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第八話「亜弥子の決闘」

 武器庫に近づけば近づくほど、自ずと僕達の間にも緊迫した空気が流れ、全員が口数を減らした。僕も、一歩一歩敵に近づいていくと思うと足が竦む。隣にいる亜弥子は僕にも聞こえない程の小さな声で何かを呟いている。亜弥子に何を言っているのかと尋ねようと思った瞬間、

「優、ここらへんか?」仙静旅帥が僕に尋ねた。

「ここらへんの地下です。入口が確かこの近くにあったはずですけど…」そういえば、昨日は簡単に見つけれたのに、今日はなかなか見つからない。暫く入口を探していたが、それらしいものは一切見当たらなかった。

「まさか、僕達の気配を察知して、入口を封鎖したとか、、、」聖が言った。

「そうなれば、探すのは困難だ。どうすればいいと思う?」神功旅帥が僕達に尋ねた。

「もしかして、これのことか?」音羽隊正が言った。

「何か見えたか?」

「目視では確認出来ませんが、明らかに何かを隠しているものと思われるものがあります。」音羽隊正は、魔力探知を視覚的に捉えているのか。まさか、音羽隊正はあの一族の末裔なのか。でも、あの一族の子孫が今でも生き残っていてしかも、闇の魔術局にいるわけないよな。僕は、小声で恐る恐る音羽隊正に尋ねた。

「あの~。音羽隊正ってもしかして、祗園一族の末裔だったりします…?」

「鋭い洞察だな、優。その年で、祗園一族の特性をも把握しているのか。やっぱり、俺の見込んだ子だな。」音羽隊正は、少し誇らしげに言った。

「実の所、このことは誰にも話していない。それに、誰にも話すつもりはない。君はそれを、出会ってから一週間ちょっとで気付いたか。」音羽隊正の表情が少し険しくなった。

「僕は誰にも言いませんよ。」

「それは、有難いな。頼んだぞ。」

「「お~い、入口が開いたぞ!」」仙静旅帥と神功旅帥が言った。入口は人一人がやっと通れる程にまで崩れていたが、意外と中は元々の地下鉄の駅と何ら変わりなかった。空気中に異常な程の強い魔力が漂っているのを除けばだが。ホームへと続く階段を下りると、そこにはホームではなく長い長い回廊が続いていた。

「結構、遠いのね。」雲月隊正がもらした。

「逆に、何にも無いと罠に警戒しちまうなぁ。」神功旅帥も少し起源が悪そうだ。回廊は思ったよりも長かった。

「これ、きっと水の都の外に出たんじゃないですか?」聖が言った。

「まあ、愚痴る気持ちも分かるが、このくらいの距離だし、しかも水の都の中心部に入口はあったんだから、水の都の外まで地下トンネルを繋げるという意思は敵にはないだろう。」さすが、仙静旅帥。説明が理に叶っている。地下トンネルを数㎞ほど進むと、行く手には分かれ道が見えた。

「ここからは、手分けして進もう。俺と仙静は、左の道に。音羽と雲月は、前の道に。そこの、入口が狭いところは俺達じゃ入れないから優と亜弥子と聖で行ってくれ。」右の方の道は、入口が狭すぎる。一瞬、猫用の通路かと思ってしまう。入口を潜り抜けても、細いパイプのような通路は続く。

「痛、頭打った。」

「ちょっと、優。声が大きい。」

「ごめん。」数分進むと立って歩ける所に来た。周りが明るいので、少しほっとした。

「やっぱり、この道から進んでくる奴もいたか。」目の前に、細身で背の高い男が現れた。

「何しに来た?このクソガキどもが!」ものすごい剣幕で男は睨んでくる。

「風巫疾刃一閃!」たった一回の呪詛で、聖が吹っ飛んだ。聖は、血みどろの状態でそこに横たわっていた。

「金巫鋼斧落!」僕は、本能的に叫んでいた。命中すれば、相手を殺してしまう程の魔法だ。だが、相手には効かなかった。

「火巫火之迦具土神召喚演舞…」この建物は、火に弱いはずだ。

「水巫火術能却…」反対呪文だ。一体どうすればいいのだろうか。

「電巫雷神降誕聖域発動!」

「音巫超鼓炸!」

「妖巫魔力封鎖!」何をやっても相手には効かない。

「ここは、私に任せて。」亜弥子が言った。

「六道家に伝来せし術を使いしことを開祖に告げる。我此処に守るべき者あり、力を我に与えよ…」亜弥子が呟いていたのはこれのことか。黒法師家にもこういうような術はあるが、これは呪詛を言い始めてから発動するまで一時間くらいかかるから、こういう戦いには向いていない。亜弥子は、それを予知して予め、呪詛の前文を唱えていたのか。本当に亜弥子がいて助かった。

「六道巫飛車転韋駄刃臨界霊再蘇!」亜弥子の魔術は、この広大な地下鉄の駅を丸々一個吹き飛ばしてしまって、上を見れば、空が見える。向こうには、大人達の姿も見える。亜弥子がここまで強いとは思わなかった。これからは、亜弥子に逆らわないようにしなければ。

「誰がこんなことをやったんだ!」大人達は唖然としていた。

「私ですけど…」

「君は、俺が想像した以上どころか、数十年に一度の逸材を発掘したみたいだ。多分、今回の亜弥子ちゃんの軍功からすると早速士官に昇格できるかもしれないな。」音羽隊正は興奮して言った。

「でも、一人でよく水の都を占領できましたね。こいつ。」僕は、気を失っている男に指差した。

「それより、聖は大丈夫なんですか?」

「このくらいなら、三十分もすれば目が覚めるわよ。気にしないで。」雲月さんが、怪我の治癒をしながら言った。

「この男を連れて行かなければならないな。」仙静旅帥が言った。

「まあ、これで一件落着ということで。」神功旅帥がうまくまとめると、僕達は闇の都へと帰っていった。

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