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五.時間は私の傷を治せない

「美月ー麟夏ちゃん来てくれたよー。」

 お母さんの声で、止まっていた体をハッと動かす。時計を見ればもう学校に行くのに、家を出なきゃ行けない時間。

 わかったー、と二階から言う。急いでカバンを背負い、マフラーをつける。

 階段をドタドタと降り、家を出る。

「ごめんごめん、朝から来てくれて。蒼真君と一緒じゃなくて大丈夫?」

「うん。別に毎日って訳じゃないし。それに仲良しが困ってたら、彼氏より長く付き合ってる友達を優先すべきでしょ?」

「ありがとう。私も何が何だか分かんなくて倒れそうだったから嬉しい。」

 これは昨日、漫画の読み過ぎで寝不足だから、そう、そう、寝不足だから…、そう思っても、思おうとしても、陸斗の顔が思い浮かんでしまう。

 ねえ、バイトって言ってたじゃん。もう脈なしすぎるし。

「あーーーーー。もー無理。」

 私は近所迷惑にならない程度の大きさで叫ぶ。でもやっぱり、家では一滴も出なかった涙が流れてくる。

「みっちゃん。みっちゃん。ほら泣きたかったら、いっぱい泣いたらいいから。」

 確か仲良くなった時は、みっちゃん、って呼んでくれてた。いつの間にかその言い方が変わって、私は少しだけ寂しく思っていた。でも、今また呼んでくれて嬉しい。

 漕いでいた自転車から降りて、近くの小さな公園のベンチに座る。

 後ろから優しく麟夏が私の背中をさすってくれる。それでまた涙が止まらなくなる。麟夏の前でなんか涙見せたことないのに、なんだか恥ずかしい。けど流れてくる。


 五分くらいで、涙が少しずつ止んできた。時計を見れば、結構やばい時間。私は遅刻しても良いとしても、麟夏を遅刻されるわけにはいかない。

 私は大丈夫、大丈夫、と言いながら自転車に乗って、走り始めた。

 なんとか学校に着くまでに、赤い目はマシになったと思う。


 教室に入れば、陸斗と花奈という二人の名前が何度も聞こえる。

 そう、二人は何?…彼氏と彼女か。二人ともまだ学校には来ていなかった。

 手を繋いで、ギリギリに入ってくるのかな。花奈ちゃんと仲良い元カノの瑠夏ちゃんは気まずくなんないのかな。てか、そんなことどうでもいいか。

 私は一限目の理科の実験を思い出して、荷物を置いて、逃げるように教室を出た。もう、もう、もう私の初恋はこれで終わりだから。涙は流さないで...。


 時が経ち、私はもう高校を卒業する年になった。

 桜ももうすぐ花を咲かせそう。私は卒業式について話しているHR中に外を眺める。

 もうみんなバラバラになるんです、その担任の言葉が耳についた。その言葉を聞いて、一番最初に思いついたのは、やっぱり陸斗だった。クリスマスの次の日から花奈ちゃんと陸斗は今もずっと付き合っている。恋って難しい。私は陸斗がなんとなく諦められなくて、去年も今年も恋をしていない。片想いをしてるのかもしれない。

 でももうそろそろ終わり。だって、私が好きになった君には、好きな人がいたから。

ep.5で完結となります。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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