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第5話 楽器屋の前で
楽器屋についた。
ネイは「今日もお仕事がんばってね」と、にこりと笑いながら手をふる。
僕は「うん、頑張るよ」と答えて、彼女と別れた。
これが日常だ。
数年前から唐突にはじまった、この二人の時間。
理由はわからない。
何かの利益でもあるのか、利点でもあるのか。
それも分からない。
でも、嫌ではなかった。
むしろ好ましい時間だと感じている。
彼女と二人で過ごす時間は穏やかで、好きだった。
ネイと別れた後は、僕は一人で仕事場へ向かう。
小さな古書店へ。
お客があまりいないから、だいたいは模写しているだけだけど。