7/14
気付きたくないもう一人
Agape
「これ……どうしよっかな……」
学校からの帰り道。深香は鍵を目の前でぷらぷらさせながら呟いた。
昨日、洋一おじさんにもらった…というより、おしつけられたものだ。
洋一おじさんが平日、ほとんど生活らしい生活をしていることは察している。
でなければ、いくら深香がおせっかいだからとはいえ(自覚はしている)、
毎週他人の家の家事をしたりはしない。
前だったら、洋一おじさんに鍵をもらったら、普通にご飯を作りに行ったと思う。
でも、今はなんとなくそういう空気が、微妙に変わってしまったような気がする。
「ご飯だけ作って、さっさと帰ろ」
深香はそう結論づけた。
不健康な生活をしている人を心配するのは、当たり前のことだ。きっと。多分。
そんな言い訳をなぜかしながら、深香はご飯を作る。
この状況のおかしさは、考えないことにした。




