表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

一人からもう一人へ、贈り物

Agape

♪~

「もしもし?」

あのものぐさの洋一おじさんから電話なんて珍しいな、というか初めてかも。

そんなことを思いながら、深香は電話をとった。

「俺。渡したいものがあんだけど、いつなら暇だ?」

深香は時計を見た。日曜午後五時。

「今、大丈夫だけど…」

「んじゃ、俺がそっちに……あ、だめだ。俺、深香の家知らねえや」

「あたしがそっちに行こうか?おじさん、どうせ家なんでしょ?」

「おい。俺だってたまには仕事以外でも出るぞ」

おじさんは今、隣の市にいるらしい。

その市は繁華街があるから、あたしも友達と遊ぶのはそこが多い。でも。

「おじさんがそういうとこに行くのって、なんか意外」

「うるせ」

「ごめん」

半分笑いながら謝った。

結局、あたしの家からの最寄の駅で会うことになった。

おじさんと外で会うのって、初めて会ったとき以来だなあ、なんて思ったりして。

あのときの自分の暴言を思い出して、顔が赤くなった。



駅まで、歩きで十五分。顔の熱が引くように、ゆっくり歩いてきたら、

洋一おじさんが既に来ていた。

「あれ、おじさん、早いね」

「まあ、たまにはな」

どうやら、自分が待たせる側の人間だということは自覚しているらしい。

「あのさ、深香」

「何」

おじさんの顔が妙に真剣なので、深香はなぜか早口になった。

「おまえ、俺を起こすのって、面倒だったりしないか?」

「あー……。うん、まあ。たまにそう思うときもあるけど」

真剣な顔の割に、聞いてきた内容があんまりだ。

「自分で言うのもなんだけど、やっぱそう思うだろ。だから、これ渡しとこうと思ってさ」

おじさんに渡されたのは、鍵。

「好きなときに使ってくれればいいから。」

「……別に、家事するとき以外でも、アパート勝手に入ればいいし」

「……え、っと」

深香はびっくりした。この鍵は、この台詞は、どういう意味だ。

いや、意味なんてないのか。文字通りの意味なのか。

深香の反応を、おじさんはどう思ったのか。

「ま、いつも通り土曜だけ来るとか、そんでもいいけど」

鍵を深香におしつけ、

「じゃ。電車来るから」

それだけ言って、改札の向こうへ行ってしまった。

「……これ、どういう意味なんだろ、ほんとに」

最近の洋一おじさんは、どこか変な気がしていたけど、今日のは最大だ。

「ほんとは、あんまり面倒だと思ったことはないんだけどな……」

独り言でしか、言えないけど。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ