第2話
初コメディ回です。
西暦2051年 4月3日 14時20分 帝都女学院
土曜の入学式から2日後、体育館及びグラウンドでは第133期生の体力測定が行われていた。
ここで注目を浴びたのが坂東 麗華と勝土騎 京子であった。
麗華はバンドウ・メディカルケアの社長令嬢であり容姿端麗、文武両道と非の打ちどころのない生徒だと噂されていた。
事実、測定結果も上位を占め、総合順位は1位であった。
対して京子は測定では総合5位だったが、長身と引き締まった理想的な肉体で女生徒の注目を集める。
さらに紳士的な振る舞いで女生徒の羨望の的となった。
体力測定の最後の項目、長距離走が行われ小柄な少女が息も絶え絶えにゴールを迎えた。
『大熊 双葉』(おおくま ふたば)、国防大臣 大熊 利光の1人娘である。
穏やかな瞳と柔らかなロングヘアーを二つに結わえ、鼈甲の髪留めを付けている他に特徴がない平凡な容姿だと本人は思っている。
実際は小動物にようで非常に可愛らしいのだが、凹凸のない小柄な肉体は双葉にとってコンプレックスだった。
インドア派である双葉にとって長距離走は鬼門であるが、真面目な気質が手を抜くことを許さず、結果疲労困憊で終えることとなった。
おぼつかない足取りで皆が待機している場所に戻ろうとするが、貧血を起こして足がもつれ、顔面から地面に倒れそうになる。
だがその瞬間、背後から誰かに抱き留められた。
「大丈夫ですか?」
顔を上げるとクラスメイトの京子が双葉を覗いており、地面に少女を寝かせると救急隊員のように脈拍や瞳孔を調べ始めた。
「これは貧血ですね・・・立てますか?」
双葉は注目を浴びることが苦手であり、これ以上京子の手を煩わせないように自力で立とうとした。
しかし、足は地面を踏みしめることができず、転倒しそうになり再び京子に抱き留められる。
「すみません・・・・」
双葉の瞳には羞恥と不甲斐なさで涙が浮かんでいた。
それを見た京子は近くの教師を呼び止め、双葉の体調が悪い旨を話し、保健室に連れていく許可を求める。
全ての教職員は軍から勝土騎 京子の行動に干渉するなと命じられていたので、即座に了承された。
「大丈夫ですよ、行きましょう」
京子は微笑みながら双葉に声をかけると、両手で軽々と抱き上げた。
俗にいう“お姫様抱っこ”である。
周りが黄色い声を上げるが、双葉の耳には届いてなかった。
なぜなら、端正な京子の顔が目前にあり、胸のときめきで頭が真っ白になっていたからだ。
京子は真っ赤な顔の双葉を心配しながら保健室へと向かう。
彼女の行動は傍から見れば称賛されるものであったが、衛生兵の教育を受けた京子にとっては当たり前のことだった。
その後、帰宅した双葉は両親に京子に助けられたことを鼻息荒く話し、憧れの魔導少女はきっと京子のような人なのだろうと熱く語った。
母親は微笑みながら相槌を打っていたが、父親の利光は娘とは別の意味で胸の動悸が止まらなかった。