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第13話 美味しいモンスターを求めて

「イルーシャ君。ここ数日の活動を通じて、私は一つの仮説に至ったのだよ」

「なんですか? いきなり変な口調で」

「もう、ノリが悪いなー」


 エルダーフロッグの討伐から、およそ一週間。

 あの後も何回かモンスターを討伐し、そのたびにお肉を食べた私はとあることに気付いた。

 とてもとても重要な、ある事実に。


「モンスターはね、強いほど美味しい!」

「言われてみれば……」


 腕組みをして、少し考え込むような仕草をするイルーシャ。

 実は彼女も、ちょっとずつではあったがお肉は食べていた。

 それはさながら、ダイエット中のOLが言い訳しながらスイーツをつまむよう。

 今日はお腹が空いているとか、お野菜もたくさん食べたからとか、あれこれ言いつつも食べていた。


「だから、ちょっと強いモンスターの討伐依頼を受けてみようかなって」

「ララート様の実力なら、よっぽど大丈夫だとは思いますけど……」

「わん、わんわん!」

「ほら、フェルも美味しいお肉食べたいって」

「……わかりました。いいですよ」

「やった!」


 さっそく、私は依頼を引き受けるべくギルドのカウンターへと急いだ。

 こうしてギルドのウェスタンドアを押し開けると、たちまち受付嬢さんが話しかけてくる。


「あ、ララートさんにイルーシャさん! ちょうどいいところに!」

「どしたの? ずいぶん焦ってるみたいだけど」

「実は先ほど、緊急の依頼が入ってですね……。引き受けてくださる冒険者はいないか、探してたんです」

「どんな依頼なの?」

「……アースドラゴンの討伐依頼です」


 重々しい口調で告げる受付嬢さん。

 アースドラゴンか、大地を司ると言われる強力なドラゴンだね。

 私の強いモンスターほど美味しい理論を証明するには、これ以上ない相手だろう。

 この間のドラゴンは、結局、一口食べただけで大騒ぎになっちゃってそれ以上は食べられなかったしなぁ。

 ドラゴン肉の野生的でパンチの効いた味は、思い出すだけでもよだれが……。


「あの、ララートさん?」

「あ、いけない!」

「まったくララート様ってば……。この非常時に何を考えてるんですか」

「あはは、ついね。でも大丈夫。その依頼は私たちが引き受けるから」

「おお! 竜級魔法の使えるララートさんなら安心です!」


 私の手を握り、ありがとうございますと何度も頭を下げる受付嬢さん。

 ……ま、アースドラゴンは強敵だからね。

 相手にできる冒険者は限られているだろうから、ギルドも困っていたのだろう。


「任せといて。ドラゴンの一匹や二匹、軽い軽い」

「流石です!」

「でもララート様、ドラゴン相手に自爆してしばらく寝込みましたよね?」

「あれは相性最悪だったし、やたら強いドラゴンだったからね」


 炎の魔法を得意とする私にとって、火属性のドラゴンというのは最悪に近い相手である。

 そして、里を襲ったあのドラゴンは規格外と言っていいほど強かった。

 それこそ、ドラゴンの中のハズレ個体だったのかもしれない。


「とにかく、調子に乗り過ぎないでくださいよ。ララート様、ただでさえうっかりしてるんですから」

「失礼だなー、そんなにうっかりしてないって」

「寝癖のついた頭でそれを言っても、説得力がないです」

「え、うそ!? ほんと?」

「ほら、頭の後ろが跳ねてます」


 そういうと、イルーシャは懐からサッと鏡を取り出した。

 覗いてみれば、確かに頭の後ろがピンっと跳ねている。

 あちゃー、後ろだったから髪を梳いたときに気付かなかったんだね。

 慌てて手櫛でほぐそうとするが、逆に寝癖がひどくなってしまう。


「ま、まあ。それと魔法とは関係ないから大丈夫! それより、そのアースドラゴンってどこに出たの?」

「王国南部の鉱山地帯です。だいぶ離れたところなのですが、現地のギルドでは対応できる冒険者がいなくて」

「向こうまではどのように移動すれば? 徒歩ですか?」

「いえ、ギルドの方で馬車を手配しています。明日出発してください」

「……南部か」


 ……はて、南部と言えば何かあったような?

 長老様から何かを言い含められていたような気がするが、どうにも思い出せない。

 たぶん、私がまだ子どもの頃の記憶だな。

 ううーん、なんか近づいちゃいけないとかそんな類のことだったような……。


「どうしたんですか?」

「んにゃ、南部って何かあったっけ?」

「さあ? 行ったことがないので」

「そうだよねえ」


 イルーシャの方は、特に何も思い当たる節はないらしい。

 ま、この子が効いてないならそんなに重要なことでもないだろう。

 最悪、私の魔法で恐らくどうにかなるなる。


「じゃ、いったん宿に戻って出発の準備をしようか」

「はい!」

「それでは、夕刻の鐘がなりましたらギルドの方へ。馬車を準備してお待ちしております」


 こうして私たちは、アースドラゴンを討伐するべく南に旅立つのだった。

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