魔法少女と呼ばれて
魔法少女と呼ばれていたサナが、少しだけ成長する話。
田舎で産まれ田舎で育った私は、一生ここで暮らすものだと思っていた・・でも、おばさんが訪ねて来て、この村を離れる事に・・
12年過ごした村を私は出て行く・・
「サナ!おばさんの言う事をしっかり聞くのよ!」
「うん・・」
悲しみと不安から涙が頬を伝う・・
「泣いてもいいけど、逃げちゃだめよ!あなたは選ばれたの!ありがたい事なんだから、涙を力に変えて精一杯頑張るの!」
お母さんは私を励まし、笑顔で送り出したが、内心では泣いているのが分かった・・私は涙を流しながらも精一杯の笑顔を作って、背を向ける・・
舗装してない田舎道をトボトボ歩き、おばさんがドアを開けて待っている車に乗り込むと
「じゃあ姉さん!」
おばさんは片手を上げ、お母さんに別れを告げて乗り込んだ。
「行って頂戴!」
運転手がアクセルを踏み込み、デコボコ道で車体を上下に揺らしながら走る車をお母さんは、見えなくなるまで見送り、私は揺れる車の中から遠ざかる母と故郷に涙が込み上がる・・つい数分前まで、いつもと変わらない生活をしていたのに・・
「恨んでる私の事?」
おばさんは悲しんでいる私の顔を見て尋ねたが、何も応えれず黙って俯いていると、私の肩を優しく抱き寄せた・・
『おばさんが悪い訳じゃない・・』
そんな事は分かっていた・・けど、いつものように昼食を食べていた所に突然おばさんがやって来て・・
『姉さん久しぶり!』
いきなりズカズカと家の中に入って来て、私は凄く驚いた・・
『姉さん、私もお腹すいたわ!』
と言って私の隣に座ると笑顔で
『大きくなったわねサナ!私の事覚えてる?まだ小さかったから覚えてないか・・』
と話し掛けた・・
『メリルおばさん・・』
私が応えると
『そっ、メリルおばさん!って、私まだ29だけど・・おばさんには違いないか・・』
おばさんと呼ばれる事にショックを感じていた・・
『覚えてる訳ないでしょ!メリル・・前に来た時サナは、まだ1歳半だったのよ・・』
そう言って、お母さんはメリルおばさんの前にパンとシチューを置き
『長い間、顔も見せないから心配してたのよ・・』
『いろいろ忙しくてね・・』
メリルおばさんは、溜め息を漏らしスプーンを手に取るとシチューを口にする・・
『んまっ!相変わらず姉さんの料理は絶品だわ・・』
よほどお腹が空いていたのか一気に口の中に掻き込み
『お替わり!』
『ったく・・あなたの品のない食べ方も相変わらずね・・』
お母さんが鍋ごとメリルおばさんの前に置き、おばさんは自分でよそいながら
『ところで、この家の結界は姉さんが張ったの?』
『ううん違うわ、サナの結界よ』
『へぇー!サナの・・いい結界だわ!中々入れなかったもの!さすが姉さんの娘ね!』
おばさんの誇らしい眼差しが私に向けられ照れ笑いを浮かべると、お母さんはニコやかに微笑み
『それで・・あなたが結界を抉じ開けてまで、ここに来た理由は何?』
11年振りに顔を見せた妹に嬉しい知らせを期待したが・・
『そうね・・』
おばさんは急に神妙な面持ちになり、お母さんを見つめて
『また始まりそうなのよ、姉さん・・』
と言ってから、私に視線を向けた・・
私は2人で何か難しい話があって、聞かない方がいいのかと思い、立ち上がろうとすると
『サナ、ここに居なさい・・あなたが関わる話よ・・でしょ?メリル・・』
『そうね・・』
おばさんの溜め息のような言葉に、良い話とは思えず心の準備をすると、メリルおばさんは話しづらそうに
『サナに魔界に行って欲しいのよ・・』
『えっ・・』
私は、恐怖で固まった・・
『サナが魔界って、無茶言わないで!この子は、まだ12よ!』
『分かってるわよ!そんな事・・でも人手不足なの・・』
おばさんは、お母さんを諭すように語り掛ける
『姉さんも分かってるでしょ・・昔は、この村にも大勢の魔女が住んでたのに今は数える程しかいない・・この村だけじゃないの・・世界中で魔女の数が激減してて、その中から戦える子を選んでるの・・サナなら姉さんから魔法を習ってるし、即戦力でいけるでしょ・・』
『でもサナは若すぎる・・せめて、あと3年は無理よ・・』
『時間がないの!封印の崩壊が始まってて、いつ連鎖崩壊になってもおかしくないわ・・』
『そんな・・』
お母さんは言葉を失い、おばさんも沈黙して深刻な表情で私を覗き込む・・私には何を話していたのか、どうすれば良いのかも分からなかったけど
『魔界怖い・・行きたくない・・』
ボソっと呟いた・・
『サナが嫌なら、仕方ないか・・』
メリルおばさんは、溜め息を漏らしながらも無理強いしなかったが、お母さんは・・
『サナ・・あなたの気持ちは分かる・・魔界は恐ろしい所よ・・母さんが魔界に行った時は、2度と行きたくないと思ったもの・・でも封印の連鎖崩壊が起きたら大変な事になるわ・・そして、そうなった時に絶対後悔する・・何もしなかった自分を責める事になるの・・あなたに、そんな後悔させたくない・・』
『姉さん、サナが行きたくないなら、いいのよ・・サナに決めさせてあげて・・』
私は考えた・・魔界に行く恐怖に加え、魔女の能力は16、17歳がピークと言われていて、まだ私は12歳・・役に立つ所か邪魔なだけかも・・でも、そんな事お母さんだって分かってる・・お母さんが魔界に行くように言うのなら、私は行かなきゃ・・
私は、魔界に行く事に決めた!
『本当にいいの・・もう帰って来れないかもしれないし、すぐに出発するわよ・・』
おばさんの言葉に涙が込み上がるが、グッと堪えて『行く!』と応え、お出掛け用の鍔の広いトンガリ帽にローブを羽織り、気持ちを高める!
『その格好で行くつもり?』
おばさんが私の服装を見て
『いかにも魔女って感じだけど・・今時そんな格好してる子いないわよ・・地味で田舎臭いって言うか・・時代遅れよ・・』
『そ、そうですか・・』
全身黒で、赤いリボンとフリルの付いた私のお気に入りの服なのに・・涙がちょちょ切れる・・
『いいじゃないサナ!その格好、全然悪くないわよ!流行りに流されちゃダメ!それで行きなさい!』
お母さんが強く進めるのは、お母さんが作ったからだった・・
時計は夜の10時を過ぎ、サナを乗せた車は高速道路を走っていた。
遠くに見える都会の煌びやかな光が夜空をぼんやりと明るくし、サナは、その光を見つめ
「メリルおばさん、あそこが魔界なの?」
「ん?」
メリルは、サナが冗談で言ってるのかと思ったが、どうやら本気らしい・・
「違うわよサナ・・あの光は、人の生活してる灯りが集まってるのよ・・」
「そうなの・・何だか禍々しく感じたから・・」
「まぁ・・色んな人がいるから・・都会も魔界みたいなモノかもね・・」
車は都会の灯りに向かって一直線に進んで行く・・
灯りの中は夜中なのに大勢の人が出歩き、高層ビルや看板の明かりで昼間のように明るく、サナが目を丸くして眺めていると車が止まった。
「着いたわよ!」
車を降りた目の前には超高層ビル・・
『たっ高い~・・』
目をクラクラさせながら、おばさんの後に続いて中に入り、エレベーターで最上階へ・・
あっという間に最上階に付き、エレベーターを出るとドーンと大広間が広がっていて、床には巨大な魔方陣が書かれていた・・メリルおばさんは、遠くにポツンと見えるデスクに向かって歩き出し、私も後に続く・・
デスクには30歳位で事務服を着た眼鏡の女性が1人座っていて、何やら事務作業に追われているのか、あわただしくペンを走らせ、私達が目の前にいても気付かない・・
「ちょっとアヤメ!」
メリルおばさんが声を掛けると、ようやく気付いて顔を上げた。
「あらメリル、いつ来たの?」
「今だけど・・」
「そっ!」
と言ってアヤメは、また書類を書き始めたが
「隣の子、レイナの娘さん?」
と聞いた・・
「そうよ!よく分かったわね!」
「格好で何となくね・・今時、珍しいでしょう・・そんな格好・・」
私は、やっぱり自分の格好が変なのだと思い、恥ずかしさから少し後ろに下がった・・
「で、その子を魔界に送るつもり?まだ幼いようだけど・・使える?魔法・・」
「大丈夫よ、姉さんから習ってるから!」
アヤメは手を止め、サナの姿をまじまじと見つめ
「魔女と言うより、魔法少女って感じね・・」
と呟き
「あなたのエレメントは?」
サナに聞いた・・
「水です」
「そう・・水なのね・・」
そう言いながら、書類に記入し
「本当に魔界に行く気があるのね・・」
「はい、一生懸命頑張ります!」
「分かったわ!」
アヤメは書類にペタっとハンコを押してサナに渡す
「頑張ってね!」
書類は許可証で、許可のハンコが押してあった・・
「許可が出たわサナ!魔界に行くわよ!」
おばさんは私の手を取り魔方陣の真ん中に連れて行くと、自分は魔方陣の外へ出る。
「準備いいわね、サナ!」
「ち、ちょっと待って下さい・・私1人で行くんですか?」
「そうよ!」
「えぇ~っ!てっきり、おばさんも一緒に行くと思ってました・・」
「ゴメン、私は行けないのよ・・許可が下りないから・・」
と言ってアヤメに視線を向ける・・
「魔界に送れるのは25歳までなの。メリルは年齢オーバーで許可できませんから、おばさん!」
「おばさんは余計よ!それに、あんたの方が年上だっつうの・・」
おばさんは不機嫌に睨み付けていた・・
「メリルおばさん・・私・・物凄く、不安なんですけど~・・」
「大丈夫よ、サナ!魔界に行けば、お姉さん魔女達が待ってるから、勇気を出して!」
私が不安を感じながらも覚悟を決めると、アヤメさんは魔方陣発動のボタンを押す!
魔方陣が光を放ち、私が眩しさに包まれる中で、おばさんの声が遠くで聞こえた・・
「サナ~!ヤバくなったら逃げるのよ~・・」
すでに逃げたくなっていた・・私は、ビルの最上階から引きずり込まれるように落下していて、足下に見えるのは煮えたぎるマグマ・・恐怖に目を閉じ、膝を抱え込む・・
どこまでも落ちて行く感覚と恐怖から、座り込んだまま動かず、じっと目を閉じていると
「サナ・・」
「サナちゃん・・」
優しく名前を呼ばれて顔を上げた・・涙でボヤけた視界に見えるのは、綺麗な赤いドレスを着た女性の姿・・
「待ってたわよ!あなたがサナね!」
「あっ・はい・・でも、なぜ私の名前を・・」
「アヤメさんから書類が届いたわ!サナって言う、かわいい魔法少女が行くからヨロシクねって!」
「そうなんですか!」
私は安心したのか慌てて立ち上がり
「サナって言います。どうぞよろしくお願いします」
深々とお辞儀をした。
「私は、火のエレメントのアカネよ!」
と笑顔を見せると
「他の2人も紹介するわ!こっちのセーラー服を着た娘が風のエレメントの優衣で、迷彩ズボンにタンクトップを着てるのが土のエレメント、アンナよ!」
私は笑顔の2人に
「水のエレメントのサナと申します。どうぞ、よろしくお願いします」
もう一度お辞儀をすると優衣が
「あなたの服かわいいわね、手作り?」
「はい、お母さんの手作りです」
するとアンナが
「へぇー!なんか、かわいい魔女って感じでイイじゃん!」
「ありがとうございます!」
仲良く出来そうでホッとし、ようやく辺りの様子を見渡すと、私は魔方陣の真ん中に立っていて、周りは薄暗く岩壁に囲まれた地下の洞窟と言った感じ・・
「ここが、魔界ですか・・」
殺風景な場所に思わず呟くとアカネさんが
「拍子抜けしたでしょう・・静かだし、魔界なのに魔物も怪物も居ないから・・でも、この洞窟が魔界の全てなのよ・・」
「そうなんですか・・」
小さい頃から、お婆ちゃんに聞かされ恐れていた魔界が、こんなちっぽけな世界だったなんて・・
「魔界が恐ろしいって話は、作り事だったんですね・・」
「そうじゃないの!恐ろしい世界だったのよ魔界は・・世代の魔女達が千年もの時を掛けて、魔界の生き物を全て封印したの・・魔物がいなくたった魔界は魔界自体が収縮し、ここだけになったのよ・・」
「千年も・・ですか・・」
「そうよ・・でも最近になって昔の封印が徐々に崩壊してるの・・もし、これが連鎖崩壊に繋がったら大変な事になるわ・・下手をすれば全ての魔物が解放され、魔界は再び膨張して元の姿を取り戻す・・私達は、それを防ぐ為に魔界に居るんだけど、水のエレメントだった魔女が、26歳になるからって帰ってしまい作業が止まってたの・・」
「そうでしたか・・それで私が・・」
私が水のエレメントだから、おばさんは私を魔界に送ったんだと理解した・・
「それで、私は何をすればいいのですか?」
「4人のエレメントを合わせて星のエレメントを作るの。そして、その星のエレメントで光の封印を施せば、魔物を永遠に封印できる!すぐ始めるわよ!」
私は頑張らなきゃ!って思いで、3人に続いて魔物が封印してある洞窟の奥へ行くと、そこには大きな穴が2つ地面に空いていて、1つの穴には赤や青とカラフルな風船のような物が一杯・・もう1つの穴には、虹色に包まれた丸い物が光っていた・・
4人は四方に離れ、1つの穴を囲む位置に立つとアカネが
「サナ、水のエレメントを中央に向かって放出して!」
「はい!」
サナは両手をかざしエレメントを放出すると、3人も合わせてエレメントを放出し、4つのエレメントが中央で交錯すとアンナが
「サナ、少し力を抑えて!優衣は、もう少し強く!」
混ざりあったエレメントが渦を巻き、勢いを増して回転して丸く紫色に変化すると、アンナは笑みを浮かべ
「もういいわ、上手くいった!」
穴の中央高くに、紫色に輝く星のエレメントが浮かび上がっていた!
「よぉーし!じゃんじゃん封印していくわよ!」
そう言って優衣は、緑色の風船のような物体を魔法で何個か浮かび上がらせ、1つに合体させて行く・・アンナは黄色、アカネが赤色を合体させると
「サナは青色よ!」
サナは、3つの青色を浮かび上がらせ合体さた。
『ぷよぷよしてる・・』
次々と合体させ大きくなった物体を圧縮して小さくするのを見て、サナも見よう見まねでやってのけるとアンナは感心して
「やるわねサナ・・それを真ん中に持って来て!」
赤、青、黄、緑を1つにして星のエレメントに合体させると虹色に輝き出した!
「いっちょ上がりね!」
アンナがもう1つの穴に納めると、同じ作業を繰り返す・・中には封印がブヨブヨになってたり、今にも破裂しそうな物や手足が飛び出した物もあったが、順調に封印を強化して行った・・
「今日は、ここまでにしましょ!」
アカネの言葉で作業を止め、魔方陣の所に戻って来ると、豪華な料理がテーブルの上に用意されていた。
「すごく美味しそう・・」
驚くサナ・・
「好きなだけ食べていいのよー!」
と言ってアンナが飛び付き、優衣も負けじと食べ出す。
「サナ!遠慮はいらないわ!私達も食べましょ!」
アカネが食べ出すとサナも食べ始める・・
料理を食べ終えるとベッドが送られて来て、眠くなっていたサナは、ふわふわの布団に包まれ速攻で夢の中へ・・恐ろしいと思っていた魔界で、ご機嫌な夢を見ていた・・
ぷよぷよの黄色い馬に乗ってオレンジ色の雲の上を駆け回り、空から降るお菓子を追い掛けていた。でっかいケーキを見つけてよじ登り、生クリームの中を泳いで、大きくて美味しそうな苺にカブり付こうとした時、突然の爆発音に目を覚ます・・
眠気まなこで辺りを見回すサナの前にアカネが飛び込んで来た!
「魔物よ!魔物が出たわ!」
優衣とアンナが飛び起きて魔物を倒そうと駆け出し、私も後を追い掛けようとしたが
「サナは来ないで!私達だけで対応するから!」
アカネは、そう言って2人を追い掛けて行った・・
1人残った私は、不安と恐怖を感じながらも、とんがり帽にローブを羽織り、いつでも出れるよう準備だけは整える・・
しばらくすると、優衣が負傷したアンナの肩を抱えて戻って来た・・
「サナ!封印の連鎖崩壊が始まったわ!ここは危険だから、あなたを人間界に戻す!」
「皆さんは、行かないんですか?」
アンナは頭から血を流し深手を負っていたが・・
「私達は残って闘う・・さぁ、早く魔方陣へ!」
「そんな・・私だけ行くなんて・・私も残って闘います!」
「あなたは闘わなくていいの!」
と言って、アンナは流れる血を手で拭いながら
「私達は契約で来てるから逃げれない!サナは契約してないから逃げていいのよ・・」
「契約・・」
魔女にとって契約は、絶対的なものだとサナも分かっていた・・
「でも私だけ逃げるなんて・・星のエレメントを作れなくなる・・アカネさんは?アカネさんは何て言ってるの?」
サナが尋ねると、優衣の目付きが険しくなり
「アカネさんは、魔物に拐われたわ・・今生きてるかどうかも分からない・・」
「そんな・・」
サナの瞳から涙が溢れるのを見て、優衣も涙が込み上がる・・
「とにかくサナは逃げて!あなたを送ったら魔方陣を閉じる!ここが魔物で埋め尽くされる前に・・でないと人間界にまで魔物が押し寄せるわ!」
止めどなく溢れる涙を拭う事もなくサナは、優衣とアンナを見据え
「私は、逃げません!今すぐ魔方陣を閉じて下さい!」
キッパリ言い放つと更に
「アカネさんを助けに行きます!」
と走り出そうとした!
「待ってサナ!魔方陣を閉じたら、もう二度と戻れないわよ!」
『え?そんな・・』
私は足を止め、冷静に考えようとしたが出来なかった・・アカネさんを助けなきゃって思いと、お母さんが言ってた『逃げちゃダメよ!』って言葉に気持ちが高ぶり、流れ落ちる涙を振り払って
「構いません!ここで逃げれば、一生後悔する事になりますから!」
と言って走り出した時、目の前にアカネが飛び出して来た・・
アカネはサナに満面の笑顔を向けて
「テッテレェ~ッ!ドッキリでしたぁー!」
「・・・」
私は状況を理解しようとしたが、頭が真っ白で何も考えられず、呆然と突っ立っていると、優衣さんがニコニコ笑みを浮かべ
「いやぁ~!上手く引っ掛かったわね!」
と言ったが、私は・・
「はぁ・・」
理解出来ずにいるとアンナさんが
「サナ!封印の連鎖崩壊が起きたってのは、冗談なのよ、冗談!」
「えっ?えっ?えぇぇ~っ!」
私は、ようやく自分が騙されていた事に気付き、ちょちょ切れる涙を拭きながら
「よかった・・アカネさんが無事で・・でも何故こんな事を・・」
ホッとしてアカネさんに尋ねると
「新しい人が来ると毎回やってるの・・予行練習見たいなものね・・」
「そうでしたか・・」
私は素直に納得した・・実際、封印を強化していた時に、封印が崩壊しているのを目にしていたし、連鎖崩壊が起きるかも知れないと思ったからだ・・ただ私は凄く疲れてしまった・・この1日での急激な環境の変化に加え、感情が大きく上下した事で魂が抜けたような・・ふらふらとベッドに向かい帽子とローブのまま布団の中へ・・
サナの様子を見て優衣が心配したのか
「サナ、あなたは凄く勇敢だったわよ・・」
「ありがとうございます。優衣さん・・」
するとアンナも心配して
「私があなたの立場なら絶対逃げてたわ・・」
「そうですか・・」
「もし封印の連鎖崩壊が起きたとしてもサナ、あなたが居れば心強いわ・・」
アカネも声を掛けるとサナが布団から顔を出し
「次に連鎖崩壊が起きた時は、逃げさせてもらいます・・」
「サナ・・」
その後、メリルおばさんが契約してくれる魔女を見付け、私は1週間程で人間界に戻る事に・・結局、私が魔界にいた時に連鎖崩壊は起きなかった・・
1週間振りに住み慣れた村に戻って来た私・・何だか、少し大人になったような・・とても懐かしく感じた・・
ここは人里離れた魔女の村・・まだ幼い私は、皆から魔法少女と呼ばれていたけど、魔界から帰って来た私を誰も魔法少女と呼ばなくなっていた・・
(終わり)




