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CREST~7つの紋章編~  作者: 館山理生
第6章 誘導事件
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第5話 紋章集結


◆◆◆


「これを見てください」


 時刻は夕刻、再びヘルミス本社周辺の公園で待ち合わせた朽木は雪村に一枚のプリントを手渡された。


「これは?」

「僕がネットで見つけた都市伝説です。読んでみてください」

「ああ……」


 雪村に言われた通りにそこに書かれた文字を読み始めた。


「都市伝説No.27、魔力集結。この世には古来に伝わる魔族の子孫が存在し、彼らは再びこの世に魔術を蘇らせようと、知能を持った人間が生まれてくる際に魔力を宿す。

 その殆どが幼くして魔力を打ち消してしまうが、中には特例もあり生まれながらにして魔族としての目的を知り魔力を蓄えている者がいる。しかしこの現代においてそれを公言することも出来ない彼らは『魔力集結式』により同じ境遇である魔力を持たされた人間を呼び出すことが出来る。

 その際には7つの拠点を魔力で破壊し魔方陣を描く必要があり、更にはその魔方陣の大きさ・発動時間にも規定があるという――――」


 プリントアウトされたページはインターネット上の掲示板のようで、書き込んだ時間や作成者のIPアドレスなども詳細に書かれていた。


(つまり、この都市伝説が本物なら、雨宮紅愛は魔族の子孫の魔力を宿した人間の可能性があるということになるが――)


 僅かな可能性にも賭けてみたい朽木はすっかりその都市伝説に魅了されかけていた。


「この記事が書かれたのは今から八年前みたいですが……もしこれが本当なら、この『魔力集結式』という条件が今回の連続全焼事件にぴったりと当てはまる……。しかも、単独犯……ってことになりますね」


 雪村の証言と組み合わせると、あの金髪の少年や雪村が見たという路地裏の男女集団はただの知り合いか何かか、魔力で脅された人間かもしれない。雨宮本人を訪ねるより、まずはその彼らに会って話を聞いてみるのがいいかもしれない。

 朽木は頭の中でこれからの構想を思い描いた。


「心当たりでもあるんですか?」


 朽木の焦燥感が伝わってしまったのか、雪村に勘付かれる。


「あるといえば、ある……だが、実際に魔法を使うところを見たわけじゃない……と思う」


 先日の愛染ホール全焼事件の雨宮の様子を思い出すとぎこちない回答となってしまった。


「誰ですか!? どんな外見をしてましたか!?」


 最早警察と探偵が逆の立場になっていることにも気づかず、朽木は雪村の質問に答えていった。


「見た目は女子高生……都立三日月高等学校の制服を着ていた。……いや、知ってるんだ。彼女の名前は雨宮紅愛。雪村君と同じく、事件の捜査に関わった人間だ」

「…………」


「彼女は金髪の少年と知り合いだと言っていた。仲は悪そうだった。その他には、男子二名と女子一名と一緒に全焼事件の謎を追っているらしい」

「…………」


「全焼事件で両親を亡くしているにも関わらず、彼女は事件の謎を“楽しそうに”追っていた」

「…………」


「そして先日の愛染ホール全焼事件の際には事件当時に顔を出していて、落雷が起きたときに……笑っていた」

「…………」


「私が単独で彼女の身辺調査を行ったところ、通っている三日月高校では優等生らしい。しかし中学では全く人と関わろうとしない一匹狼な性格をしていて――」


「やめてください」


 突然雪村は朽木の話を一方的に中断して立ち上がると、青ざめた顔で言い放った。



「僕の“幼馴染”を犯人扱いするの、やめてください」


「え……」


 幼馴染。雪村は確かにそう言った。


「紅愛は優しい子なんです、人の痛みや苦しみを誰よりも理解していて、人をイジメることもしないしイジメられてもヘラヘラ笑って立ち向かうような子だった。人を殺すなんてもってのほかです。紅愛が犯人だなんて――考えられない」


 雪村はそれだけを言い残して朽木の手からプリントを奪い取り、早歩きで公園を後にした。一人取り残された朽木は初めて雪村の感情的な一面を見てしまい、捜査を通して心を近づけた人間だと思っていた雪村との溝を感じた。


 朽木は全焼事件以前に関わった事件やそれと並行する事件からある教訓を得ていた。優等生ほど、いつ何時何をしでかすかわからない、と。あれほど頭のいい雪村ならそれも理解しているはずなのに、よほど雨宮に好意を抱いていたのだろう。


 雨宮の小学生以前のことも調査してみる必要があるかもしれない。

朽木は腕時計を見て時間を確認するとともに立ち上がり、雪村が去っていった出入り口とは違う出入り口から公園を出て行った。



◆◆◆



二月二十八日(日) 午後三時半 雨宮宅


 次の作戦会議――のはずが、いきなりの修羅場スタートだった。


「どうして貴様が水無瀬を連れてきたのかと聞いているんだ」

「あァン? てめぇにゃ関係ねーだろ」


 速水と片桐の、水無瀬(?)を巡る争いと、


「僕を警察に売り飛ばそうとするなんてどういうつもりかなぁ?」

「別に。この前の脅迫状の件の仕返しのつもりだけど?」


 月詠と雨宮のお互いの裏切りによる冷戦。取り残された俺と榊原と、水無瀬(?)と思しき中学生ぐらいの女の子は呆然としていた。


「とりあえず先輩たちはほっといて、ボクらで自己紹介済ませようか……」

「それもそうだな」


 榊原の提案に乗っかり、方針を決定した。


「はじめまして、ボクは榊原慎也。この家の持ち主であるあそこの黒髪の雨宮先輩と同じ高校に通ってます」

「俺は東雲蓮。雨宮の中学の同級生だ」

「み、水無瀬鈴です……よろしくお願いします?」


 なぜ疑問形なのかよくわからないが、恐らく恥ずかしがっているんだろう。そういうことにしておこう。その割には胸元の開いた服装をしているんだけど、恐らくインナーを忘れているんだろう。そういうことにしておこう。


「あの……ところでここは何の集団なんですか?」

「ん? 聞いてないの?」


 水無瀬の質問に質問で返す榊原。片桐が連れてきたっていうんだから仕方ない。

 うまい説明の仕方を思いつかなかったとか、右鎖骨下の紋章をいつ確認したかとかを問われるのが嫌だったとか、そんな理由なんだろう。しかし本当に紋章の力を持っているかどうかを確認しなければこの集団の説明を出来ない。


「えーと、鈴ちゃんは何か不思議な力とか持ってない?」

「不思議な力ですか……」


 榊原のカーブ球を見事にキャッチしたのか水無瀬は「うーん」としばし考えた後に「わかりました」と一人で納得してみせた。何を納得したっていうの!?


 そう考えていた矢先、



《こういう力を持ってます》



 と、水無瀬の声が直接脳に響いてきた。


《テレパシー、とでも言うんでしょうか。自分の思考を送信したり、他人の思考を受信したりできます》


 す、すげぇ。


《ありがとうございます》


 …………。


「な、なるほどね。鈴ちゃんは自分の体に紋章とかついてない?」

「黄色い紋章がついてます。皆さんにもあるんですか?」

「うん。僕には赤い紋章が、東雲先輩には青、雨宮先輩が白で、片桐先輩が黒に月詠先輩が紫だよ――あと速水先輩が――」

「そうですか。皆それぞれ力が違うってことですね」


 榊原が速水の説明をしようとしたところで水無瀬が言葉を被せてきた。あの修羅場を見たところどうやら水無瀬は速水と知り合いらしい雰囲気だ。


 俺たち三人がこの集団の説明も兼ねて自己紹介しているところに、


「――ふん。あの脳無しに聞いても埒があかないということがよく理解できた。水無瀬鈴、お前に直接訊ねる」


 速水が突然目の前に現れ、水無瀬は怯えたように肩を震わせた。



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