第9章 逆襲の狼煙
深夜の東京湾沿い。
コンテナヤードには無数の荷が積まれ、クレーンの明かりがゆらめいていた。
そこは政府が密かに裏金を動かす拠点――選挙資金や官僚への賄賂が、闇のルートで保管されていると情報が掴まれていた。
「奴らの資金源を叩けば、牙も鈍る」
神宮寺の言葉に、一同は静かにうなずいた。
黒いバンから降り立った蓮は、拳を握りしめる。
初めての本格的な“戦い”。
恐怖はあった。だが、それ以上に燃えるものがあった。
「……絶対に守ってみせる」
鷹村が笑みを浮かべ、背中を叩く。
「坊主、今日は拳じゃなく頭も使えよ」
「はい!」
その時、合図の手が上がった。
仁誠会の精鋭たちが一斉に影のように散り、ヤードを包囲する。
――突入!
次の瞬間、コンテナの影から現れたのは、重装備の警備部隊。
警察の特殊班だ。
政府はすでに仁誠会の動きを読んで待ち構えていたのだ。
「撃て!」
怒号とともに閃光弾が炸裂し、夜空を白く染める。
「来やがったな!」
鷹村が鉄パイプを振り抜き、突進してきた警官を弾き飛ばす。
蓮も木刀を握りしめ、訓練で叩き込まれた“間合い”を思い出しながら敵をかわし、一人を倒す。
「お前らは誰を守ってんだ! 国民か、それとも腐った政治家か!」
怒号が飛び交い、戦場は混沌と化した。
だが、仁誠会は怯まなかった。
各自が市民を巻き込まぬよう動き、迅速かつ静かに敵を制圧していく。
その戦いぶりは、ただの暴力団ではなく――秩序を守る戦士のようだった。
やがて蓮が見つけたのは、コンテナの中に積み上げられた無数の札束。
まさに裏金の山だった。
「……これが国の真実かよ」
怒りを噛み殺しながら、蓮はカメラで証拠を撮影する。
そこへ駆け込んできた鷹村が叫んだ。
「坊主、撤退だ! 長居は無用だ!」
「はい!」
仁誠会は札束を焼き払い、証拠だけを持ち帰った。
燃え盛る炎が夜空を赤く染め、その光景はまるで「革命の狼煙」のように見えた。
――その翌朝。
テレビのニュースは「暴力団による襲撃」と報じた。
だがSNSでは拡散された炎上動画に、無数のコメントが寄せられていた。
《政府の闇を暴いたのは仁誠会だった》
《どっちが悪か、もう分かっただろ》
民衆の心は、確実に動き始めていた。




