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伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き  作者: 実川えむ
第7章 力強い味方が現れたようです

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閑話:冒険者パティ(2)

 街に入ってから間もなく、メイリンたちが離れて行ったことに、いち早く気付いたのはパティだった。ヘリウスは顔見知りに挨拶するので手一杯で、メイリンたちに意識がむく余裕はない。それにほくそ笑むパティ。


 ――勝手に離れて行ってくれるなら、それに越したことはない。


 パティは何食わぬ顔で、ヘリウスにしがみついて歩いていく。

 宿屋はいつもの定宿。ヘリウスの顔を見ただけで、決まった部屋に案内される。そしてパーティメンバーも、それぞれの個室を宛がわれる。

 宿のカウンターのところでローが気付く。


「おい、お嬢さんたちはどうした」

「あ、ついてきてないか?」


 その後についてきていたハイドが、声をあげて後ろを振り向くが、当然、彼女たちの姿はない。


「途中ではぐれたか」

「くそっ、迷子かよ」


 慌てたハイドたちの声に、部屋に向かおうと階段を上っていたいたヘリウスが振り向く。


「どうした」

「悪い、ヘリウス。お嬢さんたちがはぐれたようだ」

「なんだとっ!?」


 普段は見せない焦った様子に、パティの胸が痛んだ。自分がいなくなっても、同じように慌てたりするのだろうか、と。

 ヘリウスは宿のことをローたちに任せて飛び出していくが、パティは追いかける気力が湧かなかった。あんなヘリウスを見ていられなかったからだ。


                 * * *


 しばらくして、ヘリウスがぐったりしたメイリンを抱えて戻って来た。彼の後を護衛のキャサリンが荷物を抱えながら、青白い顔をしたままついてきている。

 無言のまま、ヘリウスは自分の部屋へとメイリンを連れ込んだ。キャサリンは最初、それを止めようとしたが、ヘリウスにギラリと睨みつけられ、その威圧に屈して、何も言えなくなった。


「お前はパティと同じ部屋で待ってろ」


 勢いよくドアが閉められる。その場はローとハイドの二人が、張り付いて護衛のように立っている。


「……くっ!」


 悔しそうにヘリウスのドアを睨むキャサリン。

 パティはドアの隙間から、その様子を窺っていた。そして、酷く傷ついた。ヘリウスの纏う空気が、すでに番を得た者と同じものに変わっていたからだ。本来なら、ああなると獣人は我慢が出来なくなる。すぐにでも番になろうとする。

 しかし、パティはヘリウスの性格を嫌というほど知っていた。

 決して無理強いするような男ではないことも、忍耐強いということも。

 そして、あんなにも愛し気にメイリンを抱きかかえ見つめる姿に、パティは絶望感を覚えた。それが自分に向けられたことのない視線だということを思い知らされる。

 ヘリウスの部屋の前に固まる連中を横目に、パティはするりと部屋を抜け出す。

 そんなパティのことを、誰も気付かない。


 宿を出て、しばらく街中の人の流れに身を任せる。目には薄っすらと涙を浮かべながら。

 そして、ずっと考えていたことを、行動に移す時だと、確信する。涙を拭った後に現れた昏い目が、パティのこの先の道を見つめている。


「……あの女の居場所を、売ってやる」


 これから先は、ウルトガの王都に向かうとヘリウスから言われていた。メイリンたちがそこから別の所に移動する予定だとも聞いていた。その行先がゴードン辺境伯領だということも。

 その情報を……トーレス王国の連中に伝えれば、メイリンは再び追手の元に連れ戻されるに違いない。早く伝えれば、伝えるほど、彼らも先回りが出来るだろう。

 ニヤリと口元に嫌な嗤いを浮かべる。


「駄目なら、私が殺すだけ……ヘリウスの隣は私のもの……誰にも渡さない……」


 ブツブツと呟きながら、パティは暗闇の中へと消えていった。


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