第23章 告白
対影部隊の結成から間もない頃。
蓮は訓練を終え、汗を拭っていた。
だがその胸には重たい疑問が残っていた。
(……あの時、どうして俺たちは国会に潜入できたんだ?)
(政府の罠にしては、内部の腐敗を暴く証拠が多すぎた……)
その違和感を抱えたまま、夜の本部に戻った。
その夜、神宮寺の執務室に一人の来客があった。
黒い帽子を深く被り、顔を隠した中年の男。
付き添いの組員が「政府関係者だ」と耳打ちする。
広間に呼ばれた幹部たちの前で、男は震える声を絞り出した。
「……私は内閣府の官僚、篠田と申します」
蓮は驚き、思わず身を乗り出す。
「官僚……!あんた、敵側の人間じゃ……」
「いいえ」
篠田の声は悲痛だった。
「私は、あの腐敗をこの目で見てきました。議員たちは私腹を肥やし、国庫は裏金に流れ、国民の命など数字としか見ていない……」
蓮の脳裏に、あの日の国会議事堂で目撃した光景がよみがえる。
篠田は続ける。
「だから私は……あの極秘資料を、あなた方に送ったのです。罠でも、挑発でもない。――せめて誰かに、この国の腐敗を暴いてほしかった」
広間は静まり返った。
神宮寺が目を細め、問いかける。
「……ならば、何故今ここに現れた」
篠田は深く頭を下げる。
「影の部隊が動き始めたと聞きました。奴らは私の存在に気づき始めています。……命を狙われる前に、せめて仁誠会に真実を伝えたかった」
その言葉に、鷹村が舌打ちする。
「チッ……やっぱりな。お偉いさんの中にも、まだ“人間”が残ってたか」
蓮は篠田をまっすぐに見つめ、拳を握った。
「……あの潜入は、あんたの想いが俺たちに届いたんだな。俺は……絶対に無駄にはしません」
篠田の目に涙が滲んだ。
「……ありがとう……どうか、この国を……」
その夜更け。
篠田は護衛の組員に守られながら本部を去った。
だが蓮の胸には、新たな決意が芽生えていた。
(俺たちの戦いは、ただの抗争じゃない。あの人みたいに声をあげられない民の想いも背負ってる……)
拳を握りしめ、夜空を見上げる。
星は雲に隠れていたが、確かにそこに光はある。
革命の火は、ますます燃え広がっていくのだった。




