第二話「御饌津の出会い」
亜弥子との生活もそろそろ一週間が経とうとした。彼女と出会ってからは毎日が少し意味のあるように思えてきた。僕達が住んでいる所は、黒法師領の北端にある御饌津山の北で闇の都の南端だ。御饌津というのは神様の名前だと聞いた事があるような気がする。この山は神聖な山らしいので、至る所に大小様々な神社がある。その中でも黒法師・六道両家の氏神である御饌津大社に何か自分達の一族を殺した犯人の手がかりをつかめるかもしれないと思って、二人で行ってみた。日中でも鬱蒼と茂る木々のせいで薄暗い。こんな所には絶対夜行きたくないと心の中で思いながら参道を進んで行った。
黒法師領にある所為か、参拝客の姿は見えないはずだ。しかし、本殿へと続く無人の階段を上った先には一人の男が経っていた。
「こんな所で君達は何をしているんだい?」男は僕達に話しかけた。男は二十歳ぐらいで、どこか落ち着いたオーラが出ていた。しかし、黒法師領で見る人間ではない。
「あなたこそここで何をしているんですか?黒法師領には、普通外部の人間が入ってくる事なんて無いのに。」
「今は普通の状況じゃないんだ。今、闇の国は水の国と一戦交えようとしている。だから、君達が必要なんだ。」
「なぜ僕達が必要なんですか?」
「隠そうとしても無駄。君は黒法師家の人間だろ。黒法師家の人間なら君くらいの年でも、相当の魔法が使えるはずだ。そして、君は…。」男は亜弥子にも話しかけた。
「私ですか?」亜弥子は少し驚いた様子だった。
「なぜか、六道家の人間である君が敵地である黒法師領にいる。君がここにいるということは、六道家に何かあったんだろう?」この男、意外と侮れない。敵意はなさそうなので、僕と亜弥子は今の黒法師家と六道家の状況について語った。
「なんで、君はここに留まっているんだ?ここはもはや安全では無い。ここにいるくらいなら一旦闇の都に来ないか?」
「ここより闇の都の方が安全な訳…」
「ここを守護する黒法師家が君だけなら、もし君に何かあってもどうすることもできない。君達の素性は誰にも言わないから闇の都に来ないか。もし闇の都へ来る気があるならここへ行けばいい。」男はそう言い残すと、次の瞬間消えていた。
しばらく、僕達はそこに立ちつくしていた。男の言ったことは、決して間違ってはいない。ここに残ってもいつ殺されるか分からない。躊躇う理由なんてなかったが、生まれてからずっと暮らしてきたこの土地を離れる決心はなかなかつかなかった。
「亜弥子は闇の都へ行った方がいいと思う?」
「私は、魔国六道領を出た。また戻ってくる気があるなら、いったん行った方がいいと思う。また戻れると思えばここを発つのは決して難しい選択じゃないと思うよ。」彼女は自信満々に言った。
「じゃあ、明日闇の都へ行こう。」こうして、僕と亜弥子は闇の都へ行くことになった。
次の日の早朝、闇の都へと旅立った。旅立つといっても大袈裟なもので、御饌津山を越えればすぐ闇の都には着く。しかし僕は初めて黒法師領外へ出るので期待度はかなり高かった。御饌津山はそう大きくないので、あっという間に山を越えてしまった。
「これが、闇の都か。。。」僕は思わず建ち並ぶ高層ビルを見て息を呑んだ。
「ここはほんの一角に過ぎないらしいよ。」亜弥子は僕にそういった。闇の都についてからは、男が教えてくれた場所に行くのはなんの造作もなかった。そこは、闇の都でも群を抜いて巨大なビルだった。僕と亜弥子はドアをくぐった。