第34章 情報の戦場
仁誠会の勝利から一週間。
全国の新聞やテレビは、一斉に奇妙な報道を始めた。
「先日の市街地での戦闘は、反社会組織・仁誠会によるテロ活動でした」
「政府治安部隊は市民を守るために応戦し、甚大な被害を最小限に抑えたのです」
画面には、爆発で壊れた建物や血に染まった路地の映像が流される。
だが、そこには“仁誠会が市民を守った”事実は一切触れられていなかった。
本部の会議室。
組員たちが怒りを隠せずに声を荒らげた。
「ふざけやがって!俺たちが命張って市民を守ったのに!」
「まるで俺たちが悪党みてぇに言いやがる!」
鷹村が机を叩く。
「連中、報道機関を完全に握ってやがる。……情報を潰して俺たちを悪に見せるつもりだ」
神宮寺は静かに目を閉じた。
「想定通りだ。政府は力だけでなく“世論”を武器にしている」
だが、街の空気は違っていた。
プロパガンダ報道を見た市民たちは、テレビの前で冷めた目を向けていた。
「……嘘だな」
「俺の友達が言ってたんだ。仁誠会の連中が庶民をかばって戦ってたって」
「政府が真実を隠してるんだろ」
中には涙を流して訴える者もいた。
「仁誠会がいなきゃ、私たちはあの化け物に殺されてた……!」
やがて、街の人々のあいだでは密かに“真実の証言”が広まり始めた。
現場を目撃した者が匿名でネットに書き込み、撮影された動画が拡散される。
政府の情報操作は逆に民衆の不信感を煽り、皮肉にも仁誠会への支持を高める結果となった。
蓮は包帯で巻かれた腕を抱えながら、街に貼られた落書きを見上げていた。
そこには大きく、赤いスプレーでこう書かれていた。
――「仁誠を信じろ」
蓮はその文字を見て、胸の奥に熱を覚えた。
「……俺たちはもう、ただの裏社会じゃねぇ。民の信じる“旗”になっちまったんだ」
神宮寺が隣で頷く。
「ならば旗を折らせてはならん。……この戦い、情報の戦場でも負けるわけにはいかん」
政府のプロパガンダは失敗し、逆に“真実を隠す腐敗権力”という印象を強めた。
こうして仁誠会の存在は、ますます全国に広がっていくのだった。




