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伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き  作者: 実川えむ
第10章 やっぱり、ケダモノよりもケモミミが好き

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第66話

 実は、おじいさまと母様、二人とも国境の砦の方へと視察に向かっている。スタンピードの後始末の確認だ。

 なにせ、撃ち漏らした魔物たちの多くが国境まで流れ込み、堅牢な防御壁の一部が破壊されたのだ。

 お祖父様を狙った犯人がナディス王国と通じていた疑惑が濃くなったのは、この防御壁の破壊のタイミングで、ナディス王国の兵士が紛れこもうとしていたから。

 しかし予想に反して、魔物の数と勢い(こちらが上手く誘導したというのもあるらしい)に、ナディス王国側で待ち構えていた兵士たちがことごとく飲み込まれていった。

 まさかの『ざまぁ』である。


 その破壊された防御壁の修復と残っている魔物の討伐に、かなりの時間がかかり、完了した報告が届いたのがつい先日。その確認に二人は向かったわけなのだ。

 彼らが戻ってくるのは、1週間ほど後の予定。その間、私が母様付きの執事のドナルドの助けを借りながら、領主の仕事をこなすことになっていた。

 早いところ、爵位をお祖父様からルドルフ叔父さんに代わって欲しいもんだ。


 王太子が待っているであろう応接室に向かって歩く私の肩には、小さな女の子の精霊が肩に乗っている。


『メイリン、嫌な臭いがするわ』

「え、どんな臭い? フーカ」


 鼻にしわをよせる彼女。可愛らしい顔が台無しだ。

 そう、彼女はあの緑の光の玉だった精霊。なんと、妖精みたいに人型をとるようになったのだ。びっくりである。思わずミーシャに問い合わせたら、彼女も驚いて、調べてくれた。


 ……どうも、私、魔力駄々洩れらしい。


 いや、今までは体内で循環するだけで済んでいたのが、おそらく、『守護の枝』を使ったことで、その循環の回路が壊れたのかも、とのこと。それに魔力量も一気に増えて、それに影響を受けたのではないか……というのだ。

 つい可愛くて名前をつけてしまったことが、契約したのも同然なのだとか。それも一因かもと言われてしまった。

 その上、『守護の枝』を使ったことで、精霊魔法が使えるようになってしまった。他の攻撃魔法は、まったく使えないのに。なんでだ。


『う~ん、獣臭い?』

「獣? それ、へリウスじゃないの?」


 最近は、冒険者として数人、街の方にいるのは聞いているけれど、この城内にいる獣人は、今はへリウスしかいない。


『うん? へリウスの匂いなら、私覚えてる。それとは違う。なんか、臭いの』

「……わかったわ。それ、へリウスに伝えてきてくれる?」

『大丈夫、へリウス、すぐ来る』

「……あっそ」


 私の後ろを歩いていたキャサリンが、クスッと笑った。つられて私も。


「メイ!」


 フーカの言葉通り、私たちの後ろに、怖い顔をしたへリウスが現れた。

 へリウスレーダー、敵を察知した模様です。


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