第二十五話「荊園、廼刹、翳鬼、そして華爛」
ユーロたちが黒法師領に到着したので、早速荊園を倒すための作戦を話し合った。
「六道家や神奈備家がついているのだから正攻法でいい。」
と主張する聖や神奈備桃子、
「荊園はこれまで黒法師家を牛耳っていた奴だからこの地で戦うにはまず相手を崩すことから。」
と主張する葉竹姉妹と、
「荊園の勢力を魔国の中で孤立させて自滅を待つ。」
と主帳するユーロや剣などの六国の面々。当然のことながら議論は難航した。最終決定は黒法師家当主である僕がすることになりそうなのだが、どの案も一長一短ありなかなか決められない。
そして、数日が経ち、事態は思いも寄らない方向へと進んだ。作戦をなかなか決められずに迷っていた矢先、手向が黒法師城にやってきて、
「華爛の動向がおかしいのです。」
と告げた。それまでは自分達が有利な形勢だったが、荊園と華爛に挟まれては迂闊に行動できなくなってしまう。僕は、咄嗟に、
「荊園を倒してから華爛の方を何とかする。」
と言った。当然、華爛の方が勢力は強いしすぐに魔国を攻めれる準備が出来ているのでまずは華爛から対策を打つべきだ、と雷や浄階から諫められた。
「なんで荊園からなんだ?」
「荊園は完全に倒すことが出来るかもしれないが、華爛を完全に倒すことはほぼ不可能だ。もし荊園を倒したら、残りの敵は華爛だけになる。」
「じゃあ、お前を信じるよ。そのかわり絶対成功しろよ。」
さらに数日後、僕は指令を出した。
①聖と桃子は直接荊園の本拠地へ
②ユーロと剣と雷は御饌津山から荊園領へ
③幽羅と焔摩は黒法師城の周辺の防御
④風伯と浄階と鴉は六道領から華爛へ
⑤青龍火長と白虎火長は念のため翳鬼と廼刹が潜む神奈備領東北部の防御へ
⑥玄武火長と朱雀火長は六道領の防御
⑦畝傍さんと高円さんと手向さんは魔国府の統率
⑧飛梅と太宰は天神山の防御
⑨夜叉丸火長と良岑火長は僕と共に魔国・荊園領・華爛の三国の国境地帯へ
⑩珊瑚さんと亜弥子は南路を通って華爛へ
そして、僕が⑨班と一緒に三国の国境地帯で指揮を執る。これまでも水都事件や翳鬼事件、鴉逮捕事件など様々なトラブルに巻き込まれてきたが、今回が多分一番緊張するだろう。
「では、みなさん。それぞれの持ち場へついてください。」
この一言はもう後には戻れないということを意味するのだ。僕はこの一言を言うのにどれだけ勇気を振り絞ったのか自分でも分からなかった。