表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き  作者: 実川えむ
第3章 しつこい男は嫌われますわよ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/83

第15話

 ありがたいことに、さっき集まってきた住人の中にいたおばあさんが、私たちの会話に気付いて、声をかけてくれた。

 なんでも町はずれに、おばあさんの姪夫婦がやっている小さな宿があるという。親切なことに、一緒に宿まで連れて行ってくれるというので、多少の不安を感じながらもついていくと、言葉通りにこじんまりとした宿屋があった。


「ちょっとだけ、おまけしといてあげてな」


 去り際に姪っ子さんに声までかけてくれて、私たちは感謝の気持ちでいっぱいになった。

 一泊の宿代の相場がいくらなのか知らないけれど、朝夕の食事もついていた。運のいいことに、キャサリンが執事のポールから預かってきたお金でなんとかなったようで、ホッとした。

 案内された部屋は、けして広くはなかったが、私たち二人であれば十分だった。キャサリンは終始申し訳なさそうだったけれど、屋根があって雨風が防げて、その上ベッドがあれば御の字だ。


 一度、クリーンで身体を綺麗にしてから、マジックボックスからコトスがくれた籠を取り出す。空腹では、頭もまともに働かない。残っていた食べ物を手にしながら、私たち二人は、今後について相談することにした。

 まずは、私の身分証をなんとかしないといけない。毎回、町に入るたびにお金を払うとなると、我々の軍資金はあっという間に底をつくのが目に見えている。


「あの獣人は冒険者ギルドの身分証で入れたようですし、我々も冒険者ギルドに登録すれば、なんとかなるのではないでしょうか」


 キャサリンの声に、なるほど、と思ったけれど。


「それって、誰でも登録できるものなの?」


 資格試験みたいなものでもあるんだろうか、と不安になる。


「そうですね。よく子供の小遣い稼ぎにと登録している子がいるというのを聞いた覚えております」


 私の耳には入ってきていないのは、私がかなりの箱入りだったということかしら。こういう時、一般常識の欠如っていうのは痛い。


「キャサリンは登録してないの?」

「はぁ……私も一応、貴族の端くれですので……」

「あら。もしかして、貴族は登録してはいけないの?」

「いえ、そんなことはございません。他国には、王族で有名な冒険者の方もいらっしゃいます。我が国にも、貴族で冒険者をなさる方もいらっしゃいますが……けして多くはないかと」

「そういうものなのね……」


 むしろ、冒険者登録しておけば、貴族として思われないかもしれないってことかしら。

 外はまだ日が高い。この町に冒険者ギルドがあるなら、ここで登録してしまってもいいかもしれない。

 私たちは目を合わせると、小さく頷きあい、残り少ない食べ物を口の中に詰め込んだ。

 お祖父様が見てたら、貴族令嬢として、はしたない、と叱られたかもしれないけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ