、どれもこれも、美樹が危険を冒してまでここに来る理由に結びつかなかった。

 美樹はゆっくりと口を開く。


「紅愛ちゃんが、全焼事件の犯人なんだよね」

「!」


 予想の斜め上をいく回答に、三人は言葉を失った。


「知ってたの?」


 雨宮は否定もせずに、美樹がそう思うに至った経緯を聞き出そうとする。


「二月ぐらいに、紅愛ちゃんの様子がおかしくなって……最初はご両親が急にいなくなったせいだと思ってたけど、たまに一人で笑ってることがあってね、何か別の理由があるんじゃないかって思ったの。それで、全焼事件の話を持ちかけて、一緒に捜査している内に、確信に変わったよ……」


 まさか、あの事件の捜査ごっこが、さゆりの作戦だったとは。

 雨宮は、やっぱり親友に嘘はつくものじゃない、と頭の中で結論を出した。結果、あの捜査で朽木と関わり、余計な情報を与えてしまった。しかし美樹は、雨宮を陥れようとしていたわけじゃない。 それがわかっていただけに、雨宮はやるせない気持ちでいっぱいだった。


「だめだよ、紅愛ちゃん……けほっ、けほっ」

「あぁっ……無理しちゃダメよ」


 咳き込む美樹を介抱し、「すぐ助けるから」とおんぶした。


「ちょっと待って。どうするつもり!?」


 その様子を見て、榊原が動揺する。


「どうするって、助けるに決まってるじゃない」

「表に出るのか?」


 東雲は、雨宮がどういう人間か、一番理解しているつもりでいた。当然この状況下なら、自分の正体がバレようとも、親友の命を助けるだろうと考えた。


「えぇ。こんなすぐ近くに救急車があるんだもの。利用しないわけないわ」

「でも、そんなことしたら……」

「大丈夫よ、私を信じなさい。二人はこのまま作戦を続けて」

「でもっ……!」

「わかった、行こう」


 東雲は、不安を隠しきれない榊原の手を引いて背中を向けた。


「……」


 榊原は納得のいかない表情をしながら、雨宮のトランシーバーを受け取ると、炎のアーチをくぐって外に出た。



  ◆◆◆



「見てください! 生存者です!」


 事件リポーター、葉山瑞紀がマイクに大きな声を通す。

 葉山は浮気疑惑を報道され続けた結果、夫とは離婚するに至ったが、有名になり仕事の量は格段に増えた。今では事件リポーター以外にも、バラエティ番組への出演も決定している。

 カメラは生存者である二人の女子生徒の姿を捉え、一気にズームした。


「彼女たちは、この三日月高校の制服を着ています! 一人は全身に火傷を負っている模様、もう一人はその子を背中に抱えながらこちらに向かってきます!」


 雨宮は、カメラなどは一切気にせずに、救急車へと直進した。


「助けてください! さゆりを助けてください!」


 必死に懇願する姿は、普通の女子高生としての雨宮だった。

 カメラはなおも、二人の女子高生を映し続ける。


 一方で朽木は、報道陣に二人を映さないよう命令した。救急隊員は、雨宮にも救急車に乗り込むよう誘導するが、すぐに朽木が駆けつけて、それはやめてくれと頼む。こんなことをする理由は一つだ。


「雨宮紅愛、署まで同行してもらう」


 朽木は即座に、雨宮の手首に手錠をかけた。それに対し雨宮は、全く抵抗をしない。それどころか、安堵の笑みを浮かべていた。

 美樹を乗せた救急車と、雨宮を乗せたパトカーが発進する。


「ふむ……どうやら犯人は雨宮紅愛だったようだな」

「そう、みたいですね」


 東雲総一朗と雪村は、三日月高校の外からグラウンドの様子を眺めていた。


「読みが外れた、かな」

「東雲さんはやっぱり、俺を疑ってたんですね」

「まあな」


 ――その数分後に、炎は突然消滅した。



第7章 激動事件 完


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