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伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き  作者: 実川えむ
第2章 初めてのケモミミ!?
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第7話

 玄関のドアを勢いよく開けると、すでに馬を用意しおえた厩舎の者が、私の格好を見て驚いて固まっている。目の前には、全身は黒毛、鼻筋には白い毛のはえたスラリとした馬が立っている。なかなかの美男子に、思わず笑みが零れる。


「ありがとう。この子の名前は?」

「え、あ、シャイニングスターです」

「そう、んー、ちょっと長いわね。シャイ、それでいいかしら」


 私の問いかけに、シャイニングスターはブルルッと返事を返した。

 タイミングよく、キャサリンも馬に乗って現れる。彼女のは栗毛のガッチリしたタイプだ。

 私は勢いよくシャイの背に跨る。


「おおおお」


 なぜか玄関前に集まった使用人たちから、歓声があがる。こんな時間になっても、皆、起きて仕事してるのね。改めてそれに気付かされる。隣の屋敷とは少し離れているとはいえ、夜も遅いから、あんまり騒いで欲しくないんだけど。


「お、お嬢様っ」


 使用人たちの後ろから、ぽっちゃりした体型の料理長のコトスが、大きめな籠を差し出してきた。


「ど、どうか、これをお持ちになってください」

「コトス、これは」

「は、は、伯爵様のお夜食にございます」

「な、コ、コトス、儂の夜食じゃと!」

「い、いいではございませんかっ! 伯爵様のは後でまた作りますから!」

「そ、そうではない! 馬上のメイリンに、その荷物は無理じゃ、と言いたかったんじゃ!」

「あっ」


 二人のやりとりに、思わず笑ってしまいそうになる。私は、お祖父様の言葉を気にせず、コトスの差し出された籠を受け取り、マジックボックスの中に放り込んだ。


「おおお!」


 再びのどよめきに、苦笑い。前のメイリンだった時は、まともに魔法など使ったことはなかった。何せ、未来の王妃。魔法を学ぶことよりもお妃教育のほうが優先されたのだ。

 すっかり忘れていたけれど、これは、まだ辺境にいた頃に、母から教育を受けたもの。

 王都に来てからはまったく使ったことがなかったから、このマジックボックスの中は空っぽ状態のはずだ。こうして記憶が戻ったからこそ、この能力の便利さがわかるもの。


「メイリンッ!?」


 あ、お祖父様が驚いている。そういえば母からは内緒にしておけ、と、かなり昔に言われてた記憶が。


「まぁ、そういうことで」

「ど、どういうことだ!」

「お祖父様、時間がありません。コトス、後でお祖父様の夜食、頼みましたよ。もう、参ります。では、お先に!」


 ハァッ! と気合を入れてシャイに鞭をいれ、私たちは屋敷を飛び出した。


「なんとまぁ……あれは本当にメイリンか?……まるで別人のようだな」


 お祖父様の呆れたように呟いた言葉は、私の耳には届かなかった。


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