第8話
前回のあらすじ
クロノイド制圧軍の地球での拠点ではクロノギアスへ乗り込む転送装置が運び込まれ、接続の終えた装置をゼシアが一人取扱説明書へと目を通す。
一方光は縁の不調に疑問を抱き、どうすればよかったのか考えているとクロノイド制圧軍による襲撃が起き、縁の事を考えるのを中断させられ、迎え撃つためにフォトンガードナーの基地へと向かった。
第三倉庫の中に隠されたエレベーターを用いてフォトンガードナーの基地へと駆け付けた二人は、それぞれのマシンの元へと向かい駆け抜ける。
格納庫へとたどり着いた光はすぐさまパイロットスーツに着替えフォトンランダーのコックピットへと飛び乗り発進準備を進めていると、司令部から平野の通信が入った。
「来たか!!光君!!」
「俺が見た時にはクロノドローンしか来てませんでしたけど、他に敵は!?」
「今の所はクロノドローンの編隊しか出現していない。今は縁が一人先行して掃討中、一人で全滅させかねない勢いだ!!」
「っ!一人先走りやがって……!」
「今の彼だと何時崩れるかは分からない……頼んだぞ!!」
現状クロノドローンしか確認されて無いとはいえ、明らかに不調な縁が一人先行している事に光は思わず舌打ちを打つ。平野も今の縁の状態は不味いと判断しているのか、通信越しに聞こえた光の舌打ちを咎める様なことはせず、むしろ急いで駆け付ける事を推奨する様な事を言う。
そんなやり取りをしていると格納庫正面のシャッターが開き、出撃用トンネル横の信号に赤の光が灯る。
「進路クリアー。フォトンランダー、発進!!」
「了解!!フォトンランダー、出るぞ!!」
平野のコールと共に信号が青になり、光は最初からアクセルをフルスロットルでトンネル内を走り抜ける。蛍光灯の照らすトンネルを十秒も経たずに走り抜けると外の光がフォトンランダーの機体を照らすが、すぐに上空からの影が覆い尽くす。上空では久遠の駆るフォトングライダーが、フォトンランダーに勝るとも劣らない速度で飛翔していた。
「久遠!!縁の奴が無茶してやがる!!急いで行くぞ!!」
「ああ!!」
光は縁が一人無茶な戦いをしている事を久遠へと告げ、急いで合流する旨を伝えると久遠もしっかりと頷き、互いにトップスピードで市街地へと向かって行く。
時空転移ゲートの真下では襲い来るクロノドローンの大群を相手に、フォトンファイターを駆る縁が大立ち回りを演じ尽く殲滅していた。
「っ……嘘だろ、こんなに……」
「無茶苦茶だ……!」
縁の大立ち回りで破壊されていったクロノドローンの残骸を目にしてその量に光達が舌を巻いていると、縁が疲弊したのかフォトンファイターの動きが止まり膝をつく。
そしてそれを逃がさんとばかりに残るクロノドローンの部隊がフォトンファイター目掛けてビームを放ち始めた。
「はぁ……はぁ……ぐぅ……っ!」
「っ!!マジか!!」
縁はそれに防御姿勢を取って耐えるが、普段であれば隙を突いて抜け出そうとする筈が疲弊している影響か動こうとしない。
それを見た光達は慌てて救援に向かい、フォトンファイター相手にビームを撃ち続けているクロノドローンの部隊に向かって行き、攻撃の準備を行う。
優先的にフォトンファイターを狙う様に命令を受けていたからか、クロノドローンはロックオンされるまで二機の存在に気付かずにフォトンファイターへと攻撃を続けており、自分がロックオンされていると気付いた時には時既に遅く、フォトンランダーよりパーティクルミサイルが全てのミサイルハッチより放たれ、フォトングライダーより放たれたパーティクルキャノンが直線上に並んだクロノドローン目掛けて飛来し、フォトンファイターへと攻撃を行っていたクロノドローンの大半を撃墜した。
「はぁ……はぁ……!」
「大丈夫か……って、案の定バテてんじゃねぇか!!先走んな!!」
散り散りに散開するクロノドローンを見て光がすぐさま縁の元へとフォトンランダーを走らせ通信を繋ぐと、縁の荒い息が聞こえてきて思わず怒鳴り散らが、そんな光に対して縁は歯を食い縛って強引に荒い息を抑えると、フォトンファイターを立ち上がらせて残るクロノドローンを掃討せんと光の前に出ようとする。
「あ!?おい!!」
「早々と蹴りをつければ……司令達の負担も無くなるんだ……だったら……!」
「おまっ!!それでお前が駄目になったら意味無いだろ!!」
縁は自分達のサポートで光平達司令部の皆が労力を使っているとして、早々と蹴りをつける事で解放しようとしているのを聞いて光は息を呑むが、それで縁が潰れたら意味が無いと言い返す。
それでも動きを止めようとしない縁を目にして光は頭を掻きむしると、久遠へと通信を繋ぐ。
「久遠」
「分かっている、そっちは頼んだぞ」
「おう」
短いやり取りなれど二人は意思疏通し、久遠は散り散りに散ったクロノドローン部隊の元へと飛翔して行き、光はコックピット横から操縦桿を引き出す。するとフォトンランダーが変形を始め、フォトングラストの下半身へと変形するや、光の操縦に合わせて下半身が動くと、動きの鈍ったフォトンファイターを蹴り倒した。
「ぐあっ……!?ひ、光……!?」
「いい加減にしろ!!何ムキになってんだ!!そういうのはむしろ俺の方だろ!!」
突然蹴り飛ばされた事に縁は驚きの声をあげるが、すぐさま放たれた光の叫びに気圧される。縁が気圧されている間にも光は立て続けに言葉を放つ。
「お前が何抱えてムキになってるのか知らねぇけどよ!!一人で無茶やって、どうこうなる訳ねぇだろ!!」
「っ……!よく一人で先走る君には言われたく無い!!それにわざわざ蹴る必要だって無いだろ!!」
「そうしなきゃ止まりそうに無かったからだろうが!!」
売り言葉に買い言葉でヒートアップする中縁はフォトンランダーを両腕で抑え込み、光はフォトンファイターを蹴り続ける。
「お、お前達!!何をやってるんだ!?」
司令部からも二人のやり取りに困惑する声が聞こえるが、二人はそれに耳を貸さずに喧嘩を続け、互いに息を荒くすると溜め息と共に光が口を開く。
「お前が司令達の力になりたいってのは解るけどよ、それをこんな無茶でしなくてもいいだろ。何がそんな風に駆り立てるんだよ」
「……光達には関係無いよ。これは、僕と司令達の問題だ」
「だったら、なおの事あの人達に心配かけさせる様な事するんじゃねぇよ……」
何故ここまで一人で先走ったのか縁に聞く光に、縁は目を逸らしながら自分と光平達の問題だと言い突き放すが、だからこそ無茶をするなと光は言う。
それを聞いて縁は目を見開くが、すぐに呆れた様な笑みを浮かべて口を開いた。
「全く……卑怯だよ、光は……」
「うっせ」
互いに笑い合いながらそう言って、縁はフォトンランダーを抑え込める腕から力を抜き、光はフォトンファイターを蹴るのを止める。そんな二人の姿を見て、離れた位置でクロノドローンを相手取っていた久遠が小さく笑みを浮かべると、二人へと通信を繋ぐ。
「落ち着いたな、なら此方の手伝いを頼むぞ」
「了解!……光!!」
「おう!!行くぞ縁!!」
久遠の要請に縁は頷き光へと目を向けると光も頷き、二人は戦闘の続く久遠の元へと向かって機体を走らせて行った。
クロノイド制圧軍諜報部隊が拠点としている屋敷の一室、クロノギアスのコックピットへの転送装置のある部屋にて諜報部隊員達が転送装置の準備を行っている。
その作業もほとんど終了し、後はクロノギアスの地球への転送後にパイロットをコックピットへと転送するだけとなった。
「通信ナンバー設定……完了。転送準備、完了!」
「よし、後はパイロットを呼ぶだけだ」
「はっ!……なっ!?」
準備完了の報告を受けてパイロットであるソルトを呼びに向かおうとした隊員が、突然部屋に入ってきた何者かによって気絶させられる。隊員の倒れる音を耳にした他の隊員達は、即座に扉へと目を向けるとそこに立っていた人影に気付いて目を見開く。
「な──っ!?ゼシアさ──……」
人影の名を叫ぼうとしていた隊員を始めとして室内に居た隊員達が、部屋へと入ってきたゼシアのプレッシャーにより意識を奪われ床へと倒れ込む。
ゼシアは倒れ伏した隊員達を一瞥すると、モニターに映し出された時空転移ゲートへと目を向ける。そこには今まさに地球へと降り立たんとしているクロノギアスの姿が映されていた。
「ソルジオの隊長機仕様か……まあ、やれない事はない」
時空転移ゲートより地球へと転送されるクロノギアス・ソルジオの隊長機仕様、それを目にして一言呟くとゼシアは転送装置の中へと入る。
転送装置の中はクロノギアスのコックピットと同様の作りとなっており、シートに腰掛けたゼシアはそのまま内部コンソールを操作して転送準備を進めると、彼の姿が光となって転送装置内から消え失せ、クロノギアスのコックピット内にて姿を現す。
「さて……お相手願おうか、フォトングラスト!」
そう呟くとゼシアは操縦桿を握り、クロノギアスをゆっくりと地球へと降下させて行った。
「あいつは……」
「ソルトの乗ってきたクロノギアス、その改修機だろうね」
時空転移ゲートから降り立ったクロノギアスを目前として光達は身構える。かつてソルトが乗ってきたクロノギアスをベースに両肩、両膝、両手に追加の装甲が施され、頭部にはより周囲の情報を観測するための王冠を思わす三本角のアンテナと、見るからにソルトが乗ってきた機体よりも強化されている。
降り立ったクロノギアスは周囲に散乱する光達が掃討したクロノドローンの残骸を見回し、改めて光達へとその顔を向けると縁──というよりフォトンファイターに向かって誘うように手招きをすると、前に量産型が戦った山岳部に向かって飛びさって行く。
「どう見ても誘ってるな」
「けれど、行くしかないよ」
手招きしたのにも去って行く姿を見て光はすぐにそれが誘いだと気付くが、フォトンガードナーとして行くしかないと縁は言う。
「おそらく奴は来ている最中に合体される事も想定している筈だが、どうする?」
「ならそれも踏み越えて行く。行くよ!!光、縁!!」
「「了解!!」」
「行くぞ!!超光合体!!!!」
二人の了承を受けて縁は合体コールを叫び、二人もコックピット横の合体ボタンを押す。既に下半身へと変形していたフォトンランダーとフォトンファイターが並走すると、揃って跳躍し上空で合体し着地と同時に再び走り出す。
走るフォトンファイターにフォトングライダーが並走するとファイターの跳躍に合わせて急上昇し、背部のスラスターへと合体し主翼下の推進機が翼より分離しフォトンファイターの肩と合体して新たな両腕となる。
背部からフォトングライダーの中心図がアームで胸部に移り胸部装甲となると、最後に尾翼が兜となって頭部へと合体した。
「超光機人!!フォトングラスト!!!!」
兜の合体とに合わせて二つのカメラアイが光を放つと、迸るエネルギーを抑え込むように拳を握ると掌握したエネルギーを振り払う様に腕を払い、縁は高らかと名乗りをあげる。
合体を完了したフォトングラストをクロノギアスの後を追う様に飛ばして山岳部へと着陸すると、相対するクロノギアスが拳を構えて向き合い、三人にプレッシャーを与えてきた。
「こいつは……一筋縄じゃいかねぇぞ……」
「注意深く、動ける時に一気に行こう」
クロノギアスから放たれるプレッシャーに冷や汗をかく光達、ジリジリと間合いを取る様に動き相手を見定めていた二機だが、突然クロノギアスがフォトングラストに向かって突撃してきた。
「っ!?早い!?」
「縁、捌け!!」
「──っ!!」
まだ様子見を続けるであろうと考えていた三人の隙を突かんと速攻を仕掛けたクロノギアスに光は思わず息を呑み、久遠は縁へと素早く指示を出すと縁は最早反射の域で機体を動かす。
急接近してきてフォトングラストへと繰り出された右拳の一撃を縁は左腕で弾いて受け流すが、懐に潜り込んだクロノギアスはそのまま肘打ちへと流れる様に繋ぎ、フォトングラストの胴体へと打ち込んだ。
「ぐうぅぅぅっ!!」
「~~~~~っ!!」
「おい!!大丈夫か二人共!!」
後ろに飛んである程度衝撃を緩和したとはいえコックピット付近へと強打を食らい衝撃に晒される二人に、光が慌てて声を掛けるが二人は僅かに動きが鈍る。
クロノギアスは肘打ちの手応えからフォトングラストがダメージを減らしたのだと判断するや、再びフォトングラストへと一気に距離を詰めて来た。
「く……っ!こんにゃろ!!」
二人がまだ衝撃から立ち直っていない状態で襲い来るクロノギアス相手に光は舌打ちを打つと、出しっぱなしにしていた操縦桿を握り操縦権を縁から奪い取ってフォトングラストを動かす。
フォトングラスト胸部中心にあるレリーフ目掛けて繰り出された掌底を咄嗟に左腕で上へと弾きあげると、返しとして繰り出された左足の膝蹴りに肘打ちをぶつけ合わせ相殺した。
「────っ!!」
「く……っ!!」
ぶつかり合った機体を介して繋がった接触通信越しにクロノギアスのパイロットが息を呑む音が光の耳に入るが、光はそちらに意識を向ける余裕も無くすぐにクロノギアスから距離を取る。
向こうも接触通信が繋がった事に気付いたのかすぐに通信を切るとフォトングラストに向かって拳を振りかぶり突撃し、光も迎え撃たんと拳を振りかぶり突撃して行った。
「おおおおおおおおおおっ!!」
二機の中心で拳がぶつかり合い衝撃波を引き起こすや、二機は押し合いをしようとはせずにラッシュをぶつけ合わせる。
クロノギアスから繰り出された左拳を光は右腕で外へと弾き、光が繰り出した蹴りに合わせてクロノギアスも蹴りを放ってぶつかり合わす。クロノギアスの右腕が伸ばされ掌底を叩き込もうとしてくるが光がそれを腕を側面から押して機体横へと流すと、返す形で裏拳を放とうとするがクロノギアスは残った腕でフォトングラストの腕をかち上げて頭部以上に腕を上げさせて不発に流す。
拮抗した勝負が続く中ほんの僅かな偶然、フォトングラストが何かに足を取られたかの様に僅かに動きを鈍らし、光は思わず足元を見る。そこには──
「──っ!?窪み!?いや!!ここって確か──!?」
足元にあった焼け焦げ黒ずんだ窪みを見て光は気付く。フォトングラストが立っている場所は、先の戦闘中でコンテナが爆発した場所だった。先程の僅かな硬直は、コンテナの爆発によって生じた窪みに足を取られてバランスを崩したたが故に引き起こされたものであった。
「まず──っ!!」
光はすぐさま機体を立て直すが、生まれた隙は互角の勝負でその隙は余りにも致命的な隙となりクロノギアスが抜き手の構えをしてフォトングラストの胸部目掛けて繰り出す。
窪みに嵌まった反動で操縦桿が硬直した光は、スローモーションで胸部に迫り来る抜き手に目を奪われてしまい、抜き手がフォトングラストの胸部を貫き縁と久遠の命を奪う光景を幻視する。しかし、次の瞬間──
「はあああああっ!!」
縁の咆哮と共に放たれたフォトンミサイルがクロノギアスの体を押し退け、絶体絶命の窮地を脱する事が出来た。
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