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CREST~7つの紋章編~  作者: 館山理生
第4章 爆発事件
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第3話 潜入作戦



「お? 逆チョコに蓮が反応するなんて。まさか好きなコがいるとか!?」

「……」


 流石は入学当初からずっと絡んでいるだけあって、相手のことを理解できるようになったのは俺だけじゃなかったらしい。というか、英治は他のことに関しては全くと言っていいほど相手の気持ちを汲み取らないのに、恋愛絡みの話だけやけに鋭いんだが。普段はあえて空気を読んでないだけだったりして。まさか、な。


「否定しないんだ~」

「……眠い」

「おまっ! 誤魔化すんじゃねぇよ!」


 だからなんでそんなに鋭いんだ。


「誤魔化してねーよ。今思ったことを口に出しただけだ」


 嘘は吐いてない。実際に眠いことは欠伸が証明してる。だが、否定しなかったことは拭えない。俺はどうしてこうも嘘をつけない人間になったかな。昔は簡単に嘘でも人を好き好き言えたのに。


「あっそ」


 英治は信じきれないといった素振りで形だけ頷いた。


「んで、英治はその逆チョコでどうすんの」

「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれた!」

「……」


 え、そういう展開? もしかしてこれって今から長々と英治の恋バナを聞かされる感じですか?


「……頑張れ」


 英治には失礼だが、最悪の事態――睡眠をとれない――を逃れるために早々に話を終わらせようとした。


「えっ! おい! まだ話始めてねぇんだけど!? 寝るなよ蓮~! せめて一緒に飯食うとかしろよ!」

「ZZZ……」

「寝たふりやめろー!!」



 俺は如月美術館襲撃の時のことを思い出していた。死ぬかもしれないと思ったとき、雨宮のことを考えていた俺。己の欲が露になった瞬間。再び、復讐の熱が脅かされた。


 あいつは俺を裏切った。それに対して俺は怒っている、憎んでいる。でも実際、俺はあいつのことを忘れられないでいる、未だに求め続けている。

ここから理に叶う復讐方法は、『あれ』しかない。



◆◆◆



二月十三日(土) 午後6時 雨宮家



「株式会社ヘルミス……コンピュータ、プリンター、メモリーカードなどのデジタル製品や、レントゲンやCTスキャナなどの医療機器、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品を日本国内に留まらず全世界に発進している大手電機メーカー。その本社が、次のターゲットよ」


 ここは雨宮家のリビング。そこに今現在仲間となっている東雲、榊原、月詠、片桐は座っていた。雨宮はパソコンを操作して、テレビ画面に出力されたプレゼンテーション用のスライドを見ながら説明する。


「今朝、月詠に潜入してもらってようやくマップが完成したわ。それがこれ」


 エンターキーをタン、タンと押すと、テレビ画面にヘルミス本社のマップが現れた。そこには細かく防犯カメラや消火栓の設置場所などが示されている。


「1~17階まで、全部調べるの大変だったんだよ~。いくら姿消しの能力があるからって、時間の制約もあるんだからね」


 効果が切れそうになる度にトイレの個室に入っては……と月詠はブツブツと語り始める。そこで片桐は疑問を口にした。


「全部調べる必要あんのかァ? 一階さえ燃やせば誰も逃げらんねーだろぉがよ」


 それに対し榊原が抗議する。


「ビルには緊急用の脱出経路があるんだよ。窓についてる赤い三角マークって見たことあるかな? あそこは消防隊が突入する緊急突入口で、中から脱出シュートを垂らして脱出するんだよ。万が一ボクたちの誰かを目撃した人が脱出したら大変なことになるでしょ?」


 片桐と東雲は「へぇ……」と納得した表情を浮かべた。


「お前すげぇな! この中で一番年少なのによ!」

「歳は関係ないと思うんだけど……」


 片桐が満足げな顔で榊原の肩に腕を回す。しかし榊原は少し鬱陶しく感じているようだった。


「……まぁ、そういった脱出経路もあるし、17階全て燃やすのは至難の技というわけよ。マップを見て、何階から攻めるか考えましょう」

「うん、そうしよう」

 

 あとから了解、ラジャ、など雨宮に賛成する声が上がった。


「やっぱり、脱出経路のある階から攻めていく感じ?」


 東雲は頬杖をついて雨宮に同意を求めた。


「そうね……でもその前に、一階は押さえるべきじゃないかしら」

「ああ……そっか」


 うーん……と唸る東雲。そこに月詠が新たな意見を出す。


「先に制御室に行って1階の入口を塞いじゃうのはどう?あのビルの入口は大体オートロック式だったし、駐車場にも自動シャッターがあった。多分制御室で一括管理してると思うんだけど」

「なるほど! その手があったか!」


 榊原が何か閃いたような表情で同調した。


「月詠くんの能力を使えば、防犯カメラを壊して回らなくてもすぐに制御室に行けるよね!」

「確かにそれなら、そのまま制御室に入ってモニターを切ることも出来るし得策ね」


 第一段階の計画が決まって、次の作戦会議に移る。


「制御室の場所は1階の駐車場とビルを仲介する渡り廊下の隣。最寄りの他の階と行き来するための通路は階段ぐらいね……」


 雨宮が手に顎を乗せて考え込む。そこに東雲が意見を出した。


「防犯カメラは壊さなくてもいいんだろ? なら、エレベーター使えばいいんじゃね?」

「そーだぜ! エレベーター乗って、脱出経路のある階から攻めてきゃいいんだよ!」


 東雲の意見に片桐がガッツポーズをして賛成する。しかしその意見は、


「それはダメだよ」


 と月詠に即ダメ出しされた。


「なんでだよ! その方がラクだろォがよ!」

「……で? エレベーターだとどんな問題があるんだ?」


 反論する片桐と、その理由を聞き出そうとする東雲。二人は似ているようであんまり似ていないのかもしれない。


「えーっと、それはねぇ……」


 理由を言おうとしたが、すぐに言葉が出てこないらしく言葉に詰まる月詠。そこに雨宮が助け舟を出す。


「エレベーターには重量制限がある。月詠の能力には時間と範囲制限があるから全員同時に乗り込まないといけない。そしていくらその能力で人間に触れたりする危険がなくても、そこには確かに私たちの質量が存在する。


 私たちだけで5人もいるのだから、重量制限に引っかかって音が鳴ったらすぐにおかしいと思われるわ。そこで整備不良を理由にエレベーターの緊急連絡ボタンでも押されたら――」


「ビルの異変が外部に漏れてしまうわけだね」


 ちゃっかりと榊原が結論づける。


「ま、そういうわけなんだよー。あとは、階段だったら警察が潜んでると思うから殺せば拳銃が手に入るってくらいかなー」


「月詠の言う通り、必ず警察はいる。――もう既にこの法則に気づいているはず……。でも、それについては後で話しましょう。今は攻める順番よ」


 雨宮がすぐに話を元に戻すと、榊原がテレビ画面に映し出されたマップを見て慎重に意見を出した。


「脱出経路がある階は、13階と9階と5階。消防団が駆けつけてはしごを上げる時間も考えると、5階から順に攻めていくのがベスト、かな……」


「なるほど! 炎は上に上がってくんだから、そーだよな!」

「あー……ベストじゃないかも」


 片桐が意見に賛成したところで、榊原はそれが得策ではないと悟った。疫病神扱いされている片桐を見て月詠はぷぷぷ……と顔を隠して笑っていた。


「……まぁ、そうしたいのも山々なんだけど、それだと私たちの脱出経路が絶たれるのよね」

「んじゃあ、やっぱり13階から?」


 考え込む雨宮に再び東雲は同意を求めたが、またしてもそこに月詠が新たな意見を出す。


「いや、原点に戻って17階からでしょ。屋上にも脱出経路、緊急用のヘリポートがある。まずはそこを崩せばいいんじゃない? あとはその前の仕込みとして、制御室で予め内線をオフにして、攻める階で電波妨害しちゃえばいいよ」


「なるほど。それなら下の階にいる人間はすぐには火災に気づかないわね。あくまで外部の人間のことを考えない計算なら。……けど、いずれ火災報知器が火災を知らせる。そして消防団が駆けつけて、脱出シュートを……」


「雨宮さん、能力の効果範囲は?」

「半径10メートル以内……。――まさか、火災報知器を見えない位置から破壊しろってこと!?」


 こくり、と月詠は頷いた。


「そんなこと……一度も社内を見たことがない私に出来ると思うの?」

「すごい無茶ぶりだよ……」

「出来たらすげェわ」


 雨宮に続いて榊原と片桐は「不可能」を訴えた。しかし、そこで東雲が静かに口を開く。


「――雨宮ならやれる」


 その場にいる東雲以外の人間全員が驚いた表情で黙って東雲に注目を集める。



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