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CREST~7つの紋章編~  作者: 館山理生
第2章 人為的事件
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第5話 紋章の力


     ◆◆◆


 「同じ学校にいたァ!?!?!?」

 「どした蓮」

 「あ、あぁ……なんでもない、なんでもない」


 雨宮からの律儀な報告メールに目を見開いたと同時に声まで上げてしまった。


 「なんだなんだ? 出会い系かぁ?」

 「……なわけないだろ」


 英治がバカで助かった。いくら英治相手とはいえ、根掘り葉掘り聞かれたらこちらも流石に隠し切れなくなる。――全焼事件の加害者になろうとしていることを。


 「ま、そうだよなぁー。お前、女に興味ないもんな。高校入って一度も彼女を作らない、告白されても全部「ごめん」で突き放す。ったく、罪な野郎だぜ……」

 「なんとでも言え。俺には俺の生き方がある」


 ただ、それすらも雨宮に委ねなければならないハメになっているのだが……。


 「大体、お前だって彼女作ってないじゃん」

 「まっ! そういうことを言うんじゃないよ蓮クン!!」

 「誰の真似だよ……」

 「俺はお前と違ってさ、女が寄って来ないんだよ。寂しいよー彼女欲しいよー」


 それなのに蓮は勿体無いことをする……などと英治はブツブツと独り言を続ける。どう考えても俺への嫌味だが、今に始まったことではないので構わず無視した。まったく、英治は口を開けばすぐに女の話……そんなんだから寄って来ないんだろ。などと思ってしまうがどうでもいいので自分の脳内からその思考をシャットアウトした。


 『三日月高校内にて赤を発見した』


 メールには一言、それだけ書かれていた。赤、というのは勿論赤の紋章を持つ者――全焼事件の本当の犯人。雨宮の目撃証言では「自分と同じくらいの身長」「フードを深く被っていた」と言っていたので、自分で見つけたわけではなく向こうから分かるように接してきたのだろう。


 どちらにせよ今日の午後七時には対面する予定だった。その予定が少し早まっただけ。幸か不幸か、事が順調に進んでいる。俺はこのまま犯罪の加害者になってしまうのだろうか。いや、自分の役割はターゲットである笹倉マンション全焼後に炎を消すこと。俺が殺人を犯すわけではないんだ……と心の中で言い訳をする。無意味だと分かっていても。犯行に関わってしまっていればそれは共犯も同じ。否定することに意味は無い。それに、これは紋章を離脱するための手順の一つに過ぎない。全て終われば、人間に戻れる。

“この紋章は、物理や自然を無視する力や、驚異的な身体能力を得ることができる代わりに、新しい命を生んだり生ませたりすることが出来なくなる”

雨宮が言った言葉を頭の中で反芻する。この一文が、自分たちが人間ではないことを如実に表した一文と言えることは明確だ。


 確かに、「物理や自然を無視する力」である、無から炎や水、雷を生み出す力を目の当たりにしていて、「驚異的な身体能力」については、雨宮が全焼事件から無傷で生還していることから窺える。運動神経がさほど良くないはずの雨宮ならなおさら。しかし――「新しい命を生んだり生ませたり出来ない」ことに関しては、真偽が定かではない。確かめる必要があることは分かっているけど……。流石にこれは一人で確かめることが出来ない。それに、事情を知った上で、お互いに承諾しなければ事に及べないことも理解できる。ただ……それを今からでも出来そうな人なんて、俺の周りには居ない。というか事情を説明するわけにいかない。でも説明してやらないと相手は不安になるだろうし……あー、あー、あー。ダメだ、やっぱりこれを俺が確かめることは出来ない。むしろ俺じゃなくてもいい気がする。例えば雨宮と赤とか。


 ………………。…………………………………………。


 赤の人物像は分からないが、確かめようとする雨宮を想像したら不覚にもにやついてしまった。英治に見られてなければいいが……。


 「そんなにニヤついてどうしたよ」

 「………」


 あーあ。見られてたか。どうせお前の二言目なんて、


 「エロいことでも考えてたとか?」

 「……………」


 わかっていたことだが、否定出来ない自分に嫌気が差す。


 「え、図星!?」


 英治って奴は、どうしてこうも妙なところで勘が鋭いんだろう。


 「蓮も男だなぁ~♪」


 お前と一緒にしないでほしい。


 「なになに? どんなこと考えてたわけ?」

 「どーでもいいだろそんなこと。つか早く部活行かねぇと」

 「ちぇー。せっかく蓮の口から官能的な話が聞けると思ったのに」


 気付いた時にはほとんど人が居なくなっていた教室を足早に去って体育館に向かった。

 


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