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伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き  作者: 実川えむ
第7章 力強い味方が現れたようです

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第43話

 そして、やはり獣人同士というのはスキンシップが多いらしい。

 それが相手が人族となると、逆に気を遣うモードに入るらしいんだけど。私は宿屋でのことを思い出し、白い目になる。


「全然、気を使われてなかったと思うけど」

「メイ、番には無理だ」


 パコーンッ


「言い切るな」

「ミーシャ!?」

「まずは、メイリンの話を聞け」


 そして、私は思い出し、目を瞑る。


「例え、獣人同士のスキンシップが多かろうとも、そういう世話をしてやっていたのであろうとも、番……人族でいうなら、恋人や妻になるような相手に見せつけるようなものでは、ないのでは?」

「み、見せつけるなど、あれは子供の頃から面倒を見ていてだな……それに」


 困惑気味に言い訳するヘリウスに最後まで言わせずに、私は白い眼を向ける。


「あの猫女が、どんだけ貴方にまとわりついても、剥がしもしないし、私の方を振り向きもしなかった。しかも、あの猫女は私たちに向かって不遜な態度をとっていたというのに、注意もしない。不愉快を感じさせるには十分でしたわ。はっきり言って、私には、貴方は護衛ではなく、単に飲み屋の女を連れて歩いてるだけにしか見えませんでしたわ」


 私の言葉に、部屋の中は無音になる。


「さてと、ヘリウス」

「……」

「その猫女は、今はどこに」

「……あ、ああ、宿では隣の部屋にいたはずだが」

「あんなに騒いでたのに、顔も出さなかったけど」

「寝てただけじゃ」

「……斥候なのに?」


 思わず、ヘリウスの言葉に、言い返してしまう。


「斥候って、敵を見つけたりするのに、敏感なんじゃないの」

「そりゃ、そうだが……ちょっと待て」


 ヘリウスがどこかに伝達の陣で小さなメモを送った。すぐに返事がきたと同時に、ヘリウスは驚いたように目を見開く。


「なんだって」

「……昨夜からいないらしい」

「昨夜って」

「最初に宿に着いた時には一緒にいたんだ。メイを俺の部屋に連れていった時、キャサリンには、パティと同じ部屋に行くように言ったんだが」

「キャサリンに確認する」


 母が立ち上がり、外にいる誰かと話をしている。

 ……キャサリンか。彼女に向かって放った言葉を思い出し、私は少しだけ後悔する。それでも、彼らに私を渡した彼女を、まだ許すことはできない。


「キャサリンは知らないと言ってるな。言われた部屋には結局入らなかったらしい」

「なんだと」

「お前が信用ならなくて、外で警護していたんだと。証人はお前のパーティメンバーの男たちだ」


 母の言葉に、ヘリウスは悔し気。


「パティはどこに行ったのかしらね……まさか、トーレスの王都になんて、馬鹿なこと、してないといいんだけど」

「そんなはずは」


 言葉を重ねて言う母に、否定しようとするヘリウス。必死に猫女を庇おうとしている姿に、再び、怒りが湧き上がってくる。


「……ないって言える? あれだけヘリウスに執着してたのよ。所詮、アレも女ってことよね。仕事よりも、ヘリウスを想う気持ちを取ったってことじゃないの? ああ、嫌だ、嫌だ」

「メイリンちゃん……ちょっと、落ち着こうか」

「ミーシャだって、そう思うでしょ? そもそも、40にもなる男が、10代の娘に手を出すとか、ロリコンよ、ロリコンッ!」


 叫ぶ私の最後の言葉に、母とヘリウスは首を傾げ、ミーシャはピシリと固まった。

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