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第十六話「祗園泰臥」

 闇都国立医術院。世界でも最先端の医療を受けることが出来る医療施設である。その十三階、魔術科の病室の最奥部の1399号室に祗園泰臥の病室はあった。闇都国立医術院総力を挙げても治療法が分からない呪詛のために泰臥は苦しんでいた。

「なぜ、僕を呼んだのですか?」僕は賢心氏に訊いた。

「かねてから音羽に君の話は聞いていた。君は黒法師家の末裔、しかも当主らしい。君の家に伝わる医療魔術で何か泰臥にできることはないかね。勿論、一族の極秘事項というのなら決して無理にやらなくてもいい。」

「救える人がいるのにそれを放っておくようなことの方が我々一族の恥です。使ってこその医療魔術なのですから、僕に出来ることがあれば何でもします。」言い終わるか言い終わらない内に賢心氏は歓喜に溢れていた。

 泰臥の症状は、呪詛による肉体的障害だ。しかもかなり重症の。

「あくまでも成功するかどうかは分かりませんが、早速治療に取り掛かりたいと思います。」僕は賢心氏に言うと、医術院の医師とともに治療室に入った。

 治療開始三時間が経過したころ、治療が山場を迎えた。下準備が整い、呪詛解除を行う段階だ。

「魔巫呪詛解除。」泰臥は何も反応しない。賢心氏が入ってきて、

「どうでしたか?成功しましたか?」と僕に尋ねた。

「今の段階では分かりませんが、少なからず症状は軽減したと思います。意識の回復は数日以内に必ずすると思います。」

「ありがとう。大変だったろう。何も報酬を与えられなくてすまなかった。」



 その頃、魔国黒法師領では黒衣聖による抜本的な内政改革が行われていた。聖は、僕の留守の間当主の代理をしてくれている。僕からの伝言を受け取った聖は、

「音羽隊正に、神功旅帥、そして仙静旅帥が殉職したのか。」感慨に耽っていると、

「聖様、東部の警護の件でございますが。」

「飛梅と太宰か。どうした。」

「天神山で国境警備をしておりますと、昨今六道家と神奈備家の方から使者が参りまして、黒法師家の者に面会したいと申しております。お会いになられますか?」

「六道家と神奈備家から使者か。連れてきてくれないか?」そう言うと、控えの間から三人の男女が出てきた。

「私は、六道家に仕えております畝傍と申します。」

「私は、神奈備家に仕えております高円(たかまと)でございます。」

「それがしは、使者の護衛を仕りました手向であります。」と、三人が三者三様の挨拶をした。

「何の用件でここまで来られた?」聖が尋ねた。

「実は、六道家・神奈備家共に黒法師家に敵意はございません故に、御三家間の国交を諮りに我々は参りました。」

「二千年以上も国交がなかったのです。今更国交を結ばなくて困るようなことはございません。」黒法師家の関白黒衣荊園(くろいけいえん)が聖に耳打ちした。荊園は、黒衣姓を名乗っていて先祖は黒法師家の人間なのだが当主がまだ子供ということにつけこんで権力を握っている。聖も僕と同様、荊園を嫌っていたので、

「このようなことは当主に報告しなければならないのではないのか、荊園。」と、四十以上年の離れた荊園を叱った。

「長旅の中申し訳ないが、当主のご意見を聞くまでは返答できませぬ。しばらくは、黒法師領内に留まって下さらないか。」と、その日は客を返した。

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