表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イデアリスの光  作者: 無名記録官
2/3

戦乱の予兆

 「帝国」、再生暦の時代である今日において、大陸東部に位置する大国である。建国より数百年、皇帝を君主とする帝政を取り、歴代政権の内政と国軍の整備の結果、彼の国は周辺国を圧倒する国力を持つに至った。

 

 彼の国は数十年前からは拡大政策を採り。大陸東部とその周辺の島々から大陸中央部に広がる山脈までその勢力を伸ばした。

 

 そしてついに十数年前、大陸西部の大国、「共和国」と山脈中央部の平原地帯にて国境を接することとなり、両国間の官民双方の交流が開始された。そして同時に、国境紛争も時として起こるようになった。


 両国の関係は多少の紛争こそあったが、概ね友好的なものであった。しかし再生暦623年、両国間にある紛争が発生する。この一つの局地戦が、歴史の大きな転換点となると、この時はまだ、誰も知らない。

…………………………………


 帝国西部の都市「陽砂関」、帝国西部に広がる砂漠と草原が複雑に入り組んだ地域の中にあって、付近を流れる河川群によってもたらされた穀倉地帯の中心地として繁栄する大都市であり、帝国西部の交通網の要衝である。恵まれた地理的要因から農業と交易により繁栄を享受しており、それ故に帝国西部の政治と軍事を管轄する西域大都督府が設置されている。


 夜、街の多くの家が灯りを消し、皆が眠りにつく頃、一人の少年が、大都督府の窓から星を眺めていた。


「ここにいたのですか、大都督。」


 ふと後ろから少女の声が聞こえてくる。彼は視線を自分を呼ぶその声の主に向けた。


「星を眺めるにはここがいいからな。」


 彼はもう一度、名残惜しそうに夜空を一瞥した後、少女にその若葉色の瞳を向ける。


「ところでどうした、我が妹よ?武装して夜中にわざわざ探しにきたんだ。何があったんだ?」


 彼女は夜分遅いというのに、武装を身につけていた。帝国軍の将校である彼女が夜中に軍人として上官である自分を探していた。その事実は緊急事態を意味する。少年は彼の妹に報告を促す。


「先程西部国境の諜報部隊より伝令が来ました。十日前より国境付近の大規模な共和国軍部隊に、中央政府からの作戦遂行指令が届き、作戦準備に入ったとのことです。」


 少女がもたらした報告は、共和国軍の活発化を示すものだった。帝国西部の政治と軍事を管轄する大都督たる彼には対応する義務がある。

  

「共和国が国境付近で軍を動かそうとしているのか。部隊の規模と練度は?作戦の詳細はどの様なものだ?」


 彼は端正な顔を少し顰めながらも矢継ぎ早に確認を続ける。共和国の大規模な部隊に指令が届くということは、その規模の部隊が何らかしらの軍事行動を起こすということである。つまり、大国間の国境で緊張状態の発生につながりかねないのだ。対応を少しでも間違えたら、全面戦争に発展しかねない事態である。穏便に事態を解決する為には、まず状況を理解する必要がある。


「共和国の国境付近にて騎兵七千を含む十万の規模の部隊の各級指揮官に命令が発せられたそうです。少数の国境守備隊と、中央より派遣された部隊の混成のようです。どちらも練度の高い部隊で、情報を総合すると、帝国西部全域への戦略的な攻勢作戦のようですね。」


 少女の報告は、少年に更なる苦悩をもたらした。


「それは随分と大掛かりだな。」

 

 事態はかなり悪い。相手の部隊の規模と行動を考えれば、共和国軍は威圧ではなく侵攻を断固として決意していることはすぐ分かる。状況を鑑みてもら情報戦や交渉での状況打開は困難を極める。最早戦闘が避けられないところまで来ているらしい。彼は少しの間の思案の後、決然と目を開き、命令を発した。


「国境付近の部隊に伝令を送れ。可能なら防衛を、それが不可能ならば遅延戦闘を命ずる。私が直轄部隊とともに救援に行く。それまで持久戦を展開せよ。情報収集と分析も怠るな。何か新しい情報があれば、逐一私に報告せよ。」


「はっ!」


 自分が直接指揮を取り、紛争とその影響を最小限のものとする。それが彼の決断だった。上官の命令を遂行するために、少女は即座に踵を返して歩き出す。


「ああもう一つ。」


 少女が呼び止める声に反応して振り返ると、彼女の兄は穏やかに微笑みながらこう付け加えた。


「俺の幕僚も全員出撃だ。森宮(あかり)将軍、貴官も準備を整えてくれ。」


「はっ!」


 了解の意を示してから、灯ははたと気づく。

 

(どうやら、兄さんは私をからかっているらしい。緊迫した状況に少し緊張していたのだなぁ。)


 そう考えた彼女は微笑みと共に兄に返答をした。


「了解しました。森宮明人(あきと)将軍。」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 設定の説明が長すぎた……以後気をつけます。設定は物語本編以外でもまとめたものを出してもいいかなと思っています。何か希望がございましたら、感想等などで伝えてください。なるべく対応します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ