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伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き  作者: 実川えむ
第2章 初めてのケモミミ!?
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第9話

 目が覚めると、すっかり日が昇っていて、飛び起きた。


「あ、お目覚めですか」

「キャサリン! なぜ起こさなかったのです!」

「お疲れのようでしたので」


 そう言ってキャサリンは拳大の固そうなパンと、干し肉を差し出してきた。


「これは?」

「村の者に分けてもらいました」

「ああ、それは申し訳ないことをしました……お金のほうは」

「大丈夫です。ちゃんと渡しております」


 ふと、村の者たちの視線を感じ、目を向けるとドアの隙間や、遠くからこちらを見ているようだ。私はキャサリンから食事を受け取ると、村人たちに掲げて見せてから、小さく頭を下げた。


「お嬢様、あの者たちに頭を下げるなど」

「いいのよ。今の私たちは、ただの旅人。施しを受ける側なの。ちゃんと感謝を示さねば」

「……はっ」


 私たちは木の下で座りながら食事をを取りつつ、キャサリンが集めてきた情報を確認する。

 この村は名前もないような小さな村らしく、地図にも載っていないらしい。

 ただ、王都の位置から考えると北にある村らしい。このまま北上していくと、獣人の国、ウルトガ王国に向かうことになる。

 お祖父様が治める辺境伯領は西側、ナディス王国と接しているところ。未だに小競り合いが続く国だ。獣人の国を経由して、というわけにはいかない。


「ウルトガ王国に行く手前には、モンテス伯爵領があったはず。そこの領都から西側へ向かう街道があるわよね」

「はっ。しかし、途中、山越えや魔の森もございます。私たち二人だけでは厳しいかと」

「そうよね……では、護衛を雇いましょうか」

「しかし、今は、金銭的に余力が……」

「うーん、どうしましょうね」


 二人で悩んでいると、突如、キャサリンの目の前に青い鳥が飛んできた。

 その鳥はキャサリンの肩先に止まると、ピピピッと鳴いて、ポトリとキャサリンの掌に何かを落とすと、スーッと消えて行った。それは小さな手紙のようだった。


「キャサリン?! これはっ」

「ああ、伝達の魔法陣です。お嬢様は、学校ではお習いになられませんでしたか」

「もしかして、魔術の教科でかしら……私、貴婦人クラスでは、魔法の授業を取らせてもらえなかったのよ。今思えば、なんで取らせて貰えなかったのか、不思議なんだけど」

「……普通、学校に入ったら、全員取るはずなんですけどね」

「……えぇぇぇ」


 こんな便利な魔法を教えてもらえないなんて……なんか、悪意を感じるのは私だけかしら。


「これは、ファリア様からですね……ん? 現在位置を知らせろ、とのことです。護衛の者を手配して迎えに来てくださるそうです」

「まぁ、お母様、さすがね……この伝達の魔法陣? どれくらいで伝わるのかしら」

「送ってすぐです。送るだけであれば、それほど魔力も使いませんし」

「わかったわ。とにかく、現在位置を知らせてちょうだい」

「かしこまりました」


 真剣な顔で手紙を書き始めたキャサリン。それなのに私は、固い干し肉を手で弄びながら、どうやったら噛み切れるのだろうかと悩んでいた。

 ごめんね、キャサリン。


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