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伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き  作者: 実川えむ
第1章 私の方から、婚約破棄ですわ
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第4話

 父、アーサー・オル・トーレスはスタール侯爵の次男として引き取られ、アーサー・ド・スタールと名乗るようになる。しかし、あまり、よい待遇ではなかったようだ。

 現に、隣国との戦争が勃発した時には、マリアンヌの父である長兄の代わりに、前線へと送り出されたくらいだもの。ただ、そのお陰で私の母、ファリア・フォン・ゴードンと出会えたんだけど。

 戦場で傷ついた父を守りながら戦う母、とかいうのは、映画のワンシーンになりそうだけど、なかなか、そんないい話ではなかったようだ。

 実際、父は片足を失い、二度と戦えない身体になってしまったし、母は母で、お祖父様に二人の付き合いを猛反対されたとか。

 そこでへこたれない母は、父を連れて逃げちゃったらしい。どっちが騎士でどっちがお姫様だよ、って思うよね。


 結局、父は私が産まれて1年しないうちに亡くなり、母一人子一人になったところで、ようやくお祖父様に見つけられて、連れ戻されたという。

 今にして思えば、お祖父様も、相手が元王子ってわかってたから反対してたのかもしれない。王家絡みで巻き込まれるのが、目に見えていたのだろう。

 そして、その通りに、当時10才の私は王家に見出されてしまう。


 王家のゴシップ(側妃溺愛)は貴族であれば誰でもが言っている話。幼い私ですら知っていたのだ。どんだけ、である。

 ゴードン辺境伯家は、お祖父様も、今は亡きお祖母様を溺愛していたし、次期辺境伯である叔父様も奥様ただ一人。

 そして母も未だに亡くなった父を愛していて再婚話は、ことごとく断っている。

 そんな一夫一婦制を体現している我が家が、当然の条件として王家に対して出したもの。


『側妃は結婚から10年間は置かない。10年の間に王子が産まれなかった場合のみ、側妃を認める』


 あの国王の息子だ。そんなの無理だろう、と思われたけれど、それでもいいと言われ、あくまでも婚約者候補としてなら、ということで受け入れることになる。

 あちらも必死だったろうし、辺境伯としてのお祖父様の力も強かったからだと思う。


 そして、わざわざ王都にやってきたのは、王都の学校に通うことになる12歳の時。

 そこで、従姉のマリアンヌ・ド・スタールと初めて出会うこととなる。

 二つ上のマリアンヌは一人娘だったせいか、私を妹のように扱ってたつもりだったようだが、今の私が考えてみれば、あれはただの玩具扱いだったと思う。

 そして、私が王太子の婚約者候補と知っていたからこそ、つきまとっていたと思われる。


 思い返してみれば、いくつも怪しいと思う出来事があった。

 私とアルフレッド王太子が学校で二人になりそうな時には、必ずと言っていいほどマリアンヌがついてまわっていたし、気が付けば学校内で、私抜きで二人で楽し気に話している場面が、何度となく目に入っていた。

 王城でのパーティでは、王太子は私の後は必ずマリアンヌと踊り続けていた。そう、()()()()()()()のだ。他の女性たちと変わることなく。 


 たぶん、婚約者候補であるメイリンが窘めなければいけなかったのかもしれない。

 しかしなぜか、当時のメイリン……私は、彼らに何も言えなかった。

 今の私からしたら、首を傾げたくなるのだけれど。


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