第6話 連続全焼事件探偵団?
二月二十四日(水) 午後四時 如月駅周辺
「では~これより! 可愛い子探しをしまショウ!!」
「しねぇよ」
この時間、本来なら部活をやっているはずなのだが……今日はたまたま顧問が寝込んでしまっているため、こうして英治と暇を潰すことになった。如月駅というと、如月美術館の近く。捜査中の警察もいるだろう。この場所に来ようと言い出したのは英治。
「で、なんで如月?」
「ふっふっふ……知っているかね蓮クーン。実はここ、可愛い女の子がたくさんいる場所なのです!!」
「あ、そう……」
興味ねー、と言葉を続けるまでもなく俺の考えを読み取った英治は、
「お前が興味なくたって、いーんだよ! お前と一緒にいるだけで、女子は向こうからやってくるから!」
とかとんでもないことを抜かしやがった。ようは俺をダシにして女子を寄り付かせようという下心丸出しの計画。
「ていうか……俺ら制服だし。寄って来たところで派手な女と釣り合うわけが」
「そういうときは、同じ制服を着た女子を狙えばいいのさっ☆」
…………。あ、はい。
「お、早速制服女子発見! いくぞ蓮!」
「えっ、おい! 英治!?」
俺が引き止める間もなく英治は即座にその制服女子とやらの方面に走り出した。……走らなくてもいいだろうに。仕方なく英治の向かう場所――如月駅の有名な犬の銅像のある場所へと向かった。
「いきなり走り出すんじゃねぇ……ん?」
そこには、よく見知った顔があった。
「あら」
「え」
「お?」
「……?」
本来会ってはいけない四人が会ってしまった気がする。
「思い出したぁ!! 最初の全焼事件の時に蓮を助けてくれた人だ!」
英治のテンションが上がる。
「覚えていてくれたの。ありがとう」
そこにいる多分雨宮であって雨宮でないやたらと八方美人風味な雨宮が今までに見たことがない他人行儀の笑顔で応答する。こいつ、こんな顔もするのか。
「し、知り合い?」
雨宮の後ろに隠れるように雨宮の服の裾を掴んでいる、俺の知らない女の子が小声で話す。多分、この八方美人風味雨宮の友達かなんかだろう。
「俺、高坂英治って言います! 海島高校二年生っす!」
英治がノリノリで目の前の二人にアプローチを始めた。正直少しだけ気分が悪い。少しだけ、少しだけな? 俺は誰に弁解しているんだろうか。
「私は雨宮紅愛。三日月高校の二年生よ。で、こっちは……」
「み、美樹さゆりです」
二人が自己紹介を終えると、英治は俺の襟を掴んで無理矢理二人の前に立たせ、
「こいつは東雲蓮! ちょっと女子苦手みたいだけどまぁ仲良くしたってくれ!」
断りもなく勝手に俺の紹介をした。
「ふぅん……私も苦手なのよね……男子」
不意に、雨宮がちょっと気になる発言をした。いつも自分の家に男子数人呼んで作戦会議してる人はどこのどいつだって?
「え!? なんでなんで!?」
デリカシーの欠片もない英治は即座に聞き返した。それに対し雨宮は、変わらぬ笑顔で言葉を放つ。
「だって――言動の節々に下心が丸見えなんですもの」
「「……」」
英治はその言葉を聞いて押し黙ったが、思わず俺まで押し黙ってしまった。すいませんでした、本当にすいませんでした。という言葉すら言わせてもらえないこの状況。果たしてどう打破したものか。
「そ、そっかぁ! 確かにそういう奴っているよなー!」
「高坂くんみたいなね」
「……」
二発目着弾。
「そんなことーないよ! 俺は純粋に雨宮さんたちと仲良くし」
「あわよくば心と体までかっさろうとしているのよね」
「……」
三発目着弾。ていうか雨宮、お前会話する気ないだろ。
「蓮んん……」
涙目で俺に訴えかける英治。ちょっとだけ可哀想に思えてきた。仕方ないので救いの手を差し出すことに。
「あんま、いじめてやんなや」
「あら、ごめんなさい」
雨宮はまたも変わらぬ笑顔で接してきた。うーん、本性を知っているだけに、こっちの方が少し怖いかも。
「あ、あの……」
「ん?」
先ほどまで雨宮の後ろにいた美樹さんが恐る恐る顔をこちらに向けた。
「東雲くんって……紅愛ちゃんと同じ中学だったっていう、東雲くんですか……?」
「……! ちょっと、さゆりっ」
美樹さんの発言に、雨宮が動揺を見せる。
「そうだけど?」
嘘をついたところでどうにもならないので、質問にイエスと答えた。
「そりゃ初耳だぜ……」
英治が落胆する。というか、それを知ってるってことは、雨宮本人から聞いたのか? ――いつ。
「……私たち、全焼事件の謎を追ってるの。それで、最初の事件時に起きたことを話しているときに、東雲の話題が上がったのよ」
「そういうことか……」
って、事件の謎を追ってるだって? おいおい、加害者が何言ってるんだよ。それともこれも、作戦の内なのか。
「東雲くんの話を聞いたのはもっと前のような……」
「余計なことは言わないでいいのよ」
美樹さんの呟きに、即座に雨宮が反応する。もっと前って言うなら、一体どんな話題に出てきたというのか。気になって雨宮の方を見ると、少し顔が赤らんでいた。……可愛い。
じゃなくて。
この話題を掘り下げることは危険だ。極端な話、俺が雨宮に好意を寄せていることが明かされると色々と面倒になる。英治とか英治とか英治とか。俺は万が一のことを考え、話を逸らすことにした。
「全焼事件か。俺も協力していいかな」
「もちろん、俺も!」
すかさず英治が話に乗る。
「どうする?」
雨宮は微笑しながら美樹さんに意見を求めた。
「いいんじゃないかな?」
美樹さんはにっこりと笑って「お願いします」と頭を下げた。
「おっし! そうと決まれば早速始めるか!」
英治はやる気と共に拳を突き上げてみせた。なんだろう、この既視感は。つい最近、英治と似たヤツに会っていたような。
「連続全焼事件探偵団、結成!」
恥ずかしいからやめてくれないか。―――雨宮はくすくす笑っていた。




