第10章 狙われた命
仁誠会による“逆襲”から数日後――。
街はざわつき、政府は怒りに震えていた。
『暴力団のテロ行為』『治安維持を脅かす反社会組織』
連日のニュースは仁誠会を徹底的に悪に仕立て上げていた。
だが、民衆の心は揺るがなかった。
むしろネット上では「仁誠会こそ正義」とする声が高まり、若者の間では支持が拡大していく。
――その空気を、政府は最も恐れていた。
「狙うのは組長ではない」
暗い部屋で、一人の男が囁く。
「神宮寺を討てば殉教者になる。だが――あの新入りを消せばどうなる?」
蓮。
庶民に最も近く、市井の声を背負い始めた存在。
彼の存在感は日ごとに増していた。
そして――その夜。
蓮は帰り道の路地で、背後の気配に気づいた。
「……誰だ?」
次の瞬間、銃声。
耳を裂く轟音とともに、壁に弾丸がめり込んだ。
「くっ……!」
必死に身を翻し、路地を駆け抜ける。
黒い影が三つ、銃を構えて追ってくる。
政府の密偵部隊――表には決して出ない“闇の兵士”たち。
足音が迫る。
蓮の息は荒く、心臓が喉から飛び出しそうだった。
(逃げろ……いや、立ち向かわなきゃ……!)
その瞬間、影が前方に回り込み、銃口を向けた。
絶体絶命――。
「坊主ォォォッ!!」
轟く怒声とともに、鉄パイプが振り下ろされる。
鷹村だった。
背後から敵を叩き伏せ、もう一人を蹴り飛ばす。
「若頭……!」
「お前一人で死なせるかよ!」
二人は背中を合わせ、残る暗殺者と対峙した。
銃口の火花が閃く。
紙一重で避けながら、蓮は渾身の力で木刀を振り抜いた。
「うおおおぉぉっ!」
乾いた音とともに、敵が崩れ落ちる。
路地に静寂が戻った時、蓮の膝は震えていた。
「……俺、本当に……死にかけたんですね」
「当たり前だ。これからは毎日そう思っとけ」
鷹村は乱暴に笑い、蓮の肩を叩いた。
その夜、事務所で神宮寺は静かに言った。
「政府は、我らの芽を摘みにかかった。……ならば、我らも迷ってはならぬ」
その言葉に、蓮は深くうなずいた。
自分はもう、ただの新入りではない。
この戦いの矢面に立つ一人なのだ――。




