第4話 報道
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「突然、大通りで通り魔を発見! ルーレットを回して、一・二が出たら現行犯逮捕に成功し謝礼金十万円貰う、三・四・五が出たらライフを一消費して謝礼金二十万円、それ以外は何もなし」
「ふん……この私が通り魔を見て見ぬフリをするはずないじゃない!」
「ルーレットの出目は六! 惜しい! 雨宮さんは通り魔の被害者を見殺しにしてその場を逃走した」
「二分の一の確率で逃走とか! どんだけ勇気ないのよ!」
「まぁまぁ、これはゲームですから、落ち着いてください」
人生ゲーム開始三十分経過。私はこのゲームにいちゃもんを付け始めた。
「無駄に悪事を働く知恵はあるのに、自己保身は徹底的ね。そこは、ライフを消費してでもいい人のフリをするのが真のサイコパスじゃないのかしら」
「その発言は、雨宮さんの普段の人格を疑います……」
「デス・ゲームの主催者には言われたくないわね」
「はぅっ!」
「お、給料日だ。俺の給料はランクアップした銀行員で八万円、プラス副業の臓器売買でルーレットの数×五千円」
速水が自慢気にルーレットを回し始める。
このゲームの最低額は一千円で、最高紙幣は十万円であるため、一つの職業で給料が十万を超えないように設定されている。
それと、このゲーム、明らかに出費や事件の方が多くて、いい職業に就かない限りはほとんど収入がない。超ビターでブラックな人生ゲーム、という肩書きがお似合いだ。
「出目は四、収入は十万か」
「次は私のターン。あ、私も給料日マス超えました! 通常職のミュージシャンでルーレットの数×七千円で……四万九千円です!」
水無瀬の財布ゾーンに、五万円の紙幣が置かれる。
「ん? もらっていいんですか?」
「そんなわけないだろ。千円渡すんだ」
「なるほど!」
なるほどじゃないわよ水無瀬。それでいいのか速水銀行員。人生ゲームのバンカーがお釣り求めてどうすんのよ。確かに、四万九千円という額は中途半端で、二万の紙幣を二枚、五千の紙幣を一枚、千の紙幣を四枚と、面倒なのはわかるけど。
「止まったマスは……、えーと、夫(妻)の浮気が発覚! 孤島ゾーンに移って指示に従う。ライフを消費して戻ってきた場合、夫(妻)を白ピンに変える」
おいおい。結婚マスに止まったの、ついさっきの出来事のはずよ。水無瀬の旦那!
マスの指示通り、水無瀬の自動車を孤島ゾーンのスタート地点に置いた。
「次のターンから一マスずつ進み、各々の指示に従う、了解です」
孤島ゾーンとは。
気になって見てみると、五マス目には“留置所”の文字が。そこには、ライフを一消費して元に戻る、と書かれている。
水無瀬が次に進む一マス目には、ルーレットを回して一・二・三・四・五が出れば元に戻る、二マス目には、ルーレットを回して一・二・三が出れば元に戻る、三マス目は一・二、四マス目には一、と、段々と無傷で帰還できる確率が減っている。
これはもしかして、浮気が発覚し、相手を恨み、殺害する順序建てをして、先に進めば進むほど取り返しがつかなくなる、という意味合いだろうか。先ほど水無瀬が止まったマスに書かれていた“ライフを消費して戻ってきた場合、夫(妻)を白ピンに変える”というのも、明らかに殺人を犯している……。
なんか、無駄にリアルだ。
「次、雨宮さんの番」
そうだったわね。速水に言われてルーレットを回し、出た数だけ自動車を進ませた。
「給料日か。確か雨宮さんは……」
「通常フリーターで、ルーレットの数×千円、プラス“副業”の娼婦で三万円ですけど?」
「そうだったそうだった。自分の体しか売れない人だったな」
「殴りたい……」
私は、ゲーム開始直後のルーレットで十を出し、見事に就職ゾーンを通り過ぎてフリーターとなったのだ。しかし、ルーレットで十を出すという変なミッションをクリアして、見事、娼婦という裏職業を手に入れた。……全く嬉しくない。それで収入が安定し、約束手形を受け取ることもないのだから、少し安心しているが。
――なかなか結末の見えない人生ゲームは一時間以上続いた。
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三月八日(月) 午前七時 朽木宅
昨日は、随分と遅くまで寝ていた気がする。葉山さんに会い、水を飲んで寝て、それから……。
気がついたら、夕方だった。そこには既に葉山さんの姿はなく、キッチンのシンクには俺が水を飲んだあとのコップが置かれていた。さすがに遅くまで付き添うことも無理だろう。なにせ彼女は有名人なのだから。
そういえば、タクシー代返してないな……いつ返そうか。
などと考えながらぼんやり体を起こしてカーテンを開け、リビングに行ってテレビをつけた。相変わらず六度目の全焼事件で騒がれているかと思いきや、ニュースでは意外な事実が取り上げられていた。
“葉山瑞紀、不倫か”というタイトルが画面右上に掲げられている。
『今日未明、JAT宛に匿名で一通のメールが寄せられました。そのメールの本文には何も書かれておらず、添付ファイルにはこのような写真が』
!?
俺は、テレビに映し出された写真を見てショックを受けた。
『ここに映っている二人の男女のうち、女性の方は当局に勤める事件レポーター、葉山瑞紀だと断定できます。男の方は葉山の夫ではない別の男性で、愛人ではないかと現在調査中です』
写真は、葉山さんと男が同じベッドで横になっているところを盗撮したものだった。葉山さんが既婚者だったことにも驚きだが、それ以前にこの写真の真偽が気になるところだ。
報道では、この写真が合成でないことが明らかにされており、また撮影した日時がそのままファイル名になっていたことから、写真の信憑性が高いと述べている。
撮影日時は今日の午前四時三十分頃。メールが送信された日時と酷似していた。




